2020年01月20日号「日本ホル協特集号」
4面
第15回全共の成功を
(一社)日本ホルスタイン登録協会会長 前田勉
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明けましておめでとうございます。会員酪農家の皆様をはじめ、登録委員並びに関係団体各位におかれましては、令和初の新春を健やかに迎えられたこととお慶び申し上げます。
本年は、当協会にとって最大のイベントである「乳牛のオリンピック」、第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会を10月31日から3日間、宮崎県の都城地域家畜市場で開催します。この九州・沖縄全共に向けて出品予定の各都道府県では、出品牛選定のための万端の準備を進められていることと存じます。会員の皆様には是非とも全共出品をめざしていただき、また、各関係の皆様には、5年に1度の全国酪農家の最大の祭典に対しまして、特段のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
さて、昨年は新天皇陛下即位と「令和」改元、消費税10%への引上げ、ラグビーW杯で日本8強などがトップニュースを飾りましたが、一方では相次ぐ台風被害など多くの自然災害に見舞われた1年でもあり、酪農関係でも甚大な被害が出ました。年末に至って被災地等の生乳生産量も徐々に回復し、やや安堵しているところです。
昨年2月の畜産統計によれば、全国の乳牛飼養頭数は133万2千頭で前年に比べてわずか4千頭の増ですが、実に16年ぶりの増頭となりました。これには性選別精液利用の普及率向上が大きく影響しており、血統登録においても性選別精液による生産子牛の登録割合が全体の3割以上を占めるに至り、登録頭数の増加につながっています。昨年10月から消費税増税分の登録等料金改定を行いましたが、増税前の駆け込み申請もあって、現在のところ、前年同期を上回る状況で推移しております。ここに改めて、会員の皆様方の登録や改良へのご理解ご協力に感謝申し上げる次第です。自動登録とゲノミック評価の普及推進
本年も引き続き、ホルスタイン種の遺伝的改良に必要な血統登録集団の拡充を図るため、登録有資格牛の全頭登録をめざして、料金割安の「自動登録」をさらに推進していきたいと考えます。また、新しい育種選抜手法であるゲノミック評価が平成25年から国内でも公表開始されたことを受けて、当協会では自動登録農家を対象に「自動登録同時SNP検査申込」を開始して、育成牛の早期選抜や交配種雄牛選定に有効なゲノミック評価値の普及に努めてきました。本申込では当該牛の「血統登録料半額返付」のメリットを付加して、さらなる推進を図ります。
また会員への情報還元については、年4回の全酪新報日ホ特集号発行やWebサイトの内容充実を図ってきました。昨年はスマホによる近交回避情報や血統情報の検索等を開始し、今後も一層の情報提供に努めます。一方で、酪農家戸数の減少によって当協会の会員数も現在全国で1万1千名余、前年に比べて約500名減少し、最近15年間で実に半数になってしまいました。今後の協会のより健全な運営のために、これまで34年間据え置いてきた会費の見直しについて会員の皆様には特段のご理解とご協力をお願い申し上げます。
本年は全共の成功と、会員の皆様にとってすばらしい年となること、ご家族のご健勝をご祈念申し上げ、新年の挨拶といたします。
初のブロック開催に向けて準備着々 出品割当頭数決まる
第15回全日本ホルスタイン共進会
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41都道府県から270頭
初のブロック開催となる第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会の開催年を迎え、本番まであと285日に迫ってきた。既に決定している各都道府県出品割当頭数に基づき、参加都道府県では既に全共出品対策の組織が設置されるなど、全共出品牛の選定や衛生対策、輸送関係の準備が進められている。今回は、出品牛の資格条件や衛生条件、共進会日程等について要点をまとめた。
九州・沖縄で72頭出品
第15回全共は本年10月31日から3日間、宮崎県都城地域家畜市場で開催される。出品規模はホルスタイン250頭、ジャージー20頭の計270頭。ホルスタインでは「一般枠」のほかに「後代検定娘牛の部」と「高等学校特別枠」を設置して、国産種雄牛の一層の利用と高校からの出品奨励を図っている。
