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機関誌

機関誌内容一覧

平成29年01月20日


平成29年01月20日「自動登録加入推進で改良集団の拡充を」

-(一社)日本ホルスタイン登録協会会長前田勉-
新年明けましておめでとうございます。
会員酪農家の皆様、登録委員や関係団体各位におかれましては、良き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
日頃より当協会事業に対しまして格別のご支援ご協力を賜り厚くお礼申し上げます。
昨年は、熊本地震をはじめ北海道や東北での相次ぐ台風襲来等、多くの自然災害が発生しました。被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げます。
さて、廃業等による酪農家戸数の減少と生乳生産量の減少が続いており、このまま放置すれば、国内牛乳・乳製品の需給にも大きな影響を与えることが懸念されます。また、指定生乳生産者団体制度の見直しや農協改革等が求められており、関係団体においては、酪農の将来展望と併せて緊急にこれらの対応策を示さなければならない状況に苦慮されていることと思います。
国では、畜産クラスター事業を主体として、酪農生産基盤の維持強化や乳用牛の改良増殖による遺伝的能力向上を図るための様々な対策を講じていますが、当協会としましても、引き続き、遺伝的改良の面から生産性向上とコスト低減に有効な事業の実施や情報提供等に努めていきたいと考えております。
都府県は年間5万頭が未登録のまま
具体的には先ず第一に血統登録の推進です。
北海道では毎年生まれてくるホルスタイン雌子牛の98%が登録されていますが、都府県では68%前後に留まっており、残りの約5万頭は未登録のままになっています。血統が分からなければ、強い近親交配や遺伝病によるリスクを負うことになり、これでは健康で長持ちし、かつ高い泌乳生産性を期待することはできません。
個々の酪農経営のため、さらには日本全体の酪農生産基盤を守る布石としてこの5万頭を登録して改良集団の中に組み込むことが必要と考えます。そのためにも安価で簡便な自動登録への加入推進を図っていきます。
第二にはSNP検査の普及とゲノミック(G)評価値の利用推進です。
SNP検査結果と従来の遺伝評価値及び血縁情報から算出されるG評価値を用いれば育成段階での選抜とう汰が可能になります。
乳用後継牛の価格高騰が続く中で、限られた資源を有効活用し、その中から優良な後継牛を確保することは次代の酪農生産性の向上につながるものと考えます。SNP検査の実施とG評価値の活用は極めて有効な手段であり、関係機関と協力しながら、SNP検査の普及推進に努めます。
また、本年度から「自動登録同時SNP検査申込」を新設し、自動登録と併せてSNP検査を実施した時は、登録料の半額還元を行う等、自動登録並びにSNP検査の奨励を行っています。
また、SNP検査を行うことで、登録上の父母や母方祖父牛との血縁関係をチェックできます。血縁疑義が出たときには、速やかに従来の親子判定検査を実施して正しい血統に修正することも強化しています。
G評価も登録等の基礎データ収集が必要
第三には、長命連産や生涯生産性を高めるための牛群審査や初産牛体型調査の推進です。審査委員が直接、審査受検農家を訪問して行うこれらの審査結果をその場で印刷還元し、体各部位の特徴や改良期待点等が示されます。これらの審査データは、牛群検定や血統登録情報と結合して、種雄牛や雌牛遺伝評価成績の計算に利用され、その結果、優良な検定済種雄牛が選抜され供用されています。
前述したG評価についても、SNP検査を実施しただけでは、信頼度の高い評価値が出るわけではありません。酪農家の皆様が実施されている正確な登録と牛群検定、体型審査の各データが蓄積・更新されてこそ、より信頼度の高い評価値が計算されるものであり、引き続き登録や検定・審査データの収集が必要であることは言うまでもありません。
全共で高校出品奨励次代の酪農後継者育成を
そのほかの事業推進としては、平成32年10月末に宮崎県都城市の都城地域家畜市場で開催される第15回全共九州・沖縄ブロック大会に向けて、来年度早々には、出品区分の詳細をお知らせできるとともに、実行委員会を設立して全共開催の具体的な準備を進めていく計画です。前回の北海道全共と同様に後代検定娘牛出品クラスや高等学校出品奨励も行う予定です。
全共での高校出品奨励については、酪農家の子弟は勿論、非酪農家の子供達にも牛や酪農に対する興味や関心を持ってもらい、将来は酪農後継者や酪農関係の仕事に就いてもらいたいと期待するところです。
本年も当協会事業に対して、皆様の特段のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げますとともに、皆様方にとって益々のご健勝とご発展を祈念して年頭のご挨拶といたします。

