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平成25年01月20日


平成25年01月20日「ゲノミック評価に強い関心 ホル種の改良や飼養管理などにも」 〜世界ホルスタイン会議報告〜
世界ホルスタインフリージアン会議は2012年11月4〜7日、カナダ・トロント市内のホテルで、世界43か国から600名を超える乳牛登録や改良組織関係者、酪農家が出席して盛大に開かれた。本会議では今話題の最先鋒にある「ゲノミック評価」に関して6か国から、その普及状況や情報サービスの変化、将来への期待など興味ある報告が行われた。このほか、繁殖や蹄管理など飼養管理上の話題が提供された。また、通常総会では、活動報告や評議員の改選、次回は16年にアルゼンチンで開催されることが承認された。
43か国から600名参加
この世界会議は、世界ホルスタインフリージアン連盟(WHFF)が4年に1回、会員加盟国の乳牛登録団体・組織関係者などを対象として開催し、通常総会とホルスタイン種登録や改良の現況や諸問題の発表・協議を行っている。
第1回は1964年にオランダで開催、日本でも96年に札幌で開催している。今回で13回を迎えるこの会議には、世界43か国から600名を超える出席があった。
会期前に体型審査ワークショップ、酪農家ツアー、酪農後継者向け交流会が行われた後、評議員会、本会議と通常総会が開かれ、終了後にはカナダ・ロイヤルウィンターフェアの視察が組まれた。
本会議は6つのセッションに分けて合計18題の報告が行われたが、中でも今話題の最先鋒にある「ゲノミック評価」は、4年前のアイルランド会議では話題提供に留まっていたものが、今回は本会議の主たる論題として2つのセッション「ゲノミックの革命」、「酪農界におけるゲノミックの影響」で6か国から報告が行われた。
3年間で23万頭検査
アメリカは09年のゲノミック評価の公表以降、3年間で種雄牛6万8千頭、雌牛16万頭の合計23万頭のSNP検査を実施している。
ゲノミックの利用によって、ヤングブルが種雄牛全体の40%を占めるによって、種雄牛の母も未経産牛が急増した。最近は人工授精所が雌牛を所有し、未経産からの採卵や体外受精によって次代のヤングブルを生産するケースが増えた。
11年には、多くの人工授精所が後検プログラムを縮小し、待機種雄牛や後検娘牛頭数を削減したが、酪農家や市場からの要望に応えて、一定の審査・検定頭数を確保する動きも出ている。供用種雄牛の主流がヤングブルに移行したため、精液価格は低減し、人工授精所の増収にはつながらないのが現状。
ゲノミックは、若齢での最高の中の最高のものを識別し、より正確なツールを供給するものだが、近交係数の上昇に注意が必要だ。ゲノミックというF1レースカーは目的地により速く到着することは可能だが、時速150マイルで走る車は、20マイルの低速車よりもクラッシュする可能性が高いことを考慮すべきとした。
種雄牛の70%はヤングブル
フランスでは、09年6月に種雄牛のゲノミック評価を公表して以降、現在では約9千頭の種雄牛がゲノミック評価値を有している。種雄牛の更新が早くなり、供用種雄牛の70%をヤングブルが占めている。種雄牛の父としてもヤングブルの出現割合は高くなっている。
ゲノミック選抜の利点として、
  1. 世代間隔の短縮
  2. 比較的高い正確度(0.6〜0.7)
  3. 雌雄牛ともに同等の正確度で選抜
  4. 検査コストが比較的安価
  5. 約2倍の遺伝的改良量が得られる
などを掲げている。
雌牛側のリファレンス(参照)集団も増大し、今年から2年間で雌牛の50%がゲノミック評価値を持つことが期待される。近い将来は、新たな形質の収集・評価、国間でのリファレンス集団の共用、品種間ゲノミック評価の開発が望まれる。
6百牛群12万頭を目標に
リファレンス集団の個体数が多いほど、また遺伝率が高いほどゲノミック評価値の正確度は高くなるが、大規模な集団を形成するためには検査コストはまだ高過ぎる。
オランダCRVでは、酪農家の協力の下に20牛群4千頭の雌牛リファレンス牛群を確保し、産乳や体型、繁殖、蹄管理、乳成分などの表型記録と、全ての雌牛のゲノミック情報を保有している。
ゲノミック検査料は、経産牛は無料とし、産子は15ユーロ。将来は6百牛群12万頭への普及をめざしている。
また、ニュージーランドホルスタイン×ジャージー、ノルウェーレッド、オーストラリアホルスタイン×ジャージーなど、リファレンス集団の中の交雑種を利用して、品種Aから品種Bのゲノミック育種価の予測も可能だとしている。
普及著しく情報サービス強化
ドイツでも11年にゲノミック評価を開始して以降、供用種雄牛頭数は半減する一方、ゲノミック評価を持つ種雄牛のAI利用率は1年半で3倍以上に増加した。
また、安価な低密度SNPの利用で雌牛の検査頭数は増加し、ゲノミック評価によって産乳能力や体型評価のほかに生産寿命や体細胞数、分娩難易、繁殖性、近交係数、遺伝病などの情報の提供サービスが可能になった。