「第15回全共出品割当頭数」は別表のとおり。参加都道府県は41都道府県で、残念ながら6府県が欠場を決めており、これら欠場県の割当分が九州・沖縄ブロックに配分された結果、九州・沖縄の8県の出品割当頭数は前回の北海道大会を14頭上回る72頭となり、その活躍が期待される。未経産は自県産、経産は国内産
第15回全共の出品区分は、ホルスタインが12部(未経産4部、経産8部)ジャージー2部(経産のみ)の計14部である。ホル未経産の第1、2部と経産の第5部が後代検定娘牛の部で、そのほかは一般枠となる。また、高等学校特別枠はホルスタイン一般枠や後代検定娘牛の部に出品しない高校に割当てられ、1校1頭で該当する月(年)齢の部に出品できる。
出品牛の産地・飼養期間では、ホルスタイン未経産(第1~4部)は自県産で、出品者が本年9月末日まで引き続き6か月以上所有し飼養していること、同経産(第5~12部)は国内産で同じく1年以上所有し飼養していること、ジャージー(第13~14部)は国内産で同じく6か月以上所有し飼養していることが条件。また、出品牛には「検定成績証明」の取得又は申込みが義務付けられている。なお、出品牛の申込締切は本年9月24日(木)必着である。衛生検査・予防接種の義務付け
全共出品牛は「第15回全共衛生対策要領」に基づき、家畜伝染病検査及び感染症などの予防注射の実施が義務付けられており、別図を参照されたい。①結核病、ブルセラ病、ヨーネ病の検査を図示の期間内に実施して、それぞれ陰性であること、②炭疽、牛流行熱、イバラキ病、牛異常産、牛呼吸器病の予防注射を図示の期間内に実施していること。また、③居住する都道府県を出発する72時間以内に、家畜防疫員による臨床検査を受けて健康であること、④真菌症の皮膚病やイボ等の体表異常がないこと、⑤搬出時に健康状態の確認が義務付けられている。
出品牛搬入は10月25日から
出品牛の搬入は10月25~29日で、搬入にあたっては家畜車や出品牛、荷物等の消毒と、前記の衛生対策が徹底される。
29~30日には出品牛の体測定や出品者記念撮影、出品委員打合会を、また30日夕刻から審査会場で前夜祭を開催する。
31日はオープニングセレモニーに続いて、10時から審査会場で開会式が行われる。午後からいよいよ各部の審査が開始され、ホルスタイン未経産とジャージーの各部審査及び名誉賞決定、翌11月1日は終日、ホル経産の各部審査と名誉賞決定、有終の美を飾って最高位賞決定審査が行われる。11月2日は、各部上位入賞牛パレードに引き続き、閉会式と国関係の褒賞授与が行われ、第15回全共の幕を閉じる。高校生向けに後継者育成プログラム
付帯・協賛行事では、10月29日に全共出品等の高校生対象の「後継者育成プログラム」が行われ、防疫講習会やジャジングスクール、リードマンスクール・コンテスト、交歓パーティーが計画されている。追って参加募集を行う予定。また、30日~11月2日まで、近隣会場において酪農資材器具展・技術交流会を、1日夜には来賓祝賀パーティーが開催される。このほか、全共セミナーやジャージー交流会等の開催も計画中である。
なお、第15回全共規則や同衛生対策要領等の詳細については日ホ協Webサイトを、共進会行事日程等については第15回全共九州・沖縄ブロック大会実行委員会のWebサイトを参照されたい。
人事異動 -日本ホル協-
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(12月22日付)
◇渥美正 退職(事務局長兼総務部長)
(1月1日付)
◇北島聖二 総務部次長兼総務課長兼経理課長(総務課長兼経理課長)
◇西村多恵子 事業部証書課証書係主任(主事)
第15回全共 九州・沖縄ブロック大会まで
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5面
改良と血統 ゲノムの時代 事業部長 國行将敏
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近年、乳用牛の改良技術は加速度を上げて進化しています。70年以上前に精液の凍結技術が開発されてから、日本の人工授精技術はそれまでの液状精液から凍結精液に変わり、優れた遺伝子は全国へ普及しました。その後、優れた牛をより多く生産できる受精卵移植技術に発展してきました。受精卵移植は品種を問わず色々な用途で普及しています。乳用牛に肉用牛の受精卵を移植して生産する農家も増えてきています。最近では、性選別精液の普及・利用が増え、効率的に後継牛生産ができるようになりました。
