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機関誌

機関誌内容一覧

平成14年1月20日


平成14年1月20日
「耳標装着スタート」
全頭に固有番号を付与~血統登録等で斑紋に代えて利用~
牛海綿状脳症(BSE)緊急対策の一環として、伝染病発生時に牛の移動経路を瞬時に把握して迅速な防疫対策を講じることと、安心で安全な畜産物の供給を図ることを目的に、家畜個体識別システム緊急整備事業が13年度事業として組まれ、この1月から3月までの3ヵ月にわが国で約450万頭の牛に対して個体識別番号の刻印された耳標が装着される。これを受けて、日本ホル協では、耳標装着したホルスタイン牛を登録する際は、斑紋に代わつて個体識別番号で個体確認を行い、登録証には耳標イメージでその番号を表示することになつた。
移動経路追跡に利用
今回実施される450万頭の耳標装着は、13年度から着手した「個体管理情報新技術実用化促進事業」で平成16年度完成を目指していた耳標の全頭装着計画を、BSEの国内発生に伴い、大幅に前倒しして行うもので、事業名も「家畜個体識別システム緊急整備事業」とし、(社)家畜改良事業団が事業主体となっり、独立行政法人家畜改良センターが中心となって行われるものである。
特に、今回のBSE発生に伴い、国民の食生活の安全性を確保するためには、患畜の移動歴や同居牛等の所在を迅速に追跡調査し、家畜防疫上の措置を的確に実施する必要がある。そのためには、全ての牛に生涯一つの個体識別番号を付け、この番号に基づいて個体の移動歴等を把握する「家畜個体識別システム」の導入が効果的であることから、今回の事業の第1目的は、このシステムを緊急に整備して、「良質な畜産物とともに消費者に安心を届ける」ことの確保にある。
先ず、1月から3月までの耳標装着は、昨年中に各都道府県において作成された農家マスターに基づいて準備された耳標を1頭1頭に装着すると共に、装着以前の種々な個体確認法との関連づけを行うことも含めて、所有者(電話)番号、牛群検定農家コード、基金契約者番号(子牛基金)、畜種区分等の農家情報と共に、個体識別(耳標)番号、牛群検定の牛コード、血統登録番号(乳用牛)、品種(コードと略称)、性別(コードと略称)、性別などを基礎情報として報告することになっている。
また、これらの耳標装着牛が分娩した場合、生まれた子牛に直ちに耳標装着すると共に、出生報告書を提出する。その内容は、農家コード(電話番号)、個体識別番号、品種、性別、生年月日、母牛の個体識別番号等で、農家がその都度出生報告カードを整理して電話(音声応答システム)かファックスで報告することになっている。
また、耳標装着牛に異動が生じた場合は、異動内容(転入、転出、死亡)と異動年月日などを異動報告カードに整理して出生と同じような方法で報告する。
また、このシステムの確立によるメリットを酪農(家)に限って整理すれば、
①個体確認の簡素化できる(家畜の取り違えの減少、団体における業務の効率化が図られ、結果として農家の負担が軽減される)
②登録事業や共済など全ての団体や事業において同一番号を活用できる(飼養管理や牛群管理が合理化される)、
③確実な個体識別により検定などの精度が向上する(改良及び牛群整備の効率化や飼養管理の改善が可能となる)
④導入家畜の来歴確認が可能となる(伝染性疾病の進入を阻止できる)
などが期待されている。
なお、農家は、個体識別管理システムで管理している全国データベースにアクセスして、各所有牛について個体識別番号ごとに蓄積された基礎情報を利用することができる。
装着される耳標は、左右の耳に1枚ずつ付けることになっている。なお、裏側には余白があり、この耳標を装着する以前から付いていた様々な耳標の情報を書き込むことができる。
なお、耳標が何らかの事情で脱落した場合は、先に紹介した異動報告カードに整理の上、電話又はファックスで同一番号の耳標発行依頼できる。概ね2週間で指定の送付先に届くことになっている。
申込みは書類で受付け
さて、今回の緊急整備事業で耳標が装着されたホルスタイン牛の登録上の取扱について、日本ホル協では、授精記録の報告が義務化されていないこととデータベースが完全に機能するまでに時間を要すると考えられることから、平成9~13年度末まで実施の「家畜個体識別システム研究開発事業」によるモデル実施の場合と切り離して、別に3月までの期限付きで「取扱要項」を制定して、対応することにしている。
即ち、従来の血統(基礎)登録申込みと同様、書類による申込みとし、個体識別は耳標番号(斑紋の記載は必要なし)によって行い、授精証明書の添付(又は申込書の所定欄への記載)を求めることにしている。
また、登録牛の所有者が変更した場合は、従来どおり移動証明が必要としている。(詳細は次頁『日本ホル協の対応』に掲載)
平成14年1月20日
「乳量アップが決め手」
~平成12年牛乳生産費統計から~
農林水産省ではわが国酪農の安定的な発展を図るため、今後の酪農経営等のマスタープランとなる「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」をはじめ、「家畜改良増殖目標」等の畜産振興に係る各種方針を昨年4月に公表したところであり、今後はこれらの基本方針等に即して、各般の施策を的確に推進していくこととしている。