平成29年01月20日「進めよう!血統登録」

-日ホ協登録部-
酪農経営の安定には後継牛確保が必要
新聞雑誌等で報じられているとおり、最近の乳用種初妊牛価格は高騰の一途を辿っています。これは、素牛不足に加えて、北海道・都府県のメガファームなど大型牧場の導入意欲が強いことが要因と考えられますが、すでに一般酪農家が容易には手を出せないほどの価格で推移しております。
とはいえ、経営体として考えた場合、一定の生乳生産量を確保すること並びに一定の乳質を保つためには乳牛の更新は不可欠であり、後継牛を確保することは極めて重要な案件となります。
一方、経営の安定を図ることを考えた場合、生産性の向上による生産コストの低減が求められています。一時的には増頭やエサの多給によって生乳生産量を上げることで乗り切れますが、長い目で見れば、遺伝的能力を向上させ、これを効率的に発揮させることによって、牛群の能力水準と斉一性を高めていくということが重要と考えられます。
一般的には乳量や乳成分率、体型等の形質において、親から子へ遺伝する割合は、乳量で30%、乳成分率で50%、体型形質では10~30%程度と推定されます。現在では種雄牛の後代検定や牛群検定の実施によって、種雄牛や雌牛の遺伝評価値が発表され、そのレベルは年々向上しています。
酪農家は、総合指数(NTP)や各形質の遺伝評価値を活用して、より優れた後継牛が期待できるような交配と選抜淘汰を行って、生産性の向上を図ることができるようになります。
牛群改良の第一歩は登録から
牛群改良の第一歩は正確な記録をとることから始まります。記録が正確でなければ、いかに優れた交配や選抜淘汰を行ったつもりでも、改良の効果は上がりません。
個体記録の根幹をなすのが血統登録です。いつ、どこで、どういう父母から生まれたかという血統情報があって初めて、近親交配や遺伝的不良形質の発現を防ぐことができます。また、血統の特徴は泌乳能力や体型面によく現れます。血統の記録を牛群検定や体型審査成績と結び付けることによって、血統の特徴を生かした改良を的確に行うことが可能になります。
すなわち、登録は、酪農家の交配計画に有効に活用されていることは言うまでもありません。
登録のメリット
酪農家にとって登録することのメリットは、
  1. 登録証明書によって父母、祖父母など血統が明確になるとともに、登録協会の登録簿に記載され、永久的に保管される
  2. 遺伝的に優れた血統をより確実に残すことができる
  3. 血統濃度(47~100%)によって血統の純粋性の度合いが明示される
  4. 強度の近親交配を回避できる
  5. BLADやCVM、さらにハプロタイプなど遺伝的不良形質の発現を未然に防ぐことができる
  6. 能力、体型等の付加情報によって個体販売が有利になる
などが挙げられます。さらに、⑦国並びに関係機関が行う種雄牛や雌牛の遺伝評価に際しても当協会の血縁情報が利用されており、その意味合いは益々重要になってきております。
言い換えるならば、乳牛の腹をF1生産や和牛ETのためだけに使うなどもってのほか。貴重な乳牛の後継牛を残し、それを再生産のために使うということで発想の転換を行ってほしいものです。
最後になりますが、牛舎の中のもう1頭、登録に結びつけていただくようお願いします。

平成29年01月20日「新会員について」

-日ホ協総務部-
これから乳牛の血統登録を新たに始められる方は、日本ホルスタイン登録協会の会員になっていただき、乳牛の移動証明や遺伝子型検査、牛群審査、検定成績証明などを活用いただき、乳牛の改良に役立てていただきたいと思います。新規の会員を希望される方は、当協会の各都府県支部・承認団体、または所属している酪農協等へご連絡をお願いします。
ご注意いただくこと
  1. 子供等が後継者となる場合、親子間で子供が親の会員番号を引き継いで、名義だけを換える事は出来ません。その際は、新たに子供の会員番号を取得する必要があります。
  2. 個人会員の方が法人格(有限会社、株式会社など)を設立し、法人名義で血統登録したい際にも、新たな会員番号の取得が必要となります。その際には「法人の抄本の写し」または、「謄本の写し」の提出が必要です。
また、子供へ代替わりをする際(父親の引退)や、現会員で廃業される際には、速やかに支部・承認団体または、所属している酪農協等へ、ご連絡をお願いします。所属先より「退会届」が当協会へ提出された後、正式に退会となります。