そして今、改良は「ゲノム」の時代へ。生まれてきたばかりの牛の細胞から遺伝情報(DNA)を抽出・解析して「未来」が予測できるという、精子や受精卵が顕微鏡で見える世界よりも更に小さい「ミクロの世界」の技術が改良に取り入れられています。日本は平成25年度からSNP検査を開始しました。泌乳が始まる前に能力や体型を見極められることから、遺伝的に優良な牛は後継牛生産に、それ以外はF1生産などの判断手段として利用でき、SNP検査は年々増え続けています。血統なくして改良なし
その改良のために必要になるのが「血統情報」です。優れた泌乳能力、長命連産に必要な体型の遺伝子を持っている雄牛、雌牛であっても、素性(父母の情報)が分からなければ改良ができません。血統情報がはっきりしているからこそ、「次はこの雄牛で牛群を改良していこう!」という考えになると思います。
血統情報だけあればいい訳ではありません。牛群検定では「乳量が出る」等、その牛が持っている泌乳能力を知ることができます。体型審査を受けて、「長命連産に優れた体型」の良否を点数化することで、客観的に評価することができます。これらを受けなければ「この牛は乳が出て、見た目がいい牛」と“何となく”というような表現しかできないでしょう。たくさんの情報が重要
従来の遺伝評価にゲノミック評価が加わったことで、今までの改良スピードとは比較にならないくらいの速さで、新しい優れた雄牛が国内外で誕生しています。その優れた雄牛の遺伝子を皆様の牛群に取り入れ、生産された牛の改良の成果を見るために必要なのが牛群検定、体型審査であり、それを証明するために大事なものが血統情報です。
SNP検査だけをやれば、より精度の高いゲノミック評価値が出ると思われがちですが、それにはより沢山の牛の血統情報や検定成績、審査記録が重要になります。これらの情報が新たに追加されなければ、評価値も更新されず古い情報のままです。古いブルブックを見て改良をするようなものでしょうね。酪農分野でもスマホは必需品?
牛の改良の進歩を話しましたが、私たちの身の回りでも技術は着実に進歩しています。肩掛けの移動式電話が誕生したのが30数年前。今ではその大きさや機能は比較にならないくらいに進化してきました。今は何でも「スマホ」の時代、これも一つの改良ですね。スマホ一つで買い物や自動車を操ることもできる時代になってきました。
日本ホル協では、従来パソコンでしかできなかった近交係数の検索や、紙で証明していた検定成績やゲノミック評価値を「スマホ」で閲覧できるよう開発をしました。今後も得られたデータを皆様に有効に活用していただけるよう、情報の還元に努力してまいります。
引き続き血統登録の必要性に対する理解とその普及にご協力いただきますようお願い申し上げます。
よくある質問にお答えします! ~自動登録Q&A~
事業部証書課長 門間裕子
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日本ホル協では本年も引き続き、血統登録頭数の確保と登録事務処理の軽減に向けて自動登録の推進を行ってまいります。現在、都府県における自動登録実施率は6割を超えました。自動登録を実施されている会員農家、支部・承認団体や地域の担当者の皆様におかれましてはご理解・ご協力を頂き心より感謝いたします。
さて、この度は皆様から寄せられることの多い自動登録についての質問に、Q&A形式でお答えいたします。Q1.自動登録のはずなのに血統登録証明書が届かない!なぜ?
A1.自動登録されていない原因は次の①~⑤が考えられますので確認してください。①家畜改良センターに出生報告を行っていない。②何らかの不備があり事故照会となっている。③自動登録を開始する前に生まれた牛である。④導入した牛である。⑤ET生産牛である。※③~⑤の場合は個別に血統登録申込書が必要です。
Q2.自動登録は移動証明がいらないの?
A2.はい、自動登録のメリットの一つとして、移動証明は必要ありません。他農家から導入した牛は家畜改良センターに転出・転入報告をすることで所有者名義は導入した農家のものとなります。また、家族間の名義変更の場合は「登録牛の同一家族への所有者変更届」を提出すれば無料で名義変更を行います。ただし、いずれの場合でも血統登録証明書には名義変更後の氏名は印字されず、データ上のみでの名義変更となりますのでご了承ください。血統登録証明書に印字したい場合は、従来どおり移動証明申込(有料)が必要です。
Q3.自動登録を始めたいけど、無登録の牛がたくさんいる場合はどうしたらいいの?
A3.自動登録の開始日より前に生まれた牛を血統登録するには、個別に血統登録申込書が必要です。しかし、その場合の登録料金は月齢にかかわらず10か月以内の自動登録料金で取り扱います。申込書の記入等お手数をおかけしますが、一番お安い料金となりますので全頭登録にご協力をお願いします。
Q4.自分で名号を付けたいけどどうすればいいの?