酪農の安定的な発展のためには、生産性の向上によって生産コストの低減を図ることが重要であるが、その基本は乳用牛改良の推進とともに能力を最大限に発揮させる飼養管理技術の推進を図ることである。
能力向上が如何に生産性の向上にとって重要であるか、ここでは、牛群の平均乳量の差が生乳生産コスト及び収益性に及ぼす影響について、農林水産省統計情報部「平成12年牛乳生産費統計」をもとにした組替集計結果から見てみよう。
図(全酪新報参照)は、乳量階層別に経産牛1頭当たり平均乳量(乳脂率3.5%換算)と経産牛1頭当たり平均粗収益及び支出との関係について示したものである。これを見ると平均乳量が増加するに伴い、粗収益、支出ともに増加しているが、粗収益の増加額が支出の増加額を上回っており、平均乳量が多い酪農家ほど収益性(所得)が高いことがわかる。
具体的な数字を挙げてみると、平均乳量が6千~7千㎏階層に比べ、9千~1万㎏階層では、支出が13万9千円増加しているものの、粗収益が23万7千円増加していることから、結果として所得は13万6千円から23万4千円へと約72%増加している。
また、1千万円の所得を得るために必要な乳用牛(経産牛)頭数を計算すると、平均乳量が6千~7千㎏階層では74頭必要となるが、9千~1万㎏階層では43頭となり、約6割程度の頭数で間に合うことがわかる。
同様に出荷乳量を3百トンと限定した場合に必要な経産牛頭数について計算すると、6千~7千㎏階層では46頭必要であるのに対し、9千~1万㎏階層では32頭で間に合い、所得も増加する傾向が見られる。
以上のように、1頭当たり乳量の増加によって生産の向上を図ることは、酪農経営において、所得の向上などに大きく寄与しており、乳量を伸ばすこと、すなわち、牛群検定の活用による効果的な牛群の改良を進めることにより、乳用牛の遺伝的能力を高めるとともに、その能力に見合った飼養管理を推進していくことが、いかに重要なことであるかがわかる。
(農林水産省生産局畜産部畜産技術課)
平成14年1月20日
「1頭1頭の蓄積が大きな力に」
~(社)日本ホルスタイン登録協会会長高島照治ご挨拶~
酪農家の皆様並びに関係者の皆様、あけましておめでとうございます。
皆様におかれましては、「よい一年でありますように」との気持ちをより強くして新年を迎えられたことと思います。
牛海綿状脳症(BSE)発生により酪農を取り巻く厳しい環境の中で新年を迎えました。
今年は、消費者の信頼を取り戻し、牛肉消費が回復し、以前のような状況下で、安心して酪農が営めるような一年になってほしいものです。
さて、新年早々から、BSE関連対策の一つとして、家畜個体識別システム緊急整備事業が始まっております。これは、国内で飼養されている約450万頭の牛全てに10桁の個体識別番号の付いた耳標を装着して、個体情報管理システムを構築し、迅速かつ的確な移動経路の把握を可能にして、家畜防疫体制の確立と安心.安全な畜産物の供給を図ろうとするものです。
日本ホル協では、この事業で耳標が装着された牛については、斑紋に代えて耳標番号を用いて登録することにしており、取扱要項の制定に向けて各地区毎に開催している日本ホル協社員や役員による連絡協議会で意見調整をしているところであります。(詳細は、次頁『日本ホル協の対応』参照)
本年4月の登録制度の一本化を柱とする登録規程改正と時期が重なり、いろいろ混乱も予想されますが、日本ホル協機関誌(本紙)やパンフレット等を通じて周知徹底を図るとともに、円滑な登録証明書の発行が行えるよう準備を進めているところであります。
緊急整備事業は13年度事業ですが、14年度以降も耳標による個体識別と個体情報管理は継続される事業ですので、日本ホル協としては、この耳標による登録がより簡単に安く行え、より多くのホルスタイン牛が登録に加われるようにするため、個体管理情報に授精記録を取り込むなどして環境を整えるべく関係方面に働きかけてまいる所存であります。
牛の改良にはまず個体を確認し、血統を明らかにすることから始まります。明らかにするということは、第三者がその牛の誕生に係わる母の授精や分娩などの記録から父牛を特定・確認して記録に残すことであり、登録することにほかなりません。そして、この登録を行った牛たちこそ「改良集団」と呼べるものなのです。
次に、改良集団の血縁を拠り所に、能力や体型の遺伝分析を行い、その結果に基づいて、程度の差こそあれ雌雄共に選抜淘汰を繰り返していくことが地道ながら改良を進める方法であります。
現在の乳牛改良は、一個人、一国だけで成るものではありませんが、その基礎となる血統の記録は、飼養者である各個人の弛まぬ改良意欲に裏打ちされた1頭1頭の登録に始まります。
個体識別の耳標を付けた今こそ、わが国の改良集団を拡大すべく千載一遇の好機と捉え、より一層の登録拡大のため日本ホル協役職員一丸となって事に当たってまいる決意でありますので、会員はもとより関係各位におかれましても、より一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
皆が「いい年であった」と振り返られる一年でありますように。