平成29年01月20日「ファインリコダッチ 群馬県初の自家産94点誕生」

-遠坂和仁さん-
平成28年の第20回群馬県畜産共進会経産名誉賞並びに第18回関東地区ホルスタイン共進会第8部優等賞首席に輝いた、群馬県太田市薮塚町・遠坂和仁牧場のファインリコダッチ(No.1262972890、22.3.31生、父:ゴッドフレイラティチュードET)が、平成28年12月の体型審査で同牧場(自家産)初めての高得点94点に評価された。
リコは平成26年12月(4歳8月、3産)の体審で90点を獲得し、その後平成27年12月に91点。今回順調に5産目を平成28年9月11日に分娩し、県内では13年ぶりに2頭目の94点(6歳8月)が誕生した。
各部の配点は、体貌と骨格93、肢蹄91、乳用強健性94、乳器95(12月20日確認審査実施)。
本牛は大柄な牛であるが、それ以上に前躯から後躯にかけての長さと幅があり、頸は薄く長く、肋の開張に極めて優れ、また、乳房は容積形状に優れ、前乳房の付着は極めて強く、後乳房の高さと、幅もあり、乳頭配置も良好で、乳房底面は5産しても飛節より7cm程度高い位置にある。
リコは能力も非凡なものを見せている。4乳期305日の乳量合計でM40,258kg、F2,188kg、P1,431kg。今産の検定中乳量を加えると44,903kgで終了時点では5万kgを超えると予想され、能力と体型のコンビネーションに優れ、また長命連産性にも優れた牛である。
また、彼女は平成27年に開催された、第14回全日本ホルスタイン共進会北海道大会にも出場している。
リコの父は、体型面で優れ、娘牛は85点以上が16頭おり、そのうち4頭は90点以上を獲得している。
なお、群馬県内初の94点は、高崎市剣崎町(株)長坂牧場「シーダーデールエレベータースタールンド(父:スターダム)9.1.25生」である。
群馬県・遠坂和仁さん所有
「ファインリコダッチ」(父:ゴッドフレイラティチュ-ドET)

平成29年01月20日「検定成績優秀牛」

-都府県、平成28年12月証明分F偏差値-

平成29年01月20日「職員募集」

(一社)日本ホルスタイン登録協会では、このほど都府県における体型審査委員候補として職員を募集します。
採用人数は1名で、応募資格は、酪農関係業務に概ね10年以上従事し、乳牛改良や登録事業などの知識が豊富であるなど。締切は平成29年3月31日(金)。募集の条件など詳細は、当協会Webサイトをご覧願います。職員募集要領はこちら。
(一社)日本ホルスタイン登録協会