A4.家畜改良センターへの出生報告から1週間以内に日本ホル協に希望名号を連絡すれば、ご希望どおりに命名して血統登録証明書を発行します。連絡方法でお勧めしているのは「補足情報報告システム」です。家畜改良センターの届出Webシステムでの出生報告と同時に希望名号を入力できるサービスです。詳細は日本ホル協のWebサイトをご確認ください。
Q5.事故照会文書が溜まってしまったけど、月齢の経った牛は超過料金になってしまうの?
A5.自動登録の超過料金は、出生日と出生報告日の間隔が10か月超えた場合が該当します。事故照会の回答が遅くなったという理由で超過料金にはなりません。 出生報告漏れにご注意ください。
Q6.分娩予定牛一覧について、記載されている授精記録は受胎しなかったので次の授精をしている場合は、分娩予定牛一覧に手書き修正してFAXが必要?
A6.この場合は分娩予定牛一覧の修正FAXは不要です。複数回授精している場合でも、授精の都度、検定の際に授精報告すれば、最終の授精記録から90日経過した時に分娩予定牛一覧に記載して配布しています。ただし、分娩予定牛一覧に記載している授精記録が間違っている場合は、修正FAXが必要です。また合わせて、検定の授精記録も必ず修正するようにお願いします。
1位 栃木県・高瀬牧場(株) -生涯乳量都府県令和元年9-12月-
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令和元年9月から12月に都府県で検定成績証明されたものの中から、別表には生涯乳量7万㌔以上の高記録牛37頭を示した。今回は上位12頭が総乳量(M)10万㌔を突破した。
1位 高瀬牧場(株)(栃木県)
生涯乳量トップは高瀬牧場(株)(栃木県)所有の「CH ジエフアーソン タイム」(平16.7.10生)の検定回数10回で検定日数4321日、M15万358㌔、総乳脂量(F)6397㌔、平均乳脂率(F%)4.3%、総乳蛋白質量(P)5157㌔であった。今回の記録は、10産目の検定成績証明を申請したことによるもので、8年ぶりに栃木県内1位を更新する素晴らしい記録となった。
2位 池松和幸さん(福岡県)
2位は池松和幸さん(福岡県)所有の「アイハツピー トリプル ダーハム クリスター」(平14.6.12生)の検定回数12回で検定日数4750日、M15万345㌔、F5421㌔、F%3.6%、P4933㌔であった。今回の記録は、12産目の検定成績証明を申請したことによるもので、福岡県内1位の記録を塗り替えた。
3位 (株)マウンティンファーム渡辺(静岡県)
3位は(株)マウンティンファーム渡辺(静岡県)所有の「マウンテイン コランサ バツカイ グツデイー」(平19.9.29生)の検定回数9回で検定日数3051日、M14万3391㌔、F5669㌔、F%4.0%、P4317㌔であった。
4位 (有)萩原牧場(群馬県)
4位は(有)萩原牧場(群馬県)所有の「ブルーエンゼル バツクナー エラ」(平16.3.16生)の検定回数8回で検定日数3635日、M13万3637㌔、F4853㌔、F%3.6%、P4293㌔であった。今回の記録は、8産目の検定成績証明を申請したことによるもので、群馬県内歴代3位となる素晴らしい記録となった。
5位は佐藤範之さん(茨城県)所有の「ブリツツ」の検定回数9回で検定日数3401日、M13万1159㌔、6位は星野和司さん(群馬県)所有の「ロジツク」の検定回数8回で検定日数3091日、M12万2702㌔、7位は髙田茂さん(埼玉県)所有の「ジエスロ」の検定回数9回で検定日数3396日、M11万8949㌔。
以下、8位石川始さん(岩手県)、9位平田実さん(福岡県)、10位吉原直樹さん(岡山県)、11位亀田康好さん(埼玉県)、12位浅野裕一さん(千葉県)所有牛が10万㌔達成牛として証明された。
体型面においても3位(株)マウンティンファーム渡辺(静岡県)、10位吉原直樹さん(岡山県)93EX―3E、12位浅野裕一さん(千葉県)所有牛を始め13頭が90点以上を獲得しており、体型においても優れた成績を残している。
検定成績優秀牛 -都府県令和元年12月証明分F偏差値-
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6面
