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機関誌

機関誌内容一覧

令和02年01月01日


令和02年01月01日創立115年宮崎県の農業発展を担う生徒たち

宮崎県立高鍋農業高等学校
-TAHS-
2015年に開催された北海道全共では1等賞を獲得し優秀な成績を収めた「宮崎県立高鍋農業高等学校」。地元開催の第15回全共への出品を目指す同校の取り組みについて、廻優一先生に紹介していただいた。

本校は旧舞鶴城の跡にあり、お濠や大手門などの貴重な史跡が残り、自然豊かな文教の町、高鍋町にあります。旧高鍋藩校「明倫堂」の教えを受け継ぎ、今年で創立115年目を迎えました。昭和39年には当時の文部省より農業経営者育成高等学校の指定を受けています。〈学校の教育目標〉
校訓「研学修技」、「勤労興産」、「礼節敬愛」、「感恩報謝」を基調とした教育を実践し、宮崎県の農業を担う人間性豊かな人材を育成します。〈本校の使命〉
創立115年にわたり、宮崎県の農業を支える人材の育成という使命のもと、これまでの良き伝統を受け継ぎ、校訓を基調とした教育を実践してきました。なかでも、文部科学省指定育成高等学校として、保護者や県民、地域に愛され信頼される学校作りを目指します。このため、高い専門性に立脚した特色ある教育活動を展開しながら、生産・加工・流通等の分野における問題解決能力を高め、ふるさと、みやざきの発展を担う起業家スピリットとスキルを備えた人材を育成します。〈設置学科〉
現在は4学科で構成され「園芸科学科」「畜産科学科」「食品科学科」「フードビジネス科」を有し、園芸科学科、畜産科学科の2学科は、全生徒が3年間の寮生活を送りながら親密な人間関係を形成しています。寮生活で培った人脈は県内各地に広がり、確かな財産にもなっています。〈目指す生徒像〉
①明倫堂精神を尊び、郷土愛や誇りを身に付けさせます。
②SPH指定研究により、新たな時代の変化に対応できる人材育成に努めます。
③常在危機の意識を持ち、生徒と職員が共に学び、楽しく笑顔のあふれる学校を目指します。
④「わかったと感動する授業」・「できるようになったと感動する実習」を展開し、「やり遂げた」と実感できる「学びの心」を醸成します。
⑤ワンランク上を目指した進路の実現を推進します。
⑥部活動、農業クラブ活動、ボランティア活動の推進と、明るく楽しい学校生活の実現を目指します。〈畜産科学科〉
1.基本方針
宮崎県畜産業の次代を担い、その振興・発展に寄与する人材を育てます。また、口蹄疫発生の教訓から、高い防疫意識を身に付けさせ、安全な農場運営に努めます。
2.努力目標及び具体的な取り組み
(1)実践学習を通して、たくましい精神力や体力、技術を身に付けさせ、将来の宮崎県の畜産業や、関連産業人を育成します。
(2)職員の相互研修を行い、関連機関との連携を図ります。
(3)徹底した防疫教育を行い、安全意識を高く持った畜産人を育成します。〈畜産科学科の実習内容〉
畜産科学科ではまず1、2年生時には週1回の総合実習(2時間)において、畜産の基礎、基本を学ぶため酪農、肉用牛、養豚、飼料作物の4部門に分かれ実習を行います。3年生は各専攻別(酪農、肉用牛、養豚)に分かれ、週6時間(うち課題研究2時間)でより専門的な内容で実習を行っています。また3年間を寮で過ごすことから、24時間全てが学習の機会と捉え、家畜の夜間分娩にも立ち会わせたりすることができます。

