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平成16年1月1日


平成16年1月1日
「酪農経営の基本を大切に」

~栃木県黒磯市真嶋雄二・大輔さん父子に聞く~
体型、能力兼ね備えた牛群に~「ゆとり」から生まれる高レベル
栃木県黒磯市の真嶋牧場は、昨年11月に開催された第13回関東地区ホルスタイン共進会に出品し、経産部門の準名誉賞を獲得した。また、一昨年には乳量2万㌔牛を輩出するなど牛群検定でも優秀な成績を収めている。体型・能力ともに高レベルのフリーストール牛群を飼養する雄二さん、大輔さん父子に、日頃の酪農経営のコツと、17年秋に地元栃木県で開かれる第12回全共に向けての抱負を語っていただいた。
関東で準名誉、2万㌔達成も
真嶋牧場は、昨年11月に群馬県で開催された関東地区ホルスタイン共進会の経産3歳クラスに、スノーライトプリンセスウィニーコラ号を出品し、この部の優等賞一席とベストアダー、最終審査では経産部門の準名誉賞を獲得した。
また、14年度には自家生産牛のスノーライトマスターアポロ号が5歳、2産目の1年検定で乳量2万㌔(M2万92㌔、F704㌔、3・5%)を突破している。
体型、能力ともに高レベルを誇る真嶋牧場の酪農経営の裏に、どのような思いがあるのだろうか。
健康第一に環境作りを
真嶋牧場の家族構成は雄二さん(61歳)と芳子さん(56歳)夫婦に、後継者の大輔さん(35歳)、妻の睦さん(27歳)の4人。
現在の飼養頭数は経産牛が約120頭、育成牛が約100頭。経産牛1頭当たりの年間平均乳量は1万㌔を超えている。
真嶋牧場の歴史は、昭和37年に父の雄二さんが単身でこの地に入植しスタートした。「初めは、土地の改良に重点を置いた。まずは牛が健康でいられることが大切。その頃は、体型よりも乳量中心で考えていた」と語る雄二さん。まずは健康に乳を出せる環境作りから整えていった。
その後、大輔さんが酪農学園短大を卒業し、平成元年に20歳で就農。現在、この地域の若手のリーダー格である大輔さんは、「小さい頃から牛の世話は嫌ではなかった」と言う。地元黒磯の酪農に適した環境も手伝って、自然に酪農家への道を歩んだ。
在学中に人工授精師の資格を取り、就農してからの15年間では輸入精液を使う機会が多くなった。交配種雄牛はアメリカやカナダの、特に乳器や肢蹄の良いものを選んで使っている。
また、大輔さんは昨年、睦さんと結婚したばかり。睦さんは現在、栃木県の酪農に携わる女性の会で、会報作りなどを担当している。今回の取材の日も、ソーセージとチーズ作りに参加していたところだ。
搾乳は牛観察の絶好の機会
労働力が不安定になりがちな家族経営。真嶋さん父子は、人を雇わずうまくやっていくために、作業の自動化を考えた。そこで、1日6回、新鮮な餌を与えることができる給餌機を導入し、また糞尿処理も自動化した。しかし、「牛は日々の観察が大事。搾乳はその絶好の機会である」という考えから、ロボット搾乳などの搾乳に関する自動化はまだ考えていない。
現在、真嶋牧場の主体は雄二さんだが、あと1~2年で大輔さんへの世代交代を考えている。
「自分が引退すれば労働条件が変わってくる。今は引継ぎ後の経営について、色々とシミュレーションしているところ」と言いながらも、雄二さんの経営に対する熱心な語りぶりからは、「まだまだ当面は現役」を予感させる。
夫婦で栃木全共めざす
日々の経営のコツを尋ねたところ、「コツというコツはない。とにかく基本的なことを大切にする。乳を搾ることを大切にしてやっていたら、それがたまたまショウに結びついたという感じ。2万㌔突破にしても同じ。体型にこだわり過ぎずにやっていきたい」と語る父子だ。講習会にも積極的に参加し、他の酪農家の仕事を学んでいる。「今後は増頭など、規模拡大を目標にしている」という大輔さん。
来年秋に地元栃木で行われる第12回全共への意気込みについては「県共などで少しずつ自信がついてきた。妻も全共出品を楽しみにしているので、是非とも参加したい。出品して1つでも上位入賞を目指したい」と。共進会にこだわり過ぎず、「基本を大切に」する経営方針からか、控えめな中に余裕が感じられるコメントだ。
雄二さんが取材中に語った「人生に必要なものは、夢、金、暇だ」という言葉が印象的だ。
見るからに力強く活気にあふれた体躯と乳房を備えた牛群をもって、常に飼養管理の基本を大切にしながら、ゆとりある酪農経営を目指す真嶋牧場の今後の益々の発展を祈念したい。
真嶋牧場の牛群検定成績
(平14.7~15.6)
平均経産牛頭数125.1頭
平均搾乳牛頭数109.2頭
経産牛1頭当り乳量10,115kg
平均乳脂率3.84%
平均乳蛋白質率3.19%
平均SNF率8.64%
平均乾乳日数75日
平均分娩間隔428日
平均初産分娩月齢27.5月
平均年齢4歳1月
平均産次2.7産
平成16年1月1日
「智恵出し合い行動する年に」
昨年は新型肺炎(SARS)の脅威、米英軍によるイラク攻撃とフセイン前大統領拘束、頻発するテロで世界中が揺れた。また、地球的な異常気象は日本にも10年ぶりの冷夏をもたらした。
畜産関係では4頭のBSE患畜が見つかった。特に昨秋のホル肥育牛2頭は2歳未満であり、世界でも極めて稀な若い月齢での発症であった。
一方、酪農界のビッグニュースはインターブル国際評価への参加である。
日本の種雄牛の遺伝評価値が初めて世界の土俵で酪農主要国と肩を並べ、世界のトップクラスにあることが判明した。
しかし、諸外国での評価は甘くはない。各国のランクを見ても日本の種雄牛は上位に見当たらないのが現実である。
インターブル評価値は参加各国が、その国の改良指標に沿ってより効果的な利用をしているため、自国の種雄牛が有利になることは否めない。
また、高い遺伝的水準の種雄牛が次々と登場する反面、雌牛側では産次数の低下や分娩間隔の延滞など生涯生産性向上や後継牛確保という点で、今後の交配計画や飼養管理の対策が急がれる。 今年の干支は甲申(きのえさる)。甲は甲乙丙丁…の最初の文字であり、物事の始まりを意味する。
申(さる)は人間の背骨と肋骨を象形化したもので、十二支では人間に最も近い、知能の発達したサルを充てている。「西遊記」の孫悟空の如く、サルは智恵欲と俊敏な行動力の象徴である。
2004年は皆で智恵を出し合い、熟考し、俊敏に行動する年である。インターブルの結果、わが国に世界でトップクラスの種雄牛がいることを自負するとともに酪農現場が求めるより魅力的な種雄牛作りと、日本の種雄牛や雌牛が世界に認められ、求められる日が1日も早く来ることを期待したい。