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平成28年01月01日


平成28年01月01日「本校初の全共出場!」 ~鹿児島県立鹿屋農業高等学校~
昨年10月に開催された第14回全日本ホルスタイン共進会では、新たに高校枠が新設され、1校1頭の出場が可能となった。また、県共等から全共に出場した実力派を含め、18道府県26校32頭が出場した。その中でも京都府立農芸高等学校とともに3頭の出品を果たした「鹿児島県立鹿屋(かのや)農業高等学校」の取り組みについて、同校の濱﨑由里教諭に紹介していただいた。
概要・沿革
鹿児島県はシラス台地が広がる温暖な気候で、畜産やさつまいも・お茶などを中心に農業が盛んな地域です。中でも畜産業においては、豚全国1位、肉用牛(黒毛和種)全国1位、ブロイラー全国2位、産卵鶏全国3位、乳用牛においては全国12位となっており、日本一を争うほどの畜産県です。
本校は大隅半島のほぼ中央に位置する鹿屋市に所在し、今年度で創立120周年を迎える歴史と伝統のある農業高校です。校訓に「誠実・敬愛・力行」を掲げ、文部科学省指定の農業経営者育成高等学校として、地域の農業、文化・産業及び国際社会の発展に寄与する調和のとれた個性豊かな人材を育成することを目標としています。
設置学科は、農業科・農業機械科・畜産動物学科・生物工学科・緑地工学科・生活科の6学科で、現在522名の生徒が在籍しています。中でも、農業科・畜産動物学科・生物工学科は自営者養成学科として、1年時には自営者養成寮「責善寮」に1年間義務入寮いたします。寮生活を通して、自主性・協調性・責任感を重んずる態度を養い、教養豊かで実践力に富む社会人の育成を目指しています。
また、県内各地より本校で農業を専門的に学ぶために入学してくる生徒も多く、薩摩半島や遠方では沖永良部島や徳之島といった離島からの生徒も多いです。
畜産動物学科
本校では、乳用牛約70頭、肉用牛約60頭、豚約140頭、産卵鶏約530羽を飼育しており、畜産農家の後継者育成に取り組んでいます。
酪農・肉用牛・養豚・養鶏での実習を通して、命の大切さや家畜への感謝の気持ちなどを学び、2年時より酪農班・肉用牛班・養豚班の3部門に別れて、専攻学習を行っています。日々の飼養管理は勿論のこと、7泊8日の農家委託実習や就農志向者視察研修など、地域農家の協力のもと多くのことを学んでいます。
酪農専攻班
酪農専攻班は3年生14名、2年生13名でグループ学習しています。牛舎は平成23年度に新牛舎となり、フリーストール牛舎で搾乳牛を飼育し、タンデム方式のミルキングパーラーで搾乳しています。また、分娩牛舎や育成牛舎も別にあり、給餌・搾乳・哺乳といった一般管理を毎日当番制で行っています。
その他、分娩介助、発情確認や人工授精、受精卵移植・採卵を学習し、イタリアンライグラスを主体としたロールベールサイレージやトウモロコシサイレージの作製といった牧草の栽培管理等も学習しています。
課題研究では初乳の免疫グロブリン濃度をデジタル糖度計で計測し、子牛の免疫力の向上を図る研究や廃乳石けん作り等を研究しています。
共進会への取組み
鹿屋農業高校の現在の姿があるのは、これまでの先輩方が取り組んでこられた乳牛の改良や日々の飼養管理技術を受け継いできた努力の結果です。
共進会への出品取組みは毎年行ってきましたが、平成22年に開催予定だった第13回全共に向け、受精卵移植や牛(北海道産)の導入を重ね、牛群の改良に力を入れてきました。しかし、残念なことに口蹄疫の発生等で中止となり、仕切り直して取組みました。
今回はこれまでより高いレベルでの取組みを目指し、4年前から、鹿児島県乳牛同志会柿元博志会長をはじめ地域酪農家のご指導のもと、毛刈りや調教に力を入れてきました。毛刈りについては、休日に少しずつ練習を重ね、地区の共進会では、自分たちでほぼ全ての牛の毛刈りができるようになりました。また、毎日朝夕牛洗い・調教を重ね、進路決定の大切な時期でも、牛との時間を大切にし、コツコツと努力してきました。
ジャッジングについても力を入れ、鹿児島県学校農業クラブ連盟(FFJ)の家畜審査競技会(乳用牛の部)では、3年連続最優秀賞を受賞し、4年前の全国大会では優秀賞に入賞しました。
このような生徒たちの努力が実り、共進会においても成果を残せるようになりました。