しかし、ゲノミックが普及する一方で、後代検定や体型審査頭数の減少が危惧されている。
種雄牛評価の1千頭プロジェクト
オーストラリアでは2年前から「種雄牛ゲノミック評価の1千頭プロジェクト」をスタートし、国内のホルスタイン集団に深く関与している過去の世界的な著名種雄牛のゲノミック解析を行っているが、コスト面で苦慮し、実際は240頭が解析されているだけで、他国の参加協力を呼びかけている。また、ニュージーランドと共同で未経産牛2千頭の飼養試験データを用いて、飼料効率に関するゲノミック解析を進めている。
世代間隔短縮で近交係数高まる
近年は世界的にホルスタイン種の近交係数は高まってきており、近交退化や有害遺伝子の蓄積、遺伝分散の低下などが懸念されている。
カナダからの報告は、ゲノミック選抜が必要な種雄牛頭数の減少と世代間隔短縮に効果がある一方で、父牛とその息牛が同時期に供用されるために、近交係数はさらに高まる可能性があるとした。
また、ゲノミック選抜では、選抜対象のSNP付近の近交度が、血縁による従来の近交係数よりもはるかに高い値を示すことを示唆した。
しかし、ゲノミック情報を駆使すれば、特定のSNPに対する近親交配を回避し、近交係数を低下させることは可能であり、ハプロタイプ等の遺伝病の発現を回避することは有効とした。
繁殖や健康管理の発表〜分娩移行指数や発情発見の話題〜
セッション3「新技術を利用した繁殖性の向上」では、アメリカから、雌牛の分娩移行期指数(TCI)を紹介。TCIは、牛群検定の305日期待乳量と実量の差から、分娩移行期の影響を指数化したもの。正常な乳期で+6百ポンドであるのに対して、乳房炎では1千2百ポンド減、疾病が2つ以上併発すると2千ポンド以上の減少となる。TCIが改善されれば、繁殖性を低下させることなく、乳量や寿命を増加させることができる。
フランスからは、繁殖管理上で発情発見は重要であり、酪農家による観察、ビデオカメラや歩数計、発情検知器による発情発見の比較と、発情発見用ソフトを紹介。牛群の繁殖管理データを入力することで、個体毎の発情レベルやリスク要因を分析し、発情発見を助けるもの。将来は、発情の自動検知器の改善と発情を識別できる有用なゲノミック選抜が期待される。
蹄の管理やヨーネ病撲滅
セッション4「乳牛の健康向上と福祉」が取り上げられ、カナダから、乳量低下や淘汰の増加、繁殖能力の低下を招く跛行や蹄病の予防管理について報告が行われた。搾乳牛に占める跛行の割合はアメリカで25%、英国37%、カナダ32%などと高い。蹄病に関する遺伝率は低く遺伝的な対応は今後の課題。蹄の管理では、蹄病データの記録利用と跛行牛の早期発見、治療と清潔・乾燥、削蹄と消毒、適正な体重負荷が必要とした。
アメリカからは、ヨーネ病に関する報告が行われた。この報告では、酪農主要国の牛群の50%以上がヨーネ菌に感染している。ヨーネ病の撲滅には、正確な検査(糞便培養、PCR法)の実施と、牛の販売者と購入者の双方がその認識を持つことが必要であり、徹底した防疫対策によってヨーネ病は減少するとした。
酪農の継続や乳牛への期待
セッション5では「酪農の継続の可能性」として、イギリスからは乳牛のメタン排出量の削減の問題(FAO)、次世代の産業を支える育種組織の役割(英国)、次代の酪農の成功に必要なもの(カナダ)に関する発表があった。
最終セッション「乳牛から、さらに得られるもの」では、牛乳を用いた健康状態と繁殖能力の判定(カナダ)、中赤外線を利用した牛乳の栄養と環境レベルの向上(ベルギー)、牛群管理改善のための牛乳分析の利用と中央ラボの連携(デンマーク)について、試行や提案が紹介された。
次回会議は南米アルゼンチンで
7日午後にはWHFF通常総会が開かれ、前回会議後の4年間に新たに10か国が加盟したこと、WHFFホームページの充実、年1回の評議員会と隔年の体型審査ワークショップの開催、線形評価トレーニング用プログラム「バーチャル・カウ」のHP登載、遺伝的劣性形質のコード化、インターブルやICAR等との連携強化などの活動と収支決算が報告された。
評議員の改選では、E・フェダーソン会長(ドイツ)に代わって、M・シェーファー氏(オーストラリア)が新会長に就任した。また、評議員として、ヨーロッパ5名、北米2名、アジア1名(日本)、オセアニア1名、中南米・アフリカ1名が選出された。
次回の世界会議は2016年にアルゼンチンで開催される。
経産牛の25%がエクセレント牛
本会議前の酪農家ツアーではオンタリオ州の3牧場を視察した。
ボスデール牧場はEX52頭、VG110頭と高得点牛を繋留している。中でも11歳を過ぎたストームの娘(95点)が印象的であった。
クレイヌック牧場はインデックスを重視した交配で、年間60頭の種雄牛生産・販売を目指している。
シティビュー牧場は、かつてオールカナディアンに5回ノミネートされたストーム・ミスティやショアマー・アリシアが育った牧場である。