平成29年01月20日「ホルスタイン手帳好評発売中」

-2017年版-


平成29年01月20日「ジャージー視察交流会開催」

-大雪で視察は断念群馬県・神津牧場-
統計開始以来の早い積雪
日本ジャージー登録協会(東山佑介会長)は去る11月24日・25日の両日、全国ジャージー酪農振興協議会(真田善弘委員長)並びに公益財団法人神津牧場(須山哲男場長)の協賛の下、長野県佐久市の佐久平プラザ21会議室において、ジャージー視察交流会を開催したところ、4年ぶりの大会とあって、北は北海道、南は熊本県から、全国のジャージー酪農家と関係者26名が集い、ジャージー生産地の現況報告を行うとともに関係者の交流を図った。
当初の予定では「ジャージー視察交流会 in 群馬・神津牧場」として、初日は群馬県下仁田町の神津牧場を会場に視察とジャージー生産地からの現況報告を行い、宿泊ホテルで交流会を実施、翌日は長野県南牧村のジャージー酪農家を視察することで計画したものの、11月としては都心では54年振りの初雪となったほか、明治8年の統計開始以降初めての積雪を観測するなど、関東地方は大荒れの気象となり、各種の公共交通機関に乱れが生じた。このため、牧場視察は断念せざるを得なく、生産地の現状報告を行うとともに交流会のみを実施した。なお、牧場視察は一部の参加者のみで行った。
冒頭、東山会長から「昨年10月の北海道全共でも大変な天気であった。大雪と暴風に見舞われ、出品者・関係者には大変な思いをされてお帰りになった。今年は4月の熊本・大分大地震に始まり、岩手県岩泉町と北海道清水町で台風を端に発した大水害など、例年にない異常気象が続いている。この交流会は概ね2年に一度、各地のジャージー生産地を会場に開催してきた。4年前には岡山県蒜山でジャージーフォーラムを、昨年は北海道全共の出品者と関係者を対象にカナダのブライドン牧場主を招いて交流会を行ったが、今回は群馬の山間地で放牧を主体にジャージー酪農を営まれてきた神津牧場を会場に交流会を計画した。生憎の天候で牧場には行けなかったが、全国のジャージー関係者が集っているので交流を深めてほしい」と挨拶が行われた。
山岳地帯で放牧酪農
続いて、当初の視察予定地であった神津牧場の須山哲男場長から概況報告が行われた。なかでも、場内の敷地は標高850mから1,350mの山岳地帯に位置するため、トラクターが入れるところは採草地として使うが、それ以外の傾斜地はすべて放牧地として使っており、それ故、「神津放牧しぼり牛乳」というネーミングでパック牛乳を販売できることも長所と述べていた。また、多くの種類の乳製品の製造並びに雄子牛の肥育にも取り組み、場内のみならず関東各地で販売を行っていることを披露した。
ちなみに資料によると、明治20年(1887年)に牧場を開設し、明治22年にはバターの製造を開始した。現在の面積は387haで、そのうち100haが草地である。ジャージー雌牛とそれから生まれた子牛のみで約200頭、多いときは240頭にもなる。事業内容は放牧酪農と乳製品の製造・加工。「草と牛は一体であり、草を乳に換える」という創業者の信念のもと、試行錯誤を重ねながら独自の放牧酪農を確立するとともに、明治時代より高品質の乳製品を製造してきた。主な乳製品は①ソフトクリーム、②発酵バター、③チェダー、ゴーダなどのナチュラルチーズ、④のむヨーグルト、⑤牛乳、⑥アイスクリームなどである。場内のほか、道の駅(下仁田・藤岡)や土産店・スーパー(軽井沢)などで販売されている。また、雄子牛もそのまま淘汰するのではなく、一定期間飼育して、場内で鉄板焼きとして提供するだけでなく、「料理王国(2014/1)-大特集・プロが使う“旨い牛肉”」として紹介されているように、東京都内の高級フレンチや高級イタリアンなどで食材として使われているそうだ。
ジャージーでも遺伝病発現
一方、日本ホルスタイン登録協会登録部の岡係長から、「ジャージー種における近交係数の上昇と遺伝病」をテーマに話題提供が行われた。この件はフォーラム等がある度に継続的に公表して、警鐘を鳴らしている内容ではあるが、わが国のジャージー種集団では近交係数の平均が2010年に6%を超え、近年は横ばいだが、この数字はカナダと同程度。2011年から2015年に生まれたジャージー種の近交係数分布を調べると、全体の37%が6.25%以上となっている。近交が高まると遺伝病を発現しやすくなり、場合によっては胎児の段階で死亡するなど、経営に大きなダメージを生ずることもある。
ジャージー種では、SNP検査の普及により近年判明したハプロタイプ型遺伝病のうち、JH1と呼ばれるものがあり、妊娠初期に死亡する致死遺伝病である。キャリアは「オブザーバーチョコレートソルジャー」に端を発するといわれており、これは北米の主流となる血統に多大な影響を与えている種雄牛である。最近のアメリカの種雄牛では「インパルスリーガル」と「インパルスルーイ」がキャリアと公表されている。
要約として集団全体の近交係数が徐々に上昇するのは致し方ないが、個体の近交係数が急激に高まることは避けるべき。血統登録証明書の有効活用や家畜改良データバンクの近交回避情報を利用して交配種雄牛を選ぶなど、手だてを尽くしてほしいと締めくくった。
最後に、ジャージー生産地から現況報告もそれぞれ行われたが、このような情勢だからこそいろんな手だてを尽くして頑張っている様子が窺えた。また、最近ではSNSを通じて情報が得られるので、遠隔地だからといって手をこまねいているのではなく、積極的に発信していくことが大切という発言があった。

