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平成16年12月20日


平成16年12月20日
「乳房は本当に改良されたか?」

~連産に耐えうる乳房に牛群審査で効率的な改良を~
近年、ホルスタインは泌乳能力が向上する一方で、耐用年数の低下が懸念されている。本誌10月20日号のこの面では、機能的体型形質の中で特に最近重要視されてきた肢蹄について、遺伝的特徴と審査のポイントを示した。今回は「乳牛の命」とも言われる乳器について、審査標準と線形評価の双方からその重要性と良否のポイントを探る。
乳器の遺伝的改良順調だが
牛群検定牛の全国平均乳量(305日2回搾乳、立会)は9千㌔を超え、検定牛の30%が乳量1万㌔以上という高能力の時代である。
最近の泌乳能力の向上はその多くが遺伝的改良の成果であり、後代検定に因るところが大きい。日本の検定済種雄牛の遺伝能力(平均値)は、今や世界主要国の中でもアメリカやオランダを上回る実力である。
総合指数(NTP)は、牛群の中で長持ちしてしっかり働いてくれる、経済性の高い乳牛を作るための遺伝的指標である。
NTP式には体型が25%考慮されている。体型成分の内訳は乳房85%、肢蹄15%で、乳房をより重視している。
牛群検定初産牛の審査データから計算された乳器得率の推定育種価は年々増加傾向にあって、乳器の改良が順調に進んでいる。
現実には深すぎる乳房
確かに近年は、初産牛の乳房は随分改良された印象が強い。しかし一方で、初産牛でも泌乳ピーク時は1日40㌔以上搾乳するものも珍しくなく、現場でよく言われる「乳が出るから乳房底面が深くなる」のもうなずけるところだ。
中には、初産牛なのに乳房底面が飛節端ぎりぎりか低いものもいる。これでは乳器の得点が74点以下、さらに前乳房の付着や懸垂、バランスなどに問題があれば70点以下に評価せざるを得ない。いくら乳が出ていても初産からこういう乳房では、果たして次産以降まで乳房が持つか?と説明するのだが。
乳牛の価値は生涯能力
乳牛の価値は短期決戦ではなく、生涯生産能力で決まる。産を重ねてなお高い泌乳生産性を維持するために欠かせないのが体型審査である。
体型審査は牛の外見から各部の機能性や強健性、耐用性を判定するもので、特に近年の世界的な改良方向として、乳器や肢蹄などの機能的形質をより重視する傾向にある。
乳房改良するには
乳器の審査は表1の審査標準(抜粋)と表2の線形形質の評価によって行われる。
審査標準の中で乳器は40点あり、ほかの得点形質(外貌15点、肢蹄15点、乳用特質20点、体積10点)よりもはるかに大きなウエイトを持つ重要な形質である。
乳器は前乳房、後乳房、乳房の懸垂、乳房の深さ、乳房の質、乳頭の6つの小区分から成り、乳房の深さと後乳房は9点、乳頭は8点という高い配点を持つ。
よい乳器とは「乳房の付着が強く、よく発達し、4乳区がつり合い、質がよく、長年にわたり高い生産能力を現すもの」である。
「前乳房」は腰角から下ろした垂線より拳(こぶし)1つ分前方から腹壁に強く広く付着し、適度の容積があるものがよい。前乳房の付着の強さは耐用年数と関係があり、特にフリーストール牛舎では、前乳房の弱い付着の牛は歩行の際に後肢による過度の圧迫を受け、長持ちしない。
表1ホルスタイン種雄牛審査標準(乳器部分を抜粋)