平成25年01月20日「新年ご挨拶」 〜(社)日本ホルスタイン登録協会長北良治〜
平成25年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
当協会の登録事業の普及・発展につきまして、日頃より会員の皆様をはじめ関係各位におかれまして、ご理解とご協力を賜り誠に有難う御座います。
ゲノミック評価対応とホル種改良を推進
さて、日本の酪農を取り巻く環境は、長引く景気低迷とデフレ経済下において、世界的な異常気象による穀物相場の高止まりに起因する配合飼料価格の上昇、福島原発事故の影響による電力不足の問題と今後のエネルギー政策への不安、少子高齢化による後継者不足問題、未だ定まらないTPP交渉参加に向けた関係国との協議入りの動向等々、先行きに対する問題が山積した中にあります。
こうした厳しい社会・経済情勢の下で、当協会の事業は、会員数や登録件数等が漸減の傾向を示しておりますが、このような時期であればこそ、酪農経営の基盤となる泌乳能力や繁殖性の向上、疾病予防、飼料効率改善への取組みが極めて重要になってきます。
当協会では、自動登録を主体とした戸数・頭数の拡大を図るとともに、登録証を活用した遺伝病や近親交配の回避、体型審査による乳房や肢蹄等の改良を推進しています。また、登録や審査、牛群検定成績等で計算される遺伝評価成績に基づいて泌乳能力や長命連産効果の活用を働きかけております。
また、平成25年度には、農水省や関係団体の協力・連携の下、主要国で急速な発展・普及しているゲノミック評価を国内で実施するための準備を進めているところです。この評価値は、従来の後代検定による評価値と組み合わせることによって、さらに信頼度の高い遺伝評価値を得ることができ、世代間隔の短縮や遺伝的改良量の増大等、わが国乳牛改良にとって大きな推進力になると考えます。
登録事業が乳牛改良の基礎として、皆様方にとって利用し易く、高い信頼性を持つものであることが重要であり、その実現に向け、本年も当協会事業に対しまして引き続き皆様の特段のご理解とご協力を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
最後に、本年の皆様方の益々のご発展とご健勝を祈念して、年頭のご挨拶と致します。

平成25年01月20日「今後の行事」 〜日本ホル協〜
◇24年度社員会議並びに支部・承認団体登録事務担当者会議
  • [東日本地区]
    • 日時:1月31日(木)事務担当者会議、2月1日(金)社員会議
    • 会場:東京都中野区、中野サンプラザホテル
  • [西日本地区]
    • 日時:1月24日(木)事務担当者会議、1月25日(金)社員会議
    • 会場:岡山市、メルパルク岡山
◇第265回理事会
  • 日時:3月19日(火)
  • 会場:日ホ協会議室
◇平成24年度決算監査会
  • 日時:5月24日(金)
  • 会場:日ホ協会議室
◇第266回理事会・第65回通常総会
  • 日時:6月21日(金)
  • 会場:東京都中野区、中野サンプラザホテル
◆全国ホルスタイン改良協議会第34回通常総会・理事会・監査会
  • 日時:2月19日(火)
  • 会場:日ホ協会議室