北は北海道から南は熊本県より集まった、全国ジャージー酪農家と関係者

平成29年01月20日「効率的乳牛改良へ」

-体型審査を定期的に-
酪農経営を行う上で、乳牛に求められるものは泌乳能力であり、乳牛の本当の価値はその牛が一生涯にどのくらいの乳量を生産し、経営に貢献したかによって決まる。言い換えるならば、生涯生産能力をより一層高めていくことが生産コストの低減と収益性の向上につながる。
審査の意義
経済動物として考えるなら、温順で泌乳能力が優れ、長命で連産性に富み、飼料の利用効率が高いなど、よい形質を合わせ持つことが望まれる。
なかでも、長い期間に渡って高い泌乳能力を維持するには、健康で骨格のしっかりした体型と付着・形状のよい乳房、丈夫な肢蹄等が必要であり、これらは飼養管理や搾乳管理の作業効率を高める上でも重要な役割を担っている。
泌乳の生理的、機能的形質及び長命性と連産性が体の構造の上で現れる違いを見て、効率的で経済的な牛かどうかを早期に正しく見分けるのが体型審査であり、その牛が生涯に渡って高い泌乳能力を発揮できるか否かを判定する重要な手法となる。
審査受検方法
ホル雌牛が審査を受ける方法としては2つのプログラムがある。まず、牛群審査では飼養する牛群内の登録経産牛全頭を対象とし、申込みによって行う。また、体型調査事業では後代検定材料娘牛(初産検定中)を飼養している牛群検定農家の登録初産牛を対象に行うもので、都府県では毎年前期・後期の2回、日ホ協の審査委員が現地の担当者とともに県内を巡回し、審査を行っている。
実際の審査では、審査委員が各個体の体型について得点評価と線形評価を行い、審査直後にその場で審査結果を打ち出し、受検農家における直近の遺伝情報や種雄牛情報と合わせて審査結果の説明や交配、管理等のアドバイスも行っている。また、審査結果は審査成績証明されるとともに種雄牛および雌牛の遺伝評価にも利用され、遺伝情報として酪農家にフィードバックされている。
最後に
牛群検定の実施と共に牛群審査を定期的に受検することは、牛群水準の向上には勿論、飼養管理や個体販売、さらには遺伝的改良を有利に進めることができ極めて有効である。乳牛改良をより効率的に進め、収益性の高い酪農経営を確立するため、是非とも受検をご検討願いたい。
審査日程
今年度の今後の審査日程は次のとおり。
  • 茨城県2月6~14日
  • 長野県2月6~15日
  • 福岡県2月6~16日
  • 佐賀県2月6~7日
  • 長崎県2月8~9日
  • 熊本県1月23~27日

平成29年01月20日「「モントロス」新規でトップ」

-2016-12月海外種雄牛評価-
(独)家畜改良センターから12月6日に海外種雄牛2016-12月評価が公表された。
今回トップを飾ったのは、新規の「モントロス」(父モーグル・母方祖父ボルトン)であった。形質別にみると、産乳成分1位、乳量3位、耐久性成分8位、肢蹄・乳器・決定得点それぞれトップ10位内に入っており、泌乳・体型能力ともに優れている。
2位は、前回(2016-8月評価)新規で1位となった「メイフラワー」(父スノーマン・母方祖父ソクラテス)で、本牛は産乳成分2位、乳量2位、疾病繁殖成分4位で、特に泌乳能力の改良に期待の持てる種雄牛である。
3位も新規の「トツプシー」(父ブツケム・母方祖父ワトソン)であった。形質別では、産乳成分5位、乳脂肪量7位、疾病繁殖成分7位。
トップ40の父牛を見てみると、ブツケム・ロバストの息牛がそれぞれ7頭、続いてスノーマンの息牛が6頭と続く。


