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平成19年12月20日


平成19年12月20日
「17カ国で歩様、BCS実施」

〜イタリアで審査委員ワークショップ〜
昨年10月、イタリア・クレモナで第8回世界審査委員ワークショップ(WS)が開催された。WSの継続的な開催によって、体型形質の検討や国際的な審査目合わせが実施され、線形や得点形質の各国間の遺伝相関は年々改善している。審査手法に関する各国からのプレゼンテーションでは、ドイツやスペインなど数か国で線形スコアから審査得点を推定する方法が紹介された。国際標準形質では、鋭角性と歩様、ボディコンディションなどの定義を再度整理して、後日各国に報告することになった。
体型形質は年々改善
昨年10月24日から4日間、イタリア北部の酪農地帯クレモナ市で開催された第8回世界審査委員WSには、世界26か国から審査委員など約50名が出席、日本からも日本ホル協の3名が出席した。
WSは世界主要国のホルスタイン登録団体が加盟している世界ホルスタインフリージアン連盟の体型審査部門の専門会議であり、「種雄牛の遺伝的能力に関連して体型審査法の国際的な調和」を目的として1990年以来、約2年毎に世界の主要国で開かれている。
議長国であるオランダから、昨年8月のインターブル評価を使った線形16形質と得点形質について各国間の遺伝相関の比較が報告された。
表1に示すとおり、線形形質では各国間の遺伝相関は年々改善されており、WSでの議論や目合わせの成果であると評価した。体の高さや尻の角度、乳房の深さ、前乳頭の配置、乳頭の長さ、後乳頭の配置は平均で+0・90以上の高い相関があったが、胸の幅や鋭角性、後肢後望、蹄の角度では+0・80以下のやや低い相関であり、各国間の相関を改善するよう、形質の定義や見方の統一を図る必要があるとした。
各国から状況報告も
今回初の試みとして、審査の現状や評価手法について各国からプレゼンテーションが行われた。
カナダは23名の審査委員が乳用6品種の体型審査を担当し、年間24万頭の審査を行っている。これは牛群検定戸数の87%、全酪農家戸数の64%に相当する。牛群審査と、その中間に実施する特別審査によって近年順調に伸びている。
デンマークは審査委員8名で年間11万頭の審査を実施。審査料の60%を人工授精センターが負担している。
ドイツは地方組織の公式審査委員28名によって昨年は21万頭の審査を実施した。審査委員は情報分析センターから関係牛のデータを受信し体型審査に利用、審査後は電話回線で登録協会に送信する。線形形質に重み付けして、各審査区分の得率を推定している。
イタリアでも主要15形質に重み付けして、4部位得率と決定得点を計算するシステムを昨年から実施している。スペインでも授精団体との共同開発で審査得点計算プログラムを作成し、今年1月から実用化している。
日本からも審査の現状とハンディターミナルの利用、得点表示や情報提供について説明した。2年前から「歩様」を評価開始したが、日本では繋ぎ牛舎が多く、歩様データの収集が限定されることを指摘。北米からも同様の意見があった。
また最近、「融合乳頭」の出現割合が少しずつ高くなっていることから、海外の情報を求めたところ、英国から「融合乳頭」は遺伝性があり、他品種との交雑で種雄牛から持ち込まれた可能性が高いとの示唆があった。
鋭角性の定義議論
ドイツからは事前に各国に送られた体型審査に関するアンケート結果のとりまとめが報告された。表2には主要国での線形形質の実施状況を示したが、国際標準16形質と新たに歩様とボディコンディションスコア(BCS)を含めた主要18形質をすべて評価している国は25か国中、日本を含む17か国であった。
標準形質以外では、17か国が乳房の幅を評価している。WSでは以前から「後乳房の幅は乳房得点を評価する上で重要であり、国際標準形質にすべき」との要望が多かったが、今回も国際標準形質として勧告されなかった。乳房関係ではすでに7つの線形形質があり、これに後乳房の幅を加えても乳房評価の信頼性はあまり変わらないとの理由である。
そのほか、複数の国が前躯の高さや腰の強さ、(飛節の)骨質、寛の位置、乳房の傾斜などを評価している。
また、WSではクレモナ近郊の牧場で審査委員全員による実践的な目合わせを行った。
そこで多く議論されたのは鋭角性と乳用強健性の見方で、肋間の狭く肋が開張していない牛に対しては70点前後という極端に低い評価だった。最後に、数頭を歩かせて歩様のスコアを比較した。
次回(2009年)の開催国はフランスに決定して、4日間にわたるWSは幕を閉じた。
ナショナルショウ盛大に
最終日の午後には、クレモナ市営の大イベント施設で開かれていた第57回イタリア・ナショナルホルスタインショウの経産牛部門を視察した。ナショナルショウには国内から未経産6部、経産8部に約250頭が出品されており、特に経産牛では乳房のよいものが多く出品されており、見応えは十分であった。グランドチャンピオンには乳用強健性と乳房のすばらしい5歳クラスの牛が選ばれ、体型得点97点で昨年のグランドチャンピオン牛を凌駕した。
また、前日行われたジュニアショウやセール、農業や酪農関連企業による膨大なブース展示など、多くの参観者で賑わっていた。
表1体型19形質の国間遺伝相関の平均
体型形質2001年5月03年11月05年9月07年9月
高 さ0.890.910.920.92
胸 の 幅0.760.790.800.79
体の深さ0.750.800.820.81
鋭 角 性0.760.760.780.77
尻の角度0.930.940.950.95
尻 の 幅0.750.840.840.84
後肢側望0.820.840.850.85
後肢後望0.770.760.760.74
蹄の角度0.570.660.680.72
前乳房の付着0.740.800.830.84
後乳房の高さ0.740.820.840.85
乳房の懸垂0.770.780.800.81
乳房の深さ0.900.950.960.96
前乳頭の配置0.890.910.940.93
乳頭の長さ0.960.950.960.96
後乳頭の配置0.960.960.96
決定得点0.670.700.730.75
乳 器0.740.760.780.81
肢 蹄0.600.670.690.69
表2線形の18主要形質とそのほかの形質の実施状況(2007年7月)
国名18主要形質
の実施状況
そのほかの線形形質
オーストラリア×口顎の幅、後乳房の幅、乳房の質
ベルギー×前躯の高さ、骨質、後乳房の幅、乳房の傾斜、乳房の質
カナダ前躯の高さ、腰の強さ、蹄踵の厚さ、乳房の質、骨質、後乳房の幅
スイス大きさ、前躯の高さ、腰の強さ、骨質、蹄踵の厚さ、寛の位置、乳房の質、後乳房の幅
チェコ骨質、後乳房の幅
ドイツ飛節の質、後乳房の幅
デンマーク背線、飛節の骨質、骨格構造、後乳房の幅、乳房バランス、乳頭の太さ
エストニア×
スペイン後乳房の幅、骨質、乳房の質、前躯の高さ
フランス乳房バランス
英国乳頭配置(側望)
ハンガリー後乳房の幅
アイルランド寛の位置
イタリア×骨格構造、後乳房の幅
日本後乳房の幅、乳房の傾斜、蹄踵の厚さ、骨質、寛幅
ルクセンブルク
ラトビア前乳房の長さ
オランダ
ニュージーランド×
ポーランド×後乳房の幅
ポルトガル
スウェーデン×前躯の高さ、骨質、後乳房の幅、乳房の傾斜
スロバキア後乳房の幅
アメリカ寛の位置、後乳房の幅、乳房の傾斜
南アフリカ×後乳房の幅