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平成26年01月01日


平成26年01月01日「目指せ!北海道全共」 〜山形県置賜農業高等学校〜
来年10月23日から北海道で第14回全日本ホルスタイン共進会が開催される。「全共に行こう」と最近特に頑張っている学校が全国に多くある。そのような中、今回は山形県の県立置賜農業高校の、乳牛改良と地域に根ざした取り組みの様子などを、鈴木隆英実習教諭に紹介していただいた。
概要
置賜農業高校は山形県南部、置賜地方のほぼ中心に位置する川西町に所在します。
創立は1895(明治28)年、今年で119周年を迎える県内一の歴史を誇る農業高校です。校訓に「質実剛健・誠実明朗・実践奉仕」を掲げ、農業をはじめ地域産業に貢献する人材を養成し、これまでに、1万8,000人以上の卒業生を輩出してきました。
学科は生物生産科・園芸福祉科・食料環境科の3学科で、旧飯豊分校農業科の2・3年生を含む348名が現代のニーズに対応した農業を日々学んでいます。
蓬田牧場
当校の総合畜舎、通称蓬田牧場は、県内の農業高校で唯一乳牛を飼育する農場で、校舎から北へ500mの高台にあり、乳牛14頭(うちジャージー種3頭)、黒毛和種4頭、採卵鶏50羽(烏骨鶏を含む)、やまがた地鶏年間300羽を飼育しています。
搾乳・哺乳はもとより、日中の一般管理・牛体洗浄等の実習を、生徒が当番制で行うとともに、2泊3日の宿泊実習を実施しています。勿論、共進会にも積極的に参加し、出品前には毎日調教を行います。
当校の飼養形態はつなぎ牛舎で、舎内に9カ所のペン(囲い)があり乾乳・分娩・育成中はここで飼育します。搾乳はパイプラインで行い、3年前に自動離脱装置付きのミルカーに更新したことで、乳房炎が減少し、安定した生乳生産ができるようになりました。
その他の施設として、動物バイテク用実験施設や鶏舎・飼料庫・乳、肉加工室等があります。昨年には卒業生の太田源一さんから寄贈されたラウンダーで牛の調教、特に共進会前は生徒達が毎日使っています。
また、当校は6haの草地を所有し、年3回採草を行っています。今年度の取組みでは、春先に雪上での堆肥散布を行い、忙しい農繁期前に終わらせられる他、草地を傷めない、堆肥の均質散布、雪解けに効果があると思われ実施しています。
ほかにデジタル糖度計による分娩前の乳汁検査(写真)や酪農教育ファーム活動をメインに授業展開を行っています。
共進会への取組み
当校が本格的に共進会へ参加を始めたのは5年前からです。きっかけは当校卒業生の深瀬幸二さんから寄付された「ハイスクールオキノーインアールジーニアス」号でした。深瀬さんには以前にも寄付をしていただき、当校の牛群改良に大きく貢献していただいています。また、卒業生で置賜ホルスタイン改良同志会の阪野信一会長とその同志会の方々にも、日頃から当校の酪農教育活動に大いに協力していただいています。
昨年の「山形県モーモーフェスティバル(モーモーF)」(山形県酪主催)では、日本学校農業クラブ連盟(FFJ)の県内での家畜審査競技会(乳牛部門)を開催し、牛の準備から審査まで色々な場面でご協力いただきました。
これらの成果として、見事2年生の生徒が県の予選会を突破。昨年10月に開催されたFFJ全国大会首都圏大会に出場し優秀賞を獲得。当校の畜産教育が確かであることが実感できました。これも地元の先輩方のお蔭であると感じています。この場をお借りしてお礼申しあげます。
共進会の成績も、昨年度より生徒の努力の成果が実り、結果を残せるようになっています。
一昨年のモーモーFでは、当校ホワイトソックス号が未経産部門でリザーブチャンピオン(RC)を獲得し、経産牛となった今も常に上位の成績を収めています。
昨春の県スプリングショウでは、ラダリア号(写真)が未経産部門でRCを獲得することができました。
東日本デイリーショーにも5年連続で出品し、昨年は惜しくも入賞はできませんでしたが、常に上位を争う水準を確保しています。昨年は、好成績を残すことができた一年となりました。
今後の目標は、来年に開催される北海道全共に出品することです。当校は、第9回全共(熊本)第7部に出品して以来、久しく縁がないまま20年近く過ぎています。しかし、次回開催の北海道全共では、高等学校特別枠があり、各地区ブロックごとに高校からの出品が可能だと聞いています。農業高校への予算も厳しい中、出品するからには上位入賞し、当県の酪農教育のレベルの高さをアピールするためにも、これからが正念場と言えると思います。
来年度より畜産教育を強化するため、部活動に畜産班を新たに設ける準備をしています。全共に向け、さらなる生徒の知識と技術力UPに繋げていきます。幸い、卒業生の大勢の酪農家諸先輩から「今後の酪農家育成といった面からも出来ることは何でも協力する」と、温かいお言葉もいただき、学校一丸となって全共に臨みたいと思います。
地元に根ざした活動
今年度から当校では酪農教育ファーム活動を行っています。PRの少ない中、今年度は100名もの方々が、牧場に足を運んで体験をしてくださいました。
中でも、毎年、当校独自で行っている置農ファンクラブ活動の中に酪農体験を組入れた結果、早朝6時からにも拘わらず30名近い親子が参加していただきました。
体験内容は搾乳・哺乳・牛のブラッシング・バター作り等で、生徒が講師となり説明をしています。参加した子供たちは初めての体験に目を輝かせていきます。また、生徒が教える立場となることで、多くの知識を蓄えます。そのため非常に学習効果の高い活動だと実感しています。
今年は中央酪農会議の認証を受けるため、置賜地域の教育機関に酪農体験について案内をし、当校だけの教育だけでなく、置賜全域、ひいては山形県の酪農教育は当校から展開できるような環境を作っていきたいと思います。そして、多くの方々に、酪農に興味を持って欲しいと思います。
先日は、地元FM山形の公開生放送『山形県牛乳普及協会プレゼンツ頑張れ!!未来の酪農家〜朝倉さやも応援してっぞーLive〜』に参加させていただき、ラジオという公共の電波を通して県内各地の方々に酪農体験の重要さや酪農の現状等をアピールすることができました。
目標は全共出品
今後の取り組みとしては、やはり、目標は全共出品!そのためには、日頃の飼養管理を徹底し、優秀な牛を育てることです。そして、酪農教育ファーム活動を通して、未来の酪農家を養成し、広く沢山の方々に酪農を理解していただき、興味を持った子供たちは、当校に入学して学び、卒業後は地元で酪農に従事していただければ大変うれしく思います。
また近年では、農業高校から沢山のEX牛(審査得点90点以上)がでています。当校も負けていられないと考えています。
当校の正門の看板に「いのちの学び舎地域と共に歩む農業高校」と記されています。現在の農業・酪農を取り巻く環境は大変厳しいですが、命の学習を基本とし、地域に根ざした学習を行い、地元に有為な人材育成を目指した学習活動を続け、若い力で山形県の農業を盛り上げていきたいと思います。