平成29年01月20日「遺伝評価の変更」

-2017‐2月評価より-
2017‐2月評価から独立行政法人家畜改良センター(以下、センター)が実施している遺伝評価値が変更されるので紹介したい。
①GEBVの公表
SNP情報を有する検定済種雄牛と経産雌牛の遺伝評価値について、従来のEBV(推定育種価)による公表からSNP情報を活用したゲノミック評価によるDGV(直接ゲノム価)とEBVを組み合わせたGEBVに変更する(図)。変更時期は種雄牛は2017‐2月評価から、雌牛は2017‐8月評価からとする。なお、SNP情報を持たない種雄牛および雌牛は従来通りEBVで公表される。
②若雄牛の公表
精液の利用が可能である国内および北米の若雄牛の遺伝評価値をセンターのWebサイトに掲載する。ここで言う若雄牛とは調整交配実施期間が終了した後代検定候補種雄牛を指し、ヤングブル(待機牛)とも呼ばれる。
③国内評価の公表時期および回数
種雄牛と若雄牛の公表については年2回とし、8月、2月に公表する。また、各公表間に新たに追加された若雄牛は関係団体を通じて所有者に年4回提供される(3月、5月、9月、11月)。
一方、雌牛と未経産牛の公表は年3回とし、8月、12月、2月に公表する。同様に各公表間に追加された未経産牛については年3回提供される(3月、5月、9月)。
中間公表を含めると雄雌共に年6回の公表になり、公表回数が増加した。評価回次ごとの公表日と毛根送付必着日を表1に示したので毛根採取を行う際の参考にされたい。
④追加形質について
ゲノミック評価の対象形質はこれまでは総合指数を構成している形質、あるいは、インターブルの評価対象となっている形質を中心に一部の形質しか対象としていなかったが、2017‐2月評価からは新たに11形質が公表対象の形質になった。産乳成分では、乳脂率・無脂固形分量と率・乳蛋白質率、耐久性成分の得点形質では体貌と骨格乳用強健性、線形形質の後乳房の幅、疾病繁殖成分では在群期間、娘牛受胎率、その他の乳代効果、長命連産効果である。これらは表2(追加形質は太字)のゲノミック評価公表形質に示したので参考にされたい。
また、ゲノミック評価の実現信頼度は形質ごとに経産された値であったが、今回からは個々の個体の形質ごとに信頼度が計算される。

平成29年01月20日「新しいゲノミック情報」

-2017‐2月評価から-
(独)家畜改良センター(以下、センター)では2月28日(火)に2017‐2月評価の公表を行います。
センターでは、今回から未経産ゲノミック評価公表において、11形質の新規追加や、個々の信頼度などが新たに計算されます。そのため、日本ホル協のWeb「牛群遺伝情報」の様式も変更します。そこで、情報の閲覧手順や新しい表示についての紹介をいたします。
Web閲覧の手順
Web「牛群遺伝情報」の閲覧手順は、図1のように当協会のWebサイトのトップ画面から「情報」をクリックします。次に情報の画面の一番上にある「牛群遺伝情報」を選択します。ログイン画面が出るので、あなたの会員番号とパスワードを入力、「ログイン」をクリックしてあなたの「牛群遺伝情報」に入れます。
なお、パスワードですが、当協会のSNP検査を申込むと、牛群遺伝情報(紙媒体)が送付されます。その上部に会員番号とパスワードが印刷されていますので、それをご利用してください。パスワード等分からない場合は、各県支部・承認団体へお問い合わせください。
新たに11形質を公表
図2のとおり、2017‐2月評価から11形質について新たに公表することになりました。新形質については【遺伝評価の変更表2】をご覧ください。
信頼度はゲノミック評価の計算方法の変更により、形質ごとから個体ごとに計算されることになったため、すべて表示します。
パーセント順位は今まで総合指数だけ表示していましたが、次の評価からは3成分(産乳、耐久性、疾病繁殖)、4泌乳形質(乳量、乳脂量、無脂固形分量、乳蛋白質量)、5体型形質(決定得点、体貌と骨格、肢蹄、乳用強健性、乳器)の他、乳代効果を含め14形質について表示することとしました。