平成25年01月20日「乳牛改良の根幹血統登録を進めよう」 〜登録部より〜
酪農経営の安定には改良が重要
近年の酪農経営の特徴は、1頭あたりの泌乳量を増やすと同時に生産性の向上によりコストを下げる工夫をして、牛舎全体から得られる収益を増やそうという試みをしている方々が多い様です。一方、生産された牛乳を単に出荷するだけでなく、自らヨーグルトやチーズに加工して販売し、消費者との繋がりをより一層深めようと云う試みも各地で見られます。
また、一口に生産量を増やすといっても、これには乳用牛の増頭やエサの多給によって生乳生産量を上げることよりも、遺伝的能力を効率的に発揮させることによって、牛群の能力水準と斉一性を高めていくということが重要と考えられます。
一方、乳量や乳成分率、体型等の形質において、親から子へ遺伝する割合は、乳量で30%、乳成分率で50%、体型形質では10〜30%程度と推定されます。現在では種雄牛の後代検定や牛群検定の実施によって、種雄牛や雌牛の遺伝評価値が発表され、そのレベルは年々向上しています。
酪農家は、総合指数(NTP)や各形質の遺伝評価値を活用して、より優れた後継牛が期待できるような交配と選抜淘汰を行って、生産性の向上を図ることができるようになります。
近交、不良形質回避は血統情報で
牛群改良の第一歩は正確な記録をとることから始まります。記録が正確でなければ、いかに優れた交配や選抜淘汰を行ったつもりでも、改良の効果は上がりません。
その中で個体記録の根幹をなすのが血統登録です。いつ、どこで、どういう父母から生まれたかという血統情報があって初めて、近親交配や遺伝的不良形質の発現を防ぐことができます。また、血統の特徴は泌乳能力や体型面によく現れます。血統の記録を牛群検定や体型審査成績と結び付けることによって、血統の特徴を生かした改良を的確に行うことが可能になります。
すなわち、登録というシステムがあってこそ、酪農家の交配計画が有効に働くといっても過言ではありません。
登録のメリット
ここで酪農家にとって登録することのメリットを挙げると次のとおりです。
  1. 登録証明書によって父母、祖父母など血統が明確になるとともに、登録協会の登録簿に記載され、永久的に保管される
  2. 遺伝的に優れた血統をより確実に残すことができる
  3. 血統濃度(47〜100%)によって血統の純粋性の度合いが明示される
  4. 強度の近親交配を回避できる
  5. BLADやCVM、ブラキスパイナなど遺伝的不良形質の発現を未然に防ぐことができる
  6. 能力、体型等の付加情報によって個体販売が有利になる
特に、5については、近年DNAレベルでの解析手法や技術の開発によってホルスタイン種特有の遺伝性疾患が明らかになりつつあります。1987年にはウリジン酸合成酵素欠損症(DUMPS)が、90年には牛白血球粘着不全症(BLAD)が、2000年には牛複合脊椎形成不全症(CVM)が発見され、これらをホモで持つものは正常に産まれないか、若しくは生後間もなく死亡するなど大きな問題があることから、わが国でもこれらを指定遺伝性疾患に定め、キャリアの種雄牛を排除し、形質の発現に歯止めをかけてきました。
さらに、2006年にはデンマークで新しい遺伝病として「ブラキスパイナ(BY)」が発見され、わが国でも関係機関で協議し、当協会が発行する血統登録証明書には昨年12月から形質の有無を表示しております。また、アメリカでの最近のゲノム検査によって、DNAのある塩基配列型(ハプロタイプ)が受胎率を低下させることが分かってきました。
これらの事態を避けるには、生まれたら血統登録をするという地道な行為の積み重ねでのみ可能であり、種雄牛の選定に当たってもできるだけキャリアのものは避けるということが必要といえましょう。
最後に一言、牛舎の中に籍のない(無登録)牛はいませんか?

平成25年01月20日「出生報告はお早めに!(自動登録)」 〜総務部より〜
出生報告は7日以内に
自動登録は、家畜個体識別センターへの『出生報告』と本協会が受領した人工授精データを用いて雌牛を自動的に登録するものです。
乳用牛の『出生報告』は「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」で、『出生後7日以内』に届出を行うよう推奨されています。
自動登録の場合、人工授精データが本協会に事前に提出されていても、『出生報告』が家畜個体識別センターへ提出されていない場合には登録できません。
個別登録申込みでは一次調査の時点でその旨を事故照会しますが、自動登録では『出生報告』が提出されない限り、当協会では出生の確認ができません。
そのためホルスタイン種の場合、『出生報告』が生後10ヶ月を超えたものについての自動登録料金は、自動登録/生後10ヶ月超過料金で請求致します(ホ種登録規程15頁第20条(1)イの(ロ)のbに掲示)。
なお、ジャージー種雌牛については、生後1年をもって登録料金が自動登録/生後1年超過料金で請求致しますので、合わせてよろしくお願い致します。
自動登録は、個別登録申込みより登録料金が安価です。『出生報告』が遅延したために起こる超過料金を避けるため、早めに『出生報告』をされるようお願い致します。