カナダ酪農視察報告記
(一社)日本ホルスタイン登録協会 塩野雅一
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2019年11月4日~10日までの7日間、デーリィマン社と北海道ホルスタイン農協が企画した「カナダホルスタイン酪農とロイヤル・ウィンター・フェア視察研修」に参加しましたので、その概要を報告します。
このツアーの参加者は北海道在住の酪農関係者を中心とした総勢33名で、例年に比べると多い参加者数とのことです。小雪舞うナイアガラ瀑布をバックに集合写真 酪農家視察とロイヤルの合間にて
ブロンディン牧場
現在のブロンディン兄弟で8代目。200年前に入植し、父の代より登録牛を飼い始め、現在は250頭程度を飼養(うち10%がRED牛。EX牛40頭)。飼料作付面積は400haで、内訳は乾草、コーンを35%ずつ、輸出(主にアジア)向けに大豆を30%作付。育成500頭を飼養し、95%にゲノミックサイアを授精、5%に受精卵を移植し、授精させる精液の選定基準・ポイントは、①バランス、②乳器、③尻幅、④肢蹄の4点とのこと。305日の平均乳量1万㎏、F%4.7%,P%3.5%の高能力牛群で、生体販売を盛んに行っているため搾乳牛の60%を初妊牛が占めていますが、肋の開張および方向、深さは凄まじく、見るからに良く食い込んでいることが窺えました。飼養形態はフリーストールであり、特筆すべき点として牛床に砂(自分の飼料畑から採取できるので無料。質は粒子が細かく、レンガを粉にしたような感じ)を使用し、雑菌の繁殖が抑えられるなど衛生的で牛が快適とのこと。実際、ベッドに寝ている牛が多かったことが印象的でした。
バルビゾン牧場
牧場主のエリス・ジャンドロン女史はホルスタイン・カナダの副会長。飼養形態はつなぎ・対尻式で経産牛頭数65頭を飼養(EX牛1頭、VG牛35頭)、平均乳量1万2000㎏、F%4.3%、P%3.4%の高能力牛群。飼料作付面積は160haでアルファルファなどのマメ科を栽培しており、うち輸出用に大豆を40ha作付し、販売金額で乾草を購入しています。バルビゾンと言えば真っ先に思い浮かぶのは“ドアマン”ですが、研修参加者の殆どが目を奪われたものは「つなぎ牛舎用搾乳ロボット(MilkoMax社)」でした。価格は1台あたり4~5千万円(現地価格)で、搾乳所要時間は1頭あたり7~8分程度、機械に指示を入力すると乳房炎罹患牛の搾乳をパスしたり、盲乳牛は乳頭3本だけ搾乳することが可能です。バルビゾン牧場では3年前に導入して現在3回搾乳を実施しています。ちなみに120頭牛舎だと1日2.5回程度の搾乳となるそうです。日本ホル協では今年度後期よりロボット調査事業が開始され、線形項目に「寛幅」および「乳房底面の高さ」が追加となりましたので、非常にタイムリーな内容でした。なお、日本国内でも北海道の酪農家が試験導入しているとのことです。つなぎ牛舎用搾乳ロボットに興味がある方は「つなぎ牛舎ロボット」でWeb検索すると、色々な情報が見られますので参考までにお知らせします。
バルビゾン牧場 つなぎ牛舎用搾乳ロボット
ジレット牧場
現在のエリック・パッド氏で5代目。3代目の歯科医師だった祖父が牧場を大きくし、ジレット牧場の名称はその祖父が由来とのこと。飼養形態はつなぎ・対頭&対尻式の他、フリーバーンで経産牛のべ650頭(ホル120頭、雑種430頭、採卵用100頭)を飼養、平均乳量1万500㎏、F%4.3%、P%3.6%の高能力牛群。飼料作付面積は520haでデントコーンを栽培しており、乾草は購入で賄っています。かつてジレット牧場には生涯乳量24万7711㎏のギネス記録所有牛(ジレットEスマーフ号)がいましたが、ここ数年はショウに出品しておらず、サイズが大きくなくて高能力な牛の産出を目指しているそうです。とは言え、在牧牛は全体的にフレーム、産乳量ともに大きい牛が多く、中でも十字部高177.5㎝のモンスター級の牛(体審91点)や、1日あたり84㎏を産乳するスーパーカウ(体審92点)がいたことが印象的でした。
サミットホルム牧場