平成29年01月20日「Sヘンリー4期連続トップ」

-2016-11月国内雌牛評価成績-
平成28年11月29日に2016-11月国内雌牛遺伝評価成績が公表された。そのうち、全国15位までと都府県で飼養されている上位牛の一覧を示した。
トップは丹治智寛さん(北海道)所有牛
トップを飾ったのは、「ピユアソウルビジヨンSヘンリーET」(北海道・丹治智寛さん所有)であった。4期連続の1位で現在9歳である。産乳成分に優れ、特に乳脂量は雌牛で1位、乳脂率は2位である。「ヘンリー」の娘牛5頭は全てベスト100に入っている。丹治智寛さん所有牛はベスト100に「ヘンリー」を含め3系統13頭がランクされている。また、息牛2頭が後代検定候補種雄牛に選定されている。
2位は「MCボンジユール」(北海道・(有)上野牧場所有)で前々回の19位、前回の15位からの上昇である。産乳、耐久性成分ともに素晴らしい成績で、特に乳用強健性3位、乳器6位、決定得点13位と体型に優れている。「ボンジユール」の姉妹牛は、他に4頭がベスト100にランキングされ、候補種雄牛は5頭が選ばれている。
3位は「Bヘネシー」で1位と同様に丹治智寛さん所有で、泌乳形質が特に優れている。この系統には母、姉妹、娘が100位に4頭、候補種雄牛も4頭作出している。
都府県トップは前原直希さん(宮崎県)所有牛
都府県では、7位に宮崎県・前原直希さん所有の「JリードマウイオーマンET」が入った。前原牧場所有牛は、ベスト100に59位、69位にそれぞれ入っている。また、兵庫県・堀部浩二さん所有牛が18位と53位に入った。都府県牛は前述の牛等を含め、トップ100の中に9頭が入る優秀な成績を収めた。


平成29年01月20日「ホルスタイン種は6.13%」

-近交係数とりまとめから-
日本ホル協ではホルスタイン種の近親交配の現在の状況や推移をみるために、血統登録データを元にとりまとめたので紹介する。
近交係数は6%超え
近交係数のとりまとめでは、図1によると、2016年生まれの近交係数は6.13%であることが分かる。00年生まれが4%を突破し、05年で5%と5年で1ポイント増加したが、6%を超えたのは15年で、丁度10年で1ポイントの増加となり、上昇も少し緩やかになってきた。この図で掲載しているカナダを見ると、12年には近交係数の危険域である6.25%を突破し、13年には6.40%に達し、15年生まれの近交係数は7.10%と非常に高い値となっている。日本とカナダの最近5年間を見てみると、カナダは年平均0.23ポイント増加しているのに対し、日本は0.1ポイントの増加に留まっている。カナダ・デーリィ・ネットワークではヤングサイアーの利用により、次世代の更新が早くなっていることが急上昇の原因と分析している。
3頭に1頭が近交危険域に
図2は生年別近交係数6.25%以上の割合を示したものである。80年から90年までは増加はほとんど見られなかったが、だんだん増加傾向を示し、95年に5%を超えてから、増加も拍車がかかり、10%を超えたのが丁度00年。10年には20%を超え、年1ポイントの増加となった。今年16年で33%になり、年2ポイントの増加傾向を示し、折れ線グラフも急角度になってきた。00年では10頭に1頭が近交危険域であったが、16年には3頭に1頭が危険域に達した。
10年前よりグラグはスリム
さて、05年生まれと15年生まれの頭数分布を見たものが図3である。グラフから05年の釣鐘型が15年ではかなりスリムになり、右側に移行してきた。
詳細を見ると、05年は血統登録頭数が21万844頭、平均近交係数5.01%、最頻値4.5%、最大近交係数31.8%、6.25%以上の割合16.0%である。15年は同様に血統登録頭数19万877頭、平均近交係数6.02%、最頻値5.6%、最大近交係数32.2%、6.25%以上の割合239.6%である。平均近交係数は5%から6%に上昇し、6.25%以上の割合も2倍の約30%に増えている。
6.25%おじ・めい交配
図4は出現率の高い近親交配の例である。S①は父と娘の交配である。この交配で生まれた子牛は近交係数25%となる。S②では父方と母方の祖父が共通祖先の場合である。これはきょうだい交配となる。S①と比べ、父方が1世代さかのぼり、近交係数はその二分の一の12.5%となる。S④のおじ・めい交配ではS②の母方がもう1世代さかのぼり、近交係数はその二分の一の6.25%となる。
参考までに、このおじ・めい交配は人間では法律上結婚できない近縁となる。人間の場合、近交係数3.125%のいとこ同士で結婚ができる。しかし、これは日本での法律で、いとこ同士の結婚は韓国や中国では禁止となっている。
図5は、S①~S⑤の出現頻度を生年別に表したものである。これを見ると、S④のおじ・めい交配が飛びぬけて高い。と、言っても15年の時点で0.8%、1,500頭程度である。おじ・めい交配で一番多い時で96年の1.98%、3,860頭であった。
交配の時に、このS①~⑤までを血統証で確認することは勿論であるが、現在の近交は4代、5代以前の祖先種雄牛を確認しなければならず、その場合、Web血統情報で祖先を調べて近交の計算をするが、計算は複雑であり、人間業ではまず無理である。後段で述べるが、当協会で近交回避のメニューをいくつか用意しているので、是非それを利用していただきたい。