平成25年01月20日「生産性の高い牛群へ 体型審査を定期的に」 〜審査部より〜
酪農経営を行う上で、乳牛に求められる究極のものは泌乳能力であり、乳牛の本当の価値はその牛が一生涯にどのくらいの乳量を生産したかによって決まる。言い換えるならば、生涯生産能力をより一層高めていくことが生産コストの低減と収益性の向上につながる。
審査の意義
長い期間にわたって高い泌乳能力を維持するには、健康で骨格のしっかりした体型と付着・形状のよい乳房、丈夫な肢蹄等が必要で、これらは飼養管理や搾乳管理の作業効率を高める上でも重要な役割を担っている。
体型は必ず生産性や強健性などの機能を伴うものであり、外見上に表れるそれらの機能を早期に的確に見定めることが体型審査であり、その牛が生涯にわたって高い泌乳能力を発揮できるか否かを判定する重要な手法となる。
カナダでも
カナダでも「審査は、乳用牛の骨格構造の包括的な評価であり、牛群を機能的な体型に改良するのを手助けする重要な管理手法となる。良い体型の牛は、最適な作業性により日常の仕事が楽になり、故障や疾病に対する抵抗性が増し、トラブルが無く維持管理費用も低減される。」とアピールしている。
審査を受けるためには
雌牛が審査を受ける方法としてはホルスタイン種では2つのプログラムがあり、まず、牛群審査では飼養する牛群内の登録経産牛全頭を対象とし、申込みによって行う。また、体型調査事業では後代検定材料娘牛(初産検定中)を飼養している牛群検定農家の登録初産牛を対象に行うもので、都府県では毎年春と秋の2回、日本ホル協の審査委員が現地の担当者とともに県内を巡回し、酪農家の牛舎すなわち普段牛が飼われているところで審査を行っている。
実際の審査では、ハンディパソコンを用いて、各個体の体型について得点評価と線形評価を行い、審査直後にその場で審査結果を打ち出し、受検農家における直近の遺伝情報や種雄牛情報と合わせて審査結果の説明や交配、管理等のアドバイスも行っている。また、審査結果は自動的に審査成績証明されるとともに、血統、能力のデータと合わせて種雄牛および雌牛の遺伝評価にも利用され、遺伝情報として酪農家にフィードバックされている。
審査頭数回復
審査頭数につきましては、平成24年度12月末で、昨年の7,418頭に対し8,155頭と、ここ数年概ね1割増の回復傾向で順調に推移しており、今後1〜3月に実施いたします都府県につきまして特段のご協力をお願いする次第です。
最後に
牛群検定の実施と共に牛群審査を定期的に受検することは、牛群水準の向上には勿論、飼養管理や個体販売、さらには遺伝的改良を有利に進めることができ極めて有効である。
牛群審査を受ける場合は、原則として飼養する登録経産牛全頭が対象となるが、5歳以上や廃用予定、疾病牛等は除くことができる。改良をより効率的に進め、収益性の高い酪農経営を確立するため、今年度既に終了した都府県においては、来年度に向け是非とも受検をご検討願いたい。
1〜3月の審査日程
本年1〜3月に実施する都府県の審査日程は次のとおりです。審査に関する問合せは各都府県の登録取扱団体まで。
  • 茨城県:2月12〜22日
    東京都:1月17〜18日
    長野県:2月12〜22日
    愛知県:1月15〜23日
    京都府:1月15日
    大阪府:1月24日
    兵庫県:1月16〜23日
    広島県:1月15〜18日
    福岡県:2月12〜22日
    佐賀県:2月4〜5日
    長崎県:2月6〜8日
  • 東京都:1月17〜18日

