PAGE TOP

機関誌

機関誌内容一覧

平成25年01月01日


平成25年01月01日「夢は日本一の乳牛」 ~群馬県立中之条高等学校~

最近の各地の共進会をみると、高校の奮闘ぶりが目覚しいばかりだ。昨年秋に開催された関東地区ホルスタイン共進会では、高校が8部のうち2部でトップを得た。また、その2週間後に開催された全国BWショウでも、高校が部のトップを3つ獲得した。各高校の牛作りはハイレベルな情況で、中でも今熱い「群馬県立中之条高校」の乳牛の改良と地域に根ざした取り組みについて、同校の山口愉隆教諭と職員の横山貞治氏に紹介していただいた。

概要と沿革

中之条高等学校は明治33年に開校し、113年の歴史があります。所在は群馬県の北西部に位置し、周囲には草津温泉などの観光地が多数存在します。農業はキャベツ生産や酪農が盛んです。
当校は、生物生産科・環境工学科・普通科の3つの学科が設置され、現在467名です。生物生産科は、2年生より3つのコースに分かれて学習しています。
まず乳牛を中心とした産業動物と社会動物について専門的に学習する『動物科学コース』があり、その他に『植物科学コース』、『食品文化コース』があります。
現在、動物科学コースは2年生が23名、3年生が20名の合計43名です。ほとんどの生徒は非農家出身ですが、2年生より動物の飼育管理を実践的に行い、意欲的に学習に取り組んでいます。