1938年に祖父がチェコスロバキアから難民としてカナダに入植。本人は大学卒業後、トロントで3年間の民間勤務を経て現在3代目として就農し、父、叔父とともにマネージメントを行っています。飼養形態はフリーストールで経産牛頭数490頭、初産平均乳量1万2000㎏、3産平均乳量1万4000㎏(305日)、F%4.0%、P%3.2%の高能力牛群。飼料作付面積は344haでデントコーンを栽培。乾草は購入で賄っており、自給飼料を全量外部委託することで省力化を徹底しているとのこと。観察眼を養うことが大事であり、毎年分娩させることが良い牛を育てるコツとのことで、平均分娩間隔12か月、授精回数2・3回を実現しています。また、スタンチョンの手前にゴムマットを幅60~70㎝位敷くことで肢蹄のトラブルを減らしたり、鳥が牛舎に留まれないような構造にすることで飼料へのフン害を無くすなど随所に創意工夫が見られました。ブロンディン牧場でも使用している牛床への砂のアイデアは、通訳のテリー鈴木氏曰く「サミットホルム牧場が元祖」で、購入に年間16万カナダドル(約1300万円)も費やしているとのことですが、平均体細胞数は12万個と乳質は高品質で費用対効果は抜群とのこと。毎年、近隣住民や親戚、関係者などを集めて千人規模の牧場パーティーを催して交流を深めたり、飼養管理などでトラブルがあれば牧場スタッフや家族皆で話し合い原因を追究・解決していくという非常に前向きな考え方が印象的でした。
サミットホルム牧場 牛舎は梁に鳥がとまらないよう梁を無くした構造
ロイヤルウィンターフェア チャンピオン牛を間近で視察
トロント市内の住宅街から少し離れたところに突如現れるメッセ会場がショウの会場であるエネケアセンターです。ロイヤル・ウィンター・フェアは、11/1~10の10日間にわたり開催される農業の祭典で、乳牛だけでなく馬事競技や鳥豚めん羊など多岐にわたっており、目的である乳牛部門は11/7~9の3日間開催されました。我々一行が会場入りした時には残念ながらレッド・アンド・ホワイトショウは終了していたため、繋留場の見学がメインとなりました。繋留場は驚きの連続でしたが、小学校の見学や一般見学者が気軽に話しかけたりできる雰囲気を作られ、誰でも容易に立ち入れることに先ず驚かされました。繋留されている出品牛はとにかくフレームが大きいの一言に尽き、繋留場の牛だけでなくその場にいる関係者全体のサイズが大きいため違和感を感じませんが、近くで見ると十字部高160cmを優に超えるサイズの牛ばかりでした。また、胸幅、肋の開張・方向共に凄まじく、ものすごい勢いで乾草を食べており、その健啖ぶりにもただただ感嘆の声が出るのみでした。
翌日は、前日のショウの進行が遅れたとのことで運良く未経産第4部から見ることが出来ました。初めて入る会場には、天井中央にNBAでよく見る4面のスクリーンがあり、会場を暗くしてからのスポットライトなど、一つのエンターテインメントとして形作られていて非常に興奮しました。会場の都合上、リングサイドではなく上から見るため高さなどは分かりづらい(リードマンも大柄ということもありますが…)が、それでもフレーム、胸幅、肋の開張・方向、尻、肢蹄はとても素晴らしく、乳房を付けたらそのまま経産の部になるかのようなレベルでした。また、経産の部は、肋の開張・方向などは言うまでもなく、どの出品牛もとにかく乳房の付着・高さ・幅、そして乳房底面の高さが素晴らしかったです。プレゼンターの関係で牛の待機場に入る機会を頂きましたが、前日の繋留場から更にグレードアップした牛、中でも今年のワールド・デイリー・エキスポでリザーブ・インターミディエイト・チャンピオンを獲得したジェイコブス・ドアマン・ビクトア号(このショウではチャンピオンを獲得)を間近で見ることができ、その全てに圧倒されました。
プレゼンターとして、リザーブ・インターミディエイト・チャンピオンの褒賞授与と写真撮影を行いました。受賞牛であるミズ・ビューティ・ブラック・ベルベット号はチャンピオンと同じ第12部で争ったこともありリードマンは相当悔しそうでしたが、栄えある成績を称え「コングラチュレーション」と言ったところ、もの凄く不満そうに「サンキュー」と返され、気まずい雰囲気の中での写真撮影になってしまいました。塩野雅一、一世一代の棒立ちです……。
今回、視察研修に参加し英語の重要性を再認識したほか、農場視察では乳牛の体型改良・飼養管理だけでなく、カナダの酪農保護政策であるクォータ制度を知