区分

標点

説明

乳器40点

乳房の付着が強く、よく発達して、4乳区がつりあい、質がよく、長年にわたり高い生産能力を現すもの

前乳房

腹壁に強く付着し、長さは中等で、適度の容積があるもの

後乳房

高く、広く、強く付着し、上方から下方にかけて一定の幅をもち、わずかに丸みを帯びているもの

乳房の懸垂

乳房を左右に二等分する間溝が明瞭に現れ、靭帯の強いもの

乳房の深さ

底面が水平で、飛節端よりやや高いもの

乳房の

柔軟で、弾力に富み、搾乳直後はよく収縮するもの

乳頭

太さと長さが適度で、よく揃い、円筒形で、適度の間隔で配列し、垂下しているもの

表2乳房に関する線形形質(日本)
形 質 名解 説スコア 1~3スコア7~9望ましい値
標準形質前乳房の付着前乳房の付着の強さ付着弱い付着強い8~9
後乳房の高さ後乳房付着部の高さ付着点低い付着点高い8~9
乳房の懸垂乳房間溝の深さ乳房間溝浅く、懸垂弱い乳房間溝深く明瞭8~9
乳房の深さ乳房底面と飛節端の距離飛節端より深い底面浅い6~8
前乳頭の配置前乳頭基部の付く位置外付き内付き
後乳頭の配置後乳頭基部の付く位置外付き内付き、左右が接触4~5
前乳頭の長さ前乳頭の長さ短い長い
調査形質後乳房の幅後乳房付着点の幅狭い広い8~9
乳房の傾斜前後乳房底面の傾斜前乳区軽い後乳区軽い
バランス・盲乳各乳区の機能減退有無前乳区機能減退後乳区機能減退(5)
融合乳頭融合乳頭の有無0:正 常 1:融合乳頭
注) バランス・盲乳は1~3、7~9のみ評価し、4~6(正常)は表示しない
後乳房と深さ重要
「後乳房」は高く広く、強く付着し、上方から下方へ一定の幅を持ち、横から見てわずかに丸みを帯びているものが望ましい。後乳房の張り出しが大き過ぎるものは、糞で汚れやすい上、付着部が奥まっていて、決して強い付着とは言わない。また、後望して、上方が狭く下方が幅広い巾着型の後乳房は加齢とともに緩く深くなってしまう。
「乳房の懸垂」は後乳房を二等分する乳房間溝が深く明瞭で、靭帯の強いものがよい。靭帯の弱いものは乳房間溝が浅く耐用年数を短くする。また、乳頭が極端に外向し搾乳作業性を悪くする。
「乳房の深さ」は飛節端よりやや高いものがよい。初産では飛節端より10㌢以上、2~3産次で5~7㌢高く、成牛でも飛節端より下がらないことが望ましい。また、前後乳房の底面は水平なものがよい。初産で後乳房が下方へ傾斜するものは好ましくない。
「乳房の質」は柔らかく弾力に富み、乳静脈がよく発達して搾乳後はよく収縮するものがよい。
「乳頭」は円筒形で、大人の手の親指大の太さで5~6㌢の長さが望ましく、各乳区の中央に配置し、まっすぐ垂下しているものがよい。乳頭が長すぎたり(7.5㌢以上)短すぎたり(3.5㌢以下)、太いものや細いもの、前乳頭配置が外付きのものや後乳頭の配置が極端に内付きのものは搾乳作業性が悪くなる。
後乳頭の配置を新たに採用
線形評価は、各部位の程度をスコア1~9で表すものである。乳房に関する線形形質は7つの国際標準形質と4つの調査形質がある。
「前乳房の付着」は前乳房の付着が極端に弱いものをスコア1、極端に強いものを9で示し、スコア8~9が望ましい。
「後乳房の高さ」は後乳房付着点が極端に低いものをスコア1、極端に高いものを9とし、スコア8~9が望ましい。
「乳房の懸垂」は、乳房間溝の深さを見る。乳房間溝がないものをスコア1、極端に深いものを9とし、スコア8~9が望ましい。
「乳房の深さ」は乳房底面が飛節端より極端に深いものをスコア1、極端に高いものを9とする。スコア6~8が望ましい。
「前乳頭の配置」は前乳頭が乳区の中央に配置するものをスコア5とし、極端な外付きを1、極端な内付きを9とする。スコア5が望ましい。
「後乳頭の配置」は後乳頭が乳区の中央に配置するものをスコア4とし、極端な外付きを1、左右乳頭が触れるものを8、交叉するものを9とする。スコア4~5が望ましい。今年から国際標準形質に加わったもので日本では昨年秋から実施している。
「前乳頭の長さ」は極端に短いものをスコア1、極端に強いものを9とし、スコア5が望ましい。
乳房の幅は欠かせない
「後乳房の幅」は分娩時期や搾乳後経過時間などで大きく変化するために、国際標準形質ではなく調査形質として扱われているが、乳器の得点評価を行う場合には欠かせない形質である。
後乳房付着部の幅が極端に狭いものをスコア1、極端に広いものを9とする。初産ではスコア6以上、2産以上は8~9が望ましい。
そのほかの調査形質として乳房の傾斜、バランス・盲乳、融合乳頭をチェックしている。
乳房の線形形質は肢蹄形質よりは遺伝率がやや高く、改良しやすい形質と言える。ただ漠然と乳房の改良ではなく、牛群審査で雌牛の乳房特徴を知り、乳房の深さと付着の強さ・高さ、幅、乳頭のどこを改良すべきかを確認し、それに適した交配種雄牛を選定することが乳房改良のスタートである。
平成16年12月20日
「ジャージー歴代7頭目岩手県では初」

~東日本ディリ―で最高位に~
11月8日から岩手県下で実施された牛群審査において、ジャージー種では岩手県初となるエクセレント牛(審査得点90点以上)が誕生した。
この牛は岩手県一戸町・松川美雄さんの自家生産牛ブライアーダッチスーナーカーン(平12・8・19生)で4歳2月、3産目で審査得点90点を獲得。泌乳能力は3歳1月、2産目の検定で297日、乳量6901㌔、乳脂量347㌔、平均乳脂率5・0%を記録している。父はアメリカの種雄牛グリーンウードスーナーカーン。
本牛は先月行われた2004年東日本ディリーショーのジャージー部門で経産最高位賞に輝いている。ジャージー種雌牛のEXは全国で歴代7頭目。
平成16年12月20日
「全共審査委員決まる」

~ホルは高橋邦博氏(日ホ)~
11月19日に開催された日本ホル協の第230回理事会において、第12回全日本ホルスタイン共進会および第4回全日本ジャージー共進会の審査委員が選出された。
ホルスタイン全共の審査委員には日本ホルスタイン登録協会の高橋邦博氏と副審査委員に植原友一郎氏。
また、ジャージーの審査委員には日本ジャージー登録協会の大西信雄氏と副審査委員は池田泰男氏が担当する。