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平成13年10月20日


平成13年10月20日
「血統濃度(%)は」
遡れる世代数が決め手~基礎登録も7代目で100%に~
(社)日本ホルスタイン登録協会では、平成14年4月からホルスタイン種牛と同種系牛の登録制度を一本化したものに改め、血統の純粋性は「血統濃度」によって示すことになった。さて、「血統濃度」はどう定義され、現在酪農家で飼養されている牛はどの程度の血統濃度になるのか。定義を紹介するとともに、いろいろなケースを想定して、計算してみたい。
定義と扱い
今回の登録制度改正の概要を下の表に示した。
今回の改正により血統登録牛でも、血統の純粋性に差があるものが混在することになることから、その程度を示すものとして「血統濃度」(以下、濃度と略)を新設することになったもので、その定義は次のようになっている。
1.濃度の数値の範囲
0%~100%
2.濃度の原則
①ホル種の毛色及び特徴を備えていても、無登録牛は0%とする。
②両親の数値を合計して2で割り、小数点第1位を四捨五入した整数値とする。
また、次世代の濃度の計算に際しては、四捨五入したのちの整数値を基に行うものとする。
3.血統登録有資格牛(輸入牛、輸入精液・受精卵牛等によるものも含む)
雄牛:濃度が93%以上とする。
雌牛:濃度が47%以上とする。
ただし、父は血統登録牛であること。
4.輸入牛及び輸入精液・受精卵牛等の取扱い
輸入牛等の濃度(%)は、当該外国登録団体発行の血統能力証明書等に表示されている数値を用いる。
なお、濃度を採用していない国からの輸入牛等については、当該外国登録団体発行の血統能力証明書に記載された祖先を基に、本会の方式で計算し、その数値を用いる。
5.2代本登牛の取扱い
現行のホ種系牛登録制度による2代本登録については、一定の世代数を重ねて登録した牛と審査得点または検定成績の基準をクリアし飛び級的に登録した牛がいることから、いろいろな数値の濃度(%)が混在しているので、次のように取扱うこととする。
①計算の結果、濃度が88%以上の場合は、その値を濃度とする。
②計算の結果、濃度が88%未満の場合は、88%とする。
6.表示する証明書と表示方法
本会が発行する血統登録証明書および各種証明書類において、本牛及び祖先牛の登録番号のあとに濃度%を併せて表示する。
改正の概要現行の内容











1.ホ種牛とホ種系牛登録制度の一本化
2.血統濃度(%)の表示
3.個体確認方法の明示(斑紋又は個体識別事業の耳標) 4.国の家畜個体識別事業からの登録申込み方法の追加

