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平成15年1月1日


平成15年1月1日
「北から南から喜びの2003新春」
~第6回全日本BWショウで見事ビッグタイトル獲得!~
山形県高畠町・深瀬幸二さんと宮崎県高原町・石山宗行さんは昨年11月に開かれた第6回全日本ブラックアンドホワイトショウの経産部門で、それぞれグランドチャンピオン、リザーブグランドチャンピオンのビッグタイトルを獲得した。新しい年を迎えて、北から南から2人の喜びの声を聞いてみた。
経産G・C山形県高畠町・深瀬幸二さん
「生涯で最高、理想の牛」~小学3年から牛飼い決意~

第6回全日本BWショウで経産G・Cに輝いた深瀬牧場のインペリアル号
「ショウで引くと暴れる癖があるので、ほかの出品者に迷惑かけないようにと、それだけ考えていました。思いの外、牛もおとなしく歩いてくれました。トップで呼ばれた時からは頭の中が真っ白になり、そのあとはよく覚えていません」。
全日本BWショウは今回が初参加だが、全共2回、全道共進会3回、全道BW1回、東日本ディリーショウ2回など大きな共進会の経験もある。しかし、大きなショウでのビッグタイトルは今回が初めて。
今回、山形県からは1頭だけの出品。輸送は宮城県、福島県の出品牛と乗り合わせで、会場にはショウ前日の到着となった。「東日本にも別の牛を出して、終わって間もなくで慌ただしかったけれど、気の知れた人たちと一緒だったので、何とか来ることができました。仲間には感謝しています」という。共進会に勝つのは勿論うれしいが、県外にも沢山の仲間や知人ができることが牛飼いの一番の財産だという。
今回、全日本BWを制したインペリアル号は平成12年の岡山全共にも出品している。この牛の母親は、山形県ホル協の単独事業として北海道から初妊牛で導入され、余目町の酪農家に貸付けられた。その後、2産目に計画交配でできた娘を、深瀬牧場で譲り受けた。
育成期から食欲旺盛で、体も大きく体の長さと質感に富み、岡山全共予選の巡回審査ではいち早く候補に挙がった。
しかし、幸二さんには「自家産で出したい」という拘りがあり、一時は出品を辞退しかけたが、周囲の再三の説得に折れての全共出品となった。結果は3歳ジュニアクラスで優等賞3席に入り、その冬の牛群審査で3歳初産ながら87点を獲得した。昨年は2産で89点、今回5歳級で一挙に93点に評価された。「生涯で最高の牛、理想の乳房。二度とこんな牛はできないかもしれない」と、ようやくビッグタイトルの重みとエクセレントの評価が実感してきた。
酪農は祖父の時代からだが、父親の吉男さんが導入した未経産牛が県共を制し、第6回淡路島全共に初出品してからが、共進会との縁を深めた。
「今まで最も印象に残ったことは?」という質問に、幸二さんは「初めて牛を引いたのが小学3年の時で、県BWショウでクラスチャンピオンになりました。一番うれしかったのは翌年の県共で、テンエコーアイバンフカセという牛を引いてグランドチャンピオンになった時でした」。母親ツヨ子さんに言わせると「小さい頃から、うちの牛や雑誌に出ている著名牛の名前を全部覚えていましたね。将来は牛飼いになるって全く迷う風はなかった」という牛キチだ。
置賜農高在学中には農業クラブの全国審査競技会で第2位の好成績を挙げている。高校を卒業後、北海道の十勝種畜牧場と帯広の吉川農場での貴重な実習経験を積んで、平成4年に就農した。
将来の夢は「牛舎が分かれていて作業性が悪いので、作業しやすいような牛舎環境の整備です。先へ先へと種雄牛を考えていけば、体型や能力はついてくると思います」。
山形県東置賜郡高畠町
-深瀬幸二さん(30)- 経産40頭、未経産38頭で日量約1トンを生産。
経産牛平均乳量は9千kg。
牛群審査を毎年受検、これまで6頭のEXを作出。

受賞後、日頃の友人達が祝福にかけつけ、
インペリアル号とともに記念撮影。
経産リザーブ・G・C宮崎県高原町・石山宗行さん
「今年は牛群平均1万キロに」~乳房改良し、活力と斉一化を~

石山牧場のローザ号は見事経産リザーブG・Cを受賞
石山さんは酪農2代目、平成5年に規模拡大してフリーバーン牛舎にした。「当初はフリーストールでしたが、牛の病気と戻し堆肥の利用を考えて、早々にフリーバーンに改造しました」。
フリーバーンにしてからは事故も少なくなり、牛に活気が出てきたという。これは「堆肥の力」だという。堆肥は草を育てる栄養源であり、戻し堆肥は牛を健康にする活力源ということだ。
改造フリーバーン牛舎には、胸幅があり、活力と乳用性に富んだ経産牛が元気よく群れている。最近は後代検定の材料娘牛が順調に上がってきて、年2回体型調査と合わせて牛群審査を受ける。「初産牛は良い悪い全部見てもらいます。74点もいれば84点もいる。検定で能力の良し悪しを知るのと同じく、審査の結果で体型の良し悪しを判断できる。初産から乳器の深い牛はやはり長持ちしないことが分かる」と。
実は規模拡大に取り組んだ平成5~6年頃に、一時登録を欠いてしまった時期がある。一方で初妊牛を多頭数導入したが能力にバラツキがあり、やはり自分の所の環境に合った自家産の方が病気や事故が少なく、また一から登録をやり直した。
平成8年頃からは後検の調整交配の精液を積極的に利用し始め、今はほとんど検定済種雄牛を利用している。
その群の中に、第6回全日本BWショウのリザーブ・グランドチャンピオン牛がのんびりと居座っている。「全BWに行く前に調子をくずして、輸送中や会場では無理をしないよう随分気を遣いました。宮崎県はあと2頭が農業高校の出品でしたから、子供達を応援して、自分は参加できたことで満足でしたが、8部のトップを歩いているのを見た時は、もう驚きと興奮でドキドキしました。あれよ、あれよとインターミディエイトに選ばれ、最後にリザーブグランドを獲ってしまった。これまで全国BWに出品して努力された皆さんに申し訳なく思います」。
平成8年に牛群平均乳量が1万㌔を突破したが、翌年は初産が多く、9千㌔を割り、昨年が9500㌔強。今年は多分1万㌔を超えると確信している。「人間に勢いがあれば、牛にも活気が出てきます。平成10年にわが牧場初のエクセレント牛が出ました。乳房の素晴らしい牛で、このファミリーも増えています。いい血液を大事にして、いい乳房をもった牛群を揃えていきたい」と語ってくれた。
石山さんは地域のリーダーとして、後継者育成にも力を注いでいる。「全BWに出品した農高の子供達は非農家の子が多かったが、酪農や農業を理解し、将来農業関係に従事してくれればいいですね」と念願していた。
宮崎県西諸県郡高原町
-石山宗行さん(45)- 経産75頭、未経産45頭を飼養。
経産牛平均9,600kg。
後検調整交配を実施し、審査も初産から受検。
平均82.4点、EX1頭。

石山さんとローザ号。
リードマンを務めたのは都城市の若手酪農家,徳留一也さん。