第7回九州連合ホルスタイン共進会では出品に加えて会場運営も行った

令和02年01月01日 「ショーは心を豊かにし、 ミルクは懐を豊かにする」

現在酪農を専攻している生徒は1年生6名、2年生5名、3年生10名です。そのうち13名が「ホルスタイン部」に所属しています。「ショーは心を豊かにし、ミルクは懐を豊かにする」をモットーとし、日々活動しています。内容としては給餌や除糞などの一般管理はもちろんですが、毎日の哺乳から離乳までの管理や牛体洗浄や調教なども生徒自らが行い、育成技術の習得にも努めています。共進会では、出品牛の毛刈りにも挑戦し、近隣の酪農家の依頼があれば出向いて毛刈りをしています。また地域の方々との様々な場所での声かけや、より高い飼養管理技術に触れることができ、生徒にとっても良い刺激になっています。
この活動の他に本校では酪農教育ファーム活動にも取り組んでいます。目的としては「酪農を通して食やしごと、いのちの学びを支援する。」があげられます。TPP・飼料価格の高騰、牛乳の消費低迷など、酪農を経営していく中ではどれも重要な課題であり、それらを払拭したいと考えています。牛乳の消費拡大を推進する上で、本校では年に数回ではありますが、近隣の小学生やその保護者の方々、また在校生の家族、職員家族といった参加者で「酪農教育ファーム」を行っております。参加するお子さんたちは生まれて初めて乳牛に触れるということで、最初は戸惑いながらも搾乳体験や給餌体験、哺乳体験などを通して、酪農という仕事、また「いのちをもらっている」ということを認識して、牛乳をもっと好きになってほしい思いで生徒、職員一同で活動しています。
勤務する7年間のうち、一番印象に残っているのは、赴任した年の初めての活動で、幼稚園児を対象に行った教育ファームのときです。それまで牛乳嫌いであった園児がその活動を境に牛乳が飲めるようになったと聞きました。地道ながらも「消費拡大」につながった瞬間を今でも忘れることができません。

酪農教育ファームの一コマ

令和02年01月01日 全頭殺処分を乗り越えて-口蹄疫を忘れない-
本校において忘れてはならない歴史があります。平成22年に宮崎県をおそった口蹄疫により飼育していた牛53頭、豚281頭の全頭が殺処分されました。一度はすべてを失った本校ですが、当時の職員、生徒、支援して頂いた地域の方々のたゆまない努力により、現在ホルスタイン種は37頭(うち搾乳牛23頭)にまで回復しました。殺処分が行われた5月25日には全校生徒が参加し、「口蹄疫を忘れない会」を毎年開催し、いのちの大切さを再確認しています。

令和02年01月01日第14回全共 娘牛エルサが凱旋

平成22年に口蹄疫後の導入で北海道よりノースドリームRDジヨーダンキヤミーETが本校に来ました。3産目に双子が誕生しました。その片方が「TAHSウイルコツクスビユーエルサフタゴ」です。
宮崎県の全共予選に他の2頭と出品し、見事宮崎県代表牛として第14回全日本ホルスタイン共進会北海道大会に宮崎県代表として初の出場を果たしました。県の予選の際は、口蹄疫当時の生徒も多数応援に駆けつけ、県代表になった感動を一緒に祝福していただきました。北海道で行われたこの全共で、結果は1等賞でしたが、地元北海道の酪農家のハイレベルな技術、また素晴らしい牛を目の当たりにすることができ、非常に良い経験をさせていただきました。宮崎県の出品者の皆様とも様々な場面で、活動をともにし、私の中でも忘れることのできない日々となりました。また東日本大震災において被災した宮城農業の生徒や先生方とも交流することができ、生徒にとっても忘れられない共進会でした。

母の生まれた北の大地に立つエルサ号

エルサ号を囲んで集合写真

令和02年01月01日 5年に一度ではない

一生に一度だ
地元開催の第15回全共を目指す
令和元年11月3日、都城地域家畜市場において第7回九州連合ホルスタイン共進会が行われました。本校は2頭の出品でした。九州各県の優秀な牛たちが勢揃いし、レベルの高いショーが展開されました。またこの共進会は「第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会プレ大会」も兼ねていて、全国各地から視察の方々も多数見受けられました。ホルスタイン部の生徒の他にも会場の運営に生徒の派遣要請があり、ショー最中の除糞をお手伝いしました。今年は宮崎県で開催されるため、前回以上に運営の方面でも、参加が予定されています。もちろん、出品も果たさなければなりませんが、全国から来られる皆さんのために大会期間中は宮崎県の畜産人として、しっかりとしたサポートもできたら良いと考えています。「5年に一度ではない、一生に一度だ」と意識し、二度と味わえない興奮を生徒共々、共有できたら幸いだと考えます。出品を目指し、今後なお一層精進していきたいと思います。

TAHSのカウサイン