2.現行では表示していない。なお、種系から純粋種への繰り入れの手段として、2代本登録制度がある 3.現行では規程上には明示していないが、取扱手続きでホルスタイン種固有の斑紋を申込書に記入すると規定している 4.現行は「国の個体識別事業による登録取扱要項」で定めているが、規程上には謳われていない
ホルスタイン種系牛登録規程を廃止する
計算してみると
以上のことを踏まえ、様々な場合の濃度を示すと、以下のようになる。
なお、特に断らない限り、交配する雄牛の濃度は100%とする。
1.血統登録牛
①現在の登録証明書で登録番号の後に「G」マークのない牛
100%となる。
但し、93%の雄牛と交配して子が生まれると、その子は97%となる。97%との交配では99%に。
②現在の登録証明書で登録番号の後に「G」マークが付されている牛
現行の登録制度では、基礎登録から血統に繰り入れられ3世代目までに付すことになっているので、その濃度は先祖を遡ってみなければ計算できない。
初めて基礎登録した牛が、審査又は検定の記録が基準に達して同じ世代で2代本登録になり、娘牛が血統登録された場合では、その牛は88%と見なされるので、その娘で血統繰入1世代目となる牛が94%、2世代目が97%、3世代目が99%ということになり、4世代は100%ととなる。
なお、3世代目で「基礎登録3代」という資格で2代本登録された牛は計算上からも88%の濃度となるので、前述の場合と同じになる。
但し、4世代目以上の段階の牛が2代本登録された場合は、どこまで遡れるかによって濃度は異なってくる。例えば5世代目が2代本登録された場合、その牛の濃度は97%であるので、その娘で血統繰入1世代目でも99%となる。
2、基礎登録牛
①母が無登録で、初めて基礎登録された牛
50%となる。但し、父が93%では、濃度は47%となる。
②基礎登録を繰り返している牛
繰り返している世代数による。7世代目以上に該当する牛は100%となり、一挙に純粋牛と肩を並べることになる。
平成13年10月20日
「地区別登録委員研修会」
~5地区で300名集めて開催~
日本ホル協主催の平成13年度地区別登録委員研修会が、7~8月にかけて5地区において、延べ300名を集めて開催された。この研修会は酪農家の庭先で日頃より登録のお世話をしている登録委員を中心にして開催しているもので、本年度は関東を除く5地区で開催した。
先ず、中部・北陸地区が7月16~17日の両日静岡県伊豆長岡町と函南町において開催したのを皮切りに、近畿地区が7月17~18日に兵庫県三原町において、九州地区が7月18日に沖縄県名護市において、東北地区が7月25~26日に岩手県盛岡市と滝沢村において、そして8月に入って、最後の中国・四国地区は9~10日に広島県三次市と庄原市において開催された。
研修会は、第一日目が13時30分から16時半まで、二日目は9時から12時までの日程で行われた。第一日目の事務研修では、登録制度等の改正と家畜個体識別事業がテーマであったが、特に、明年度4月からスタートする新しい登録制度ついての具体的な事項については、多くの質問、意見が出され、活発で実りのある研修となった。
研修会では、①ホルスタイン種牛登録制度とそれを補完するはずであったホルスタイン種系牛登録制度がうまく連動せずに、あたかも二つの登録制度があるかのようになっていること、②個体識別事業により、一元的に登録証明書を発行すること、③国際的な流れにあわせること、などが改正の背景と改正内容の説明が行われ
ただし、登録制度改正による血統登録証明書作成のための電算システムの変更と同時に血統登録証明書裏面に掲載している「血統情報」を省略したいとする日本ホル協事務局の説明には諾否それぞれの意見が出された。
また、個体識別事業では、平成9年度から進められている「家畜個体識別システム研究開発事業」により、本年度末までに北海道が31万頭、都府県5県が2万3千頭に耳標が装着される予定であるとの経過が説明された。なお、北海道での耳標装着率が36%にもなり、都府県で個体識別事業のモデル地域以外にも耳標装着牛が多数導入されることから、導入した際の注意事項などについても説明が行われた。さらに、13年度から乳牛だけでなく肉牛にも及ぶ新しい事業が展開される予定で、わが国の飼養牛の個体識別化が急速に進展することの紹介も行われた。
最後に出席者からモデル実施県の状況なども紹介され、事業への理解を深めた。
第二日目は、県の畜産試験場や学校などの牛を借用しての審査研修で、先ず日本ホル協の審査委員による牛の見方の解説が行われ、その後3頭の供試牛について各自が審査し、最後にその模範解答が示される方法がとられ、真夏の外気に晒されながらも、講師の話に聞き入っていた。
なお、関東地区においては、各県個別の研修会が開催されている。
平成13年10月20日
=切り取らないで!この耳標=
「斑紋からの脱却」
~乳牛の総背番号制めざす~
北海道では36%の牛に
ご承知のとおり、平成9年度から事業が開始された家畜個体識別システム研究開発事業では、各団体間の合意形成や導入方針の作成、中央・地方協議会の設立などを経て、平成12年3月から秋田県(全県)を皮切りに、モデル地区での耳標の装着が一斉に始まった。北海道でも同年5月から東宗谷農協猿払地区で耳標装着が始められ、12年度中には約1千戸、約10万頭の乳牛に所定の耳標が装着された。そして、13年度も含めると、北海道では約3千2百戸、約31万頭もの乳牛に耳標が付けられる予定で、これは12年の畜産統計と比べると頭数割合で約36%に相当する。都府県では冒頭の秋田県を始め、愛知県、愛媛県、熊本県と沖縄県がモデル事業に参加しており、総計で約4百戸、3万3千頭に耳標が装着される予定。県内の飼養頭数との対比ではそれぞれ6~96%に相当する。
ところで、この事業で使われる所定の耳標は、別掲のとおり、黄色のプラスチック製のもの。印字内容は、上からJPとNLBCのロゴマーク、9桁の数字、バーコード及び拡大4桁数字で構成されており、両耳の前後に同じものが付けられる(地区によってはこのスタンダードタイプとボタンタイプの併用もある)。材質は長年の風雨にさらされても印字内容が消えないタンパープルーフのものだが、障害物に引っかかったときは耳標が裂けて耳がちぎれにくい構造となっている。要は世界各国で個体識別のために標準的に使われているものをわが国でも採用した経緯がある。
耳標番号が確認の決め手
本会ではモデル事業実施地区で新しく牛を登録する際には、この耳標番号を個体確認の決め手としていることから、当然のこと、登録証明書には別掲のとおりこの耳標に相当する9桁番号、バーコード及び拡大4桁数字が印字される。登録番号も9桁番号を尊重してそのまま使用する。斑紋採取は登録の際に不要となるので、登録証明書の斑紋欄は空白で酪農家のために左側枠だけを印刷している。
また、耳標が脱落したときは、申し出により再発行するシステムになっているため、モデル地区からそれ以外の地区に牛が販売されたときでも、耳標装着牛はこれが個体確認の唯一の決め手となる。言い換えるならば、全国の牛の永久総背番号制度が乳牛を手始めに構築されつつあるといってもよい。従って、万が一でもこの耳標を面倒だからといって切り取ったりすることがないよう、酪農家並びに関係各位のご注意をお願いしたい。
なお、すでに登録されている牛が事業で耳標を付けられた場合もその後のデータベース等での管理は耳標番号で行われるため、同様のご注意をお願いしたい。