平成25年01月20日「2012ロイヤル・ウインター・フェア」 〜ヘイリーがエキスポに続く2冠〜
カナダのロイヤル・ウィンター・フェア(ナショナル・ホルスタインショー)が、2012年11月8、9日にオンタリオ州トロントで開催された。トロントはカナダ最大の都市で、オンタリオ湖岸の北西に位置し、人口約250万人。会場となったのは、1世紀以上にわたって様々な展覧会場として利用されているエキシビション・プレイス(敷地面積78ha)内にあるカナダ最大のコンベンション会場、ダイレクトエナジセンターで開催された。
約340頭が出品
多くの観客と関係者の見守る中、カナダ国内だけでなくアメリカからも出品され、約340頭が頂点を目指した。
ホルスタインの審査はカナダ、ケベック州の酪農家カラム・マッキンベン氏が担当し、アソシエート審査員はブルース・モード氏(オンタリオ州)だった。
グランドチャンピオンは「RFゴールドウィンヘイリーET」
グランドチャンピオン及び乳用6品種のシュープリームチャンピオンには、10月アメリカで開催されたエキスポを制した「RFゴールドウィンヘイリーET」(7歳6月令・成牛クラス1位)に輝いた。彼女はジェンコム・ホルスタイン(ケベック州)からの出品で、父牛はゴールドウィン。正確なフレームとバランスに優れ、薄く光沢の良い皮膚皮毛、開張と方向に優れた肋骨、幅広く、付着に優れた乳器を持った優美な雌牛。体格得点では97点を獲得している。
準グランドチャンピオンには成牛クラス2位の「エビーホルムゴールドウィンマーシャ」(オンタリオ州、父:ゴールドウィン)に輝いた。
さすがに出品牛のレベルは高く、どの牛もき甲部が高く、肋の開張は上縁から始まり後方に流れ、内腿は薄く、乳房底面は高く、付着の高さと幅には圧倒される。当然であるが、出品牛の調教は行き届き、3頭セットのウイニングサークル撮影が1回でOKとなっていたのは圧巻。日本のレベルは確実に上がったが、世界の壁はまだ高かった。

GCのヘイリー(左)とRGCのマーシャ(右)

シュープリームチャンピオン「RFゴールドウィンヘイリーET」
7歳6ヶ月令成牛クラス1位(97点)


平成25年01月20日「審査員ワークショップ開かる」 〜審査手法の国際統一目指して〜
昨年の11月2日から11月4日までの3日間、アメリカ・ニューヨークナイアガラフォールズにおいて、世界ホルスタインフリージアン連盟(WHFF)が主催する第10回審査委員ワークショップ(以下、WS)が開催され、世界35ヵ国から39名の審査員が集まった。わが国からは、日本ホルスタイン登録協会の植原友一郎審査部長と北海道支局千葉義博審査部長の2名が参加したので、その概況を植原部長に紹介いただく。
審査員WS?
このWSはWHFFの体型審査部門における専門会議で、第1回を1990年にイタリア・クレモナで開催して以来、2年に1度、各国を巡回し、「国際的な遺伝評価統一のためには体型審査手法の国際調整が必要」をメインテーマとして、そのときどきの審査全般に関する話題を協議している。
各国の審査部長級担当者が一同に集まり、研修、協議をした後、自国に持ち帰り、国内の審査委員にその結果を伝達する仕組みになっている。
我が国は第1回から、審査部長またはそれに準ずる職員が欠かさず出席しており、その後の審査員の研究会に反映させ、国際間の審査眼の統一につとめている。
現場での検討
WSの初日は、宿泊場所に隣接した特設会場で、朝9時からミーティングが行われた。
内容は体型評価並びに線形評価に係わる各国間の相関、また、世界はゲノミック一色であることから、体型審査の減少に繋がる恐れや信頼度の低下が懸念される等の議論がなされた。
また、2日目・3日目は、各国間の体型評価、線形評価の国際的調和を図る目的から、会場をホテルから往復4時間かけたコイン牧場に移し、線形評価のスコアと体型得点・得率付けの現地研修を審査委員間の意見交換を含めながら行った。なお、特に線形評価において、国間で相関の低い形質について定義を再確認するとともに、歩様については評価スコアを国別に発表する形式で進められ盛りだくさんのプログラムであった。
評価値の相関
初日に開催されたミーティングでは、オランダの改良団体であるCRVのデ・ユング氏が18の審査形質と乳器、肢蹄、決定得点について、2010年1月のインターブル評価値を使って、日本を含む20か国の相関を紹介してくれた。
20か国全体の相関については表1に、2003年から2年ごとの変化を表2に示したが、要約すると次のようになる。
  1. 相関が0.90以上の高い平均相関がみられる形質は、高さ、尻の角度、乳房の深さ、前乳頭の配置、乳頭の長さである。
  2. 相関が0.80〜0.90の平均相関がみられる形質は、体の深さ、尻の幅、後肢側望、前乳房の付着、後乳房の高さ、後乳頭の配置、BCSである。
  3. 過去10年来スコア0.80未満の低い平均相関の変わらない形質として、胸の幅、鋭角性、後肢後望、蹄の角度、乳房の懸垂及び歩様である。
なお、わが国は、胸の幅と乳房の懸垂の2形質以外は他の国との相関は概ね満足できる値を示しているが、今後より高い値を示すよう研鑽を積んでいきたい。