美野原農場
当校舎より5kmの所に乳牛を中心に飼育している美野原農場があります。
飼養頭数は41頭(搾乳牛25頭、育成牛16頭)で、ホル種以外ジャージー種、ブラウンスイス種も数頭います。授業は搾乳、給餌や除糞などの飼育管理を中心に行います。
施設・設備は、フリーストール牛舎(ミルキングパーラー)、育成・スモール牛舎、中小家畜舎などがあります。耕作面積は14haあり、飼料用トウモロコシを中心に栽培しています。
改良重ねEX獲得~共進会への参加~
生徒が主体となって共進会の参加をはじめたのは平成16年度からです。
しかし、どうしたら入賞できるか・調教の仕方などが分からず、手探り状態の中、当校のOBや地域の酪農家に教えを請いながら始まりました。
そんな中で懸命に努力した結果、平成17年の県BWショウでクラスチャンピオンとなり、関東大会に出場することができたのです。
このことは、ゼロからスタートした生徒にとって、目標を達成できた嬉しい出来事でした。
これにより、生徒は共進会への自信をつけ、活動もさらに活発となり、生徒主体の活動を続け今日に至っています。
現在の管理や調教などは、農業クラブの産業動物班が中心となって活動しています。生徒1人に対して牛1頭を担当させ、牛との信頼関係を築けるように心がけています。毛刈りや共進会でのマナーは上級生が下級生を指導して代々引き継いでいます。また、休日には当校OBが牛の管理や在校生の指導をしています。
このように、充実した活動を行ってきたこともあり、平成19年には県BWショウ未経産の部でリザーブチャンピオンとなりました。その結果、中部日本BWショウに参加して1等賞を獲得することができたのです。
アサミ号活躍
また、その年の11月には、全日本BWショウに出場し、『ナカコープライドコムスターアサミ』が6部で1等1席を獲得することができました。県内の高校では初の快挙であり、今でもこの当時のことを鮮明に覚えています。
アサミ号は、経産の部でも活躍し、北軽井沢スプリングショウで平成20年から2年連続リザーブチャンピオンとなり、この活躍から当校の乳牛の改良や共進会の取り組みが全国的に知られることになりました。
アサミ号の姉妹や姪も県内外の各共進会で活躍し、多くの賞を受賞しています。私たちはこの一族をアサミ号の祖母の冠名『プライド』から『ナカコープライドファミリー』と呼んでいます。
現在、当校の飼養頭数の3割以上がこのファミリーで、特徴は体型審査の得点が高いことはもちろんですが、長命連産である点や乳量に優れていることが挙げられます。
アサミ号EX獲得
近年、農業関係高校では乳牛の体型審査でしばしばエクセレント(EX)を獲得しています。私たちもEX獲得の夢を持っていました。このチャンスを与えてくれたのがアサミ号です。
アサミ号は当校自慢の乳牛で、初産から1万㌔以上を現在まで5産維持しています。
アサミ号は初産時83点で、私たちは『産次を重ねればEXも夢ではない』と当時から期待をしていました。2産目は87点と予想通りの高得点となり3産目での獲得を期待しました。しかし、現実は89点とあと一歩でした。
高得点であったものの『前乳房の付着が少し弱くいまひとつである』との評価でした。審査当日は残念な気持ちでいっぱいでしたが、『4産目こそは!』と前向きに気持ちを入れ替えることにしました。4産目以降、乳房の形の崩れを考慮すると、12時間間隔で搾乳を行った方がよいと聞きました。ただ、当校では活動時間の都合で、6時30分と16時に搾乳を行っています。そのため、EX獲得に向けて、その分出来る限りの努力を重ね審査当日を迎えました。
平成23年12月、アサミ号の体型審査が行われました。期待が大きい反面、前回のことがあり不安もありました。多くの生徒、職員、OBが見守る中、体格審査は続けられました。そして、結果が審査委員から告げられました。『90点です』。この言葉を聞いた瞬間、私たち全員が喚起の声を上げました。
アサミ号EX獲得は各メディアからの問い合わせも多く、地域の情報誌や新聞で紹介していただき、酪農専門誌や全国ネットの情報番組にも取り上げていただきました。
私たちの夢を現実にしてくれたアサミ号は当校の宝です。これからも共に歩んでいきます。
地域に根ざした取り組み~インターンシップ~
平成24年度より『次代を担う職業人材育成事業(農業)』の就農教育プログラム指定校となり、この事業の一環としてインターンシップがあります。今年度、酪農家で実習を行った生徒が12名いて、中には酪農家での宿泊実習を行った者もいました。学校ではできない体験ができ、卒業後の進路に酪農業を視野に入れる生徒もでてきたりと、この実習が農業教育にとって素晴らしい機会となりました。今後も、インターンシップを実施し、将来の担い手として育成したいと考えています。
6次産業化の取組
現在、当校の牛乳は原乳として出荷しており、牛乳やその加工品としては販売していません。
しかし、動物科学コースの取り組みや当校の乳牛について、地域の方々に理解してもらいたいという生徒の思いから、牛乳などを消費者へ提供することを試みることにしました。
近隣の乳業メーカーに勤める当校のOBの援助により、昨年度は試験的に飲むヨーグルトを製造し、文化祭や銀座の県アンテナショップ『ぐんまちゃん家』で試飲会を行いました。このイベントは大好評で、多くの方から商品化を希望する声が殺到しました。
商品化への道のりは長く課題も多くありますが、動物科学コース一丸となって取り組み、顔の見える生産者として地域の消費者へアピールし、6次産業化・地産地消を目指したいです。
牛とのふれあい
10年前より、地域の方々に酪農への理解を深めてもらうため、地域の幼稚園などと交流活動を行い、子牛のブラッシングや心音を聞かせたり、搾乳体験をして、子供達は勿論、引率の先生や保護者の方々からも好評で、さらに交流活動に携わった生徒にとってもよい体験となっています。
年々交流活動の依頼数が増加し、今年度は既に10回実施していて、ますます地域に根ざした活動となっています。
今後に向けて
今後は、酪農の担い手の育成・6次産業化・動物とのふれあいなど地域に根ざした活動をより充実させて、『ナカコープライドファミリー』のような優秀な牛群を飼養し、アサミ号を超えるEX牛を作出したいです。
これらの優秀な乳牛とともに多くの共進会に出場して、全共出場を合い言葉に生徒・職員力を合わせて頑張ります。
夢は『日本一の乳牛!』