第10回及び第11回オール九州ブラックアンドホワイトショウで2年連続リザーブチャンピオン(未経産の部)を受賞し、鹿児島県ホルスタイン共進会では、今年で3年連続グランドチャンピオン(未経産の部)を受賞しました。一昨年は九州連合ホルスタイン共進会へ鹿児島県代表として3頭出品しましたが、惜しくも1頭のみが4席入賞という結果となりました。昨年は一昨年の雪辱を果たすべく、全共出場及び入賞を目標に力を入れてきました。
本校初の全共出品
昨年の鹿児島県ホルスタイン共進会では、例年になく各酪農家さんが力を入れており、第14回全日本ホルスタイン共進会へ出場が出来るか不安がありました。しかし、3部門で最優秀賞1席を受賞し、本校では初めて全共へ出場を決めて、10年越しの思いを果たすことができました。中でも、グランドチャンピオンを受賞した瞬間に、リードマンの女子生徒の涙を見て、これまでの努力が報われたと感じました。生徒たちは全共を楽しみにしており、北海道共進会会場に到着した時、感極まる様子でした。また、全国から集まった牛を見るなり、体高や体の幅、乳房のレベルの高さに圧倒され、驚きの表情を浮かべていましたが、「今までやってきたことを精一杯やるだけだ」と、大舞台で牛とともに堂々と歩いていました。審査が終わった後もすがすがしい様子で、持っている全てを出し切った様子でした。
全共ではレベルの高い牛たちが連なる中、第5部優等賞6席を始め、出品した3頭全てが一等賞以上に入賞することができました。また、全共へ参加し、各県の優良な牛を見ることで、牛を見る目を養うことができ、他県の農業高校や酪農家とともに時間を共有できたことで、コミュニケーション能力の向上につながったことから、非常に貴重な経験をさせていただきました。これも地元の酪農家や関係機関の方々のご支援のお陰であると感じております。この場を借りてお礼申し上げます。
先日、地元の新聞に鹿屋農高酪農班を取り上げていただいた際に、生徒たちが「生き物を育てるのは1人ではできない。助けてくれた仲間みんなで取った賞である。後輩にはもっと上位を狙ってほしい。」とコメントを残しました。このように、全共出場という一つの目標に向かって努力することで、生徒間の信頼関係や団結力・責任感を養うことが出来たと感じています。また、共進会への取組みは、かけがえのない教育効果を生み出すものと感じており、先輩達の頑張る姿を見て、後輩達が育っていく姿を見るのが楽しみです。
第5部優等賞6席
「KANOレキシコンマークスマン」(父:レキシコン)
地域に根ざした活動
鹿屋市には、恵まれた自然環境のもとに優れた乳用牛を育成する目的で「鳴之尾牧場」という市営の牧場があり、市内の酪農家が子牛を同牧場に一定期間預け、ここで飼育する仕組みがあります。本校からも、鹿屋市鳴之尾牧場へ育成牛を預けています。足腰が強く、生産寿命の永い牛を生産するために、預託依頼をし、入牧・下牧の際には、鹿屋市の酪農家や関係機関を手伝っています。また、昨年は鹿屋市が主催する農業まつりの搾乳体験を手伝い、地域の方々とのふれあいを大切にしています。このような活動や共進会を通し、地域の酪農振興に協力をした功績を讃えられ、鹿屋市より特別表彰を受けました。
JA主催のアグリスクールでは地域の小学生の親子約40組を相手に搾乳体験・子牛とのふれあい等を行いました。生徒は先生となり、子どもたちへ搾乳の仕方、牛の生態のことや子牛のふれあいかたなど、多くのことを教え、子どもたちと楽しく過ごしていました。子どもたちは初めて見る牛の姿に驚きと歓喜の声を上げ、好評でした。
文化祭では、鹿屋農業高校で生産・加工している「農高牛乳」を販売し、わずか15分ほどで完売し、地域のお客様から「農高牛乳はおいしい」とお褒めの言葉をいただき、これからの励みになりました。
地域の方々との交流を通して、生徒たちはコミュニケーション能力を身につけ、地域に育てられています。
今後の目標
共進会においては、これまでの成績に恥じないように努力し、未経産・経産ともに入賞することが今後の目標です。4年後の全共は鹿児島の隣、宮崎県都城市での開催となるため、「九州はひとつ」を合い言葉に努力し続けたいと思います。
また、共進会は教育のひとつであるため、このことをきっかけとして、鹿児島の酪農後継者や酪農関係に就職する生徒を一人でも多く育てることが最終目標と感じています。現在、日本の農業・畜産はTPP問題や、飼料費の高騰など厳しい環境下に置かれていますが、家畜に感謝し、命の大切さを学ぶことをモットーに鹿児島の農業・畜産を盛り上げていきたいと思います。