平成25年01月20日「新たな出発」 〜登録部証書課長國行将敏〜
新人自己紹介
10月1日付で当協会に入会し、登録部証書課に配属になりました國行将敏(くにゆきまさとし)と申します。出身は北海道の大雪山が一望できる自然豊かな当麻町という町です。この度縁あって審査委員候補として入会し、現在は家族と離れ東京で単身生活をしています。こちらにきて3か月経過しましたが、都会の生活は初めてであり「生活できるだろうか」という不安もありましたが、今は慣れてきたかなと感じております。最近はデスクワークが中心となって運動不足になりがちですので、帰宅後や土日に散歩しています。
私の職歴は、農林水産省日高種畜牧場採用からはじまり、以後家畜改良センター岩手、鳥取、福島、新冠、宮崎の各牧場で23年間、牛の飼養管理業務や繁殖業務、調査試験業務などに携わってきました。ほとんどが乳牛牧場勤務でしたが、鳥取牧場では肉用牛改良業務で主に繁殖業務をしていました。新冠牧場では乳用牛改良業務で種雄牛の生産にも携わっていました。センター最後の職場となった宮崎牧場では主に調査試験業務でしたが、業務以外では宮崎県共進会の審査補助などを経験することが出来ました。
以前の職場では色々なことを勉強や経験をさせていただきましたが、その中でも一頭の牛をつくり育てることは、長い年月と大変な労力を経てできた産物であると学びました。そして、その過程を血統登録で、牛群検定で泌乳能力を、体型審査でその改良度合いを評価することで後世に記録として残していくことが重要であると思います。当協会では血統登録や体型審査、検定成績証明の業務を行っておりますが、農家の皆さまが努力してつくってきた牛たちの記録を残していく唯一の場であると思います。私はこのような業務が正確にできるよう証書課で血統登録の実務をしながら勉強している一方、審査委員として一人で審査が出来るよう先輩審査委員に随行しながら、審査業務の勉強をしているところです。
皆さまの牛舎で手塩にかけて育てた牛たちの体型審査ができるよう、さらに技術・知識を習得して、早く先輩審査委員に追いつけるよう努力いたします。審査に出向いた際にはどうぞよろしくお願い申しあげます。

平成25年01月20日「ブラキスパイナ検査」 〜昨年12月から開始〜
日本ホルスタイン登録協会は、新たな遺伝性疾患ブラキスパイナ(BY)の遺伝子型検査を昨年12月1日から開始した(家畜改良事業団家畜改良技術研究所が実施)。
単蹄、赤毛因子の検査も開始
BYの他にも今回新たに単蹄、赤毛因子の検査もはじめたことで、表のとおり従前のBLAD、CVMを含め5種類の検査が可能で、登録協会の支部・承認団体を経由して申込んでいただくことになる。
BYは2006年にデンマークやオランダで確認された遺伝性疾患で、症状は流産または新生子が死亡し、発症牛で生存する個体は確認されていない。発症牛の特徴は、脊椎骨の短縮と長い四肢、臓器・器官の異常が見られる。
遺伝様式はBLADやCVMと同様に単純劣性遺伝であり、両親がキャリア牛の場合に限って25%の確率で発現するので、交配には注意が必要である。
この保因牛を遡ると「スウイートヘイブン トラディション」に辿り着き、その息牛「ビスメイトラデイシヨンクレイタス」、そして最近の種雄牛では「ワーデルコンビンサーET」や「サンデイバレーボルトンET」がキャリアである。
検査結果は、血統登録証明書や血統能力証明書等に反映させるとともに、日本ホルスタイン登録協会のホームページともリンクしている家畜改良データバンク上にも公開している。