近交が高いと損失大
近親交配の高まりは血縁が近いものとの交配で起こるわけで、泌乳能力の低下や体格の矮小化、発育や繁殖性の低下、死亡率の増加をもたらす。雌牛の近交による退化量は表のとおりで、乳量で見ると近交係数が1%上昇すると1乳期当たり約28.5kg減少すると考えられる。従って、近交係数6.25%の場合には1乳期当たり約178kg、12.5%では約356kgの乳量が減少する危険性がある。近交係数6.25%、1乳期178kgで乳価100円とすると1万7,800円となり、50頭で年間約90万円の損失となる。
輸入精液は遺伝病注意
近交係数が高いということは、劣性遺伝子が反映される可能性が高くなる。それは、遺伝病になる確率も高くなるということである。ただし、交配種雄牛が遺伝病の因子を持っていなければ、発症することはない。血統登録証明書や日本ホル協のWeb血統情報では、遺伝病の検査結果を種雄牛ごとに表示して注意を促している。また、国内種雄牛は候補種雄牛に選ばれる際にBLAD、CVM、ブラキスパイナの検査が義務付けられており、これらのキャリアは日本では候補種雄牛に現在は選定されない。ところが、海外種雄牛はキャリアであっても精液が流通され、輸入されているため、交配に注意が必要である。
近交回避のために
高い近親交配を避けるために、日本ホル協では3つの方法を用意している。一番手っ取り早いものが、Webで確認する方法である。日本ホル協HPのトップページから「家畜改良データバンク」→「近交回避情報」を開く。そこで、調べたい雌牛の登録番号を入力することにより、700頭余の種雄牛との近交係数を確認することができる。種雄牛の遺伝能力が同程度で、近交の差が大きければ、近交係数の低いものを勧める。
2つ目は審査受検の時に配る「近交回避リスト」である。これは近交係数が5%未満になる種雄牛を表示しているので、安心して利用できる。
3つ目は「乳用牛群改良交配システム」で、日本ホル協と酪農家(支部・承認団体でも可)との契約のもとに貸与される交配システムソフトと、該当酪農家の近交回避情報や交配種雄牛情報を日本ホル協ら送られるCD(次回からはメール)からパソコンにインストールして利用できる。この利用マニュアルはHPから閲覧やダウンロードができる。
最後に
高い近交は能力低下や遺伝病になる可能性も高くなる。近交係数は血統登録をしないと計算ができないため、生まれたらまず血統登録をお勧めする。

平成29年01月20日「生涯乳量」

-都府県28年12-
28年12月に都府県で検定成績証明されたものの中から、別表には生涯乳量5万kg以上の高記録牛21頭を示した。今回は上位1頭が総乳量(M)10万kgを突破した。
1位辻賀裕さん(岡山県)所有「TKチムリンビースターブック」
生涯乳量トップは、辻賀裕さん(岡山県)所有の「TKチムリンビースターブック」(平14.12.17生)の検定回数9回で検定日数3,802日、M10万6,365kg、総乳脂量(F)5,036kg、平均乳脂率(F%)4.7%、総乳蛋白質量(P)3,754kgであった。本牛は、12月20日号で生涯乳量10万kg突破牛として登場し、今回の検定成績証明により更に記録を伸ばした。
2位藤岡俊策さん(岩手県)所有「ドリームランチラッキーバッカイ」
2位は、藤岡俊策さん(岩手県)所有の「ドリームランチラッキーバッカイ」(平19.4.18生)の検定回数7回で検定日数2,286日、M7万8,537kg、F2,765kg、F%3.5%、P2,426kgであった。本牛は、全産次で乳量1万kgを突破する高能力を発揮している。
3位は、(有)加藤牧場(埼玉県)所有の「ミーンズバンチランページクリーン」(平19.12.12生)の検定回数6回で検定日数2,116日、M7万5,999kg、F3,170kg、F%4.2%、P2,409kgであった。また、10位にも同所有牛が登場し、高成績を収めている。
前述の牛をはじめ、8位五味英介さん(長野県)、9位佐藤信彦さん(茨城県)、17位真鍋正隆さん(熊本県)所有牛は、審査得点EX(90点以上)を獲得しており、体型においても優れた成績を残している。