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平成25年01月20日1位「ルーブル」・2位「マンオーマン」 ~2012-12月海外種雄牛評価成績~
家畜改良センターから12月4日、海外種雄牛2012-12月評価が公表された。
1位「キングスランソムBルーブル」
今回は、「ボルトン」と「ボリヴァー」との交配で誕生した「ルーブル」が新規選抜で首位にたった。NTP+3,901、乳量+2,562と非常に高い数値を打ち出した。乳脂肪並びに蛋白質も高く、乳量と成分のバランスのとれた成績となった。12月発表のTPIでも39位であった。
2位「ロングラングスオーマンオーマンET」
2位には、前回8月発表2位、4月では1位であった「マンオーマン」(オーマン×アーロン)が入った。NTPは前回より更に265を加え+3,864となり、産乳成分と乳蛋白質率が高く、体型においても肢蹄と決定得点の改良に優れている。海外でもTPI6位、LPI1位と上位にランクされ、安定した成績を残している。1位の「ルーブル」ともども、日本でも期待される種雄牛。
3位は、前回トップであった「プラネット」となった。「ブラックスター」の息子「タブー」と「チーフマーク」系の「アメル」との交配で誕生した「プラネット」は、NTP+3,819、乳量+2,291、乳脂量+80と非常に高い成績となっている。また、順位も昨年4月新規で1位デビュー、8月2位、12月4位、今年4月2位、8月に1位に返り咲くなど、上位で安定した成績を残しているとともに、海外でもTPI15位、LPI5位と、世界で認められている種雄牛。
4位には、前回新規選抜で3位に入った「オルティマ」(エンシーノ×オーマン)が留まった。乳量が高く、NTPは+3,584、体型においても、肢蹄の改良に優れている。
5位には、前回新規で4位に食い込んだ「マッセイ」(エムトトの息子マスコール×フォーメーションの息子ブレット)が入った。乳量、乳成分、体型がオールプラスでNTPも+3,425。特に乳器の改良に優れ決定得点も高く、乳房炎に罹りにくいことを示す疾病繁殖成分が1位で137であった。
6頭が新規種雄牛として登場
今回トップ40位には首位の「ルーブル」、8位の「ジエイ」(ボルトン×ダーハム)を含め6頭が新規種雄牛として選抜された。父牛別では前回同様にオーマンの息牛が1番多く9頭、次いでボルトンとショトルの息牛4頭であった。3頭ともにラグアップルエレベーションの系統。また、母方の父ではBWマーシャルの7頭、オーマン4頭であった。
NTPにおいて、+3,000超えの種雄牛は、前回の4月発表では11頭で、8月14頭、今回は13頭を数え、多くの種雄牛が好成績を残している。参考として、国内種雄牛トップの「サンディスター」がNTP+3,496である。

平成25年01月20日「生涯乳量」 ~都府県24年11~12月~
24年11~12月に都府県で検定成績証明されたものの中から、別表には生涯乳量5万㌔以上の高記録牛60頭を示した。今回は上位4頭が総乳量10万㌔を突破した。
1位・池松和幸さん(福岡県)所有「アイハッピーフォーメーションクリスター」
今回の生涯乳量トップは、池松和幸さんが獲得した。1位の「アイハッピーフォーメーションクリスター」(平11.6.16生)は検定回数8回で検定日数3,658日、総乳量12万3,126㌔、乳脂量4,693㌔、平均乳脂率3.8%、乳蛋白質量3,937㌔であった。
本牛は、平均乳量が1万㌔を超えている(最高乳量2万240㌔)。この記録は、都府県では歴代21位の記録であり20位との総乳量の差を約400㌔とさらに縮めた。また、このたびの検定証明により自身の持つ県内の歴代1位の記録をさらに更新した。
2位・小針勤さん(栃木県)所有「コバリクロシルドSRジュエル」
2位は、小針勤さん(栃木県)所有の「コバリクロシルドSRジュエル」(平12.3.9生)の検定回数10回で検定日数3,004日、総乳量10万9,225㌔、乳脂量4,736㌔、平均乳脂率4.3%、乳蛋白質量3,683㌔であった。
本牛は、10産目の乳期記録を追加し、総乳量10万㌔超えを達成した。初産次を除く全ての乳期で乳量1万㌔を超えており(最高乳量1万2,613㌔)、今回の検定証明により県内の歴代記録8位を獲得している。
3位・槇芳行さん(福岡県)所有「ネバダビクトリアデューク」
3位は、槇芳行さん(福岡県)所有の「ネバダビクトリアデューク」(平9.1.8生)の検定回数11回で検定日数3,696日、総乳量10万9,018㌔、乳脂量4,688㌔、平均乳脂率4.3%、乳蛋白質量3,354㌔であった。このたび全産次の検定証明を一括申請したことで記録達成となり、県内の歴代記録4位を獲得している。
4位・中六角保広さん(岩手県)所有
「リバティーファームプレステージアウトサイドマスター」
4位は、中六角保広さん(岩手県)所有の「リバティーファームプレステージアウトサイドマスター」(平12.2.19生)の検定回数10回で検定日数3,159日、総乳量10万4,082㌔、乳脂量4,153㌔、平均乳脂率4.0%、乳蛋白質量3,140㌔であった。本牛も10産目の乳期記録を追加し、総乳量10万㌔超えを達成した。今回の検定証明により県内の歴代記録16位を獲得している。
本牛は、審査得点88点を獲得しており、泌乳能力だけでなく耐久性においても優れた成績を残している。
8位の亀田康好さん(埼玉県)、12位、19位の松島喜一さん(熊本県)、13位の植木靖さん(栃木県)、20位の高橋洋一さん(新潟県)所有牛を含む9頭が、審査得点EX(90点以上)を獲得し、体型においても優れた成績を残している。

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平成25年01月20日「検定成績優秀牛」 ~都府県、平成24年12月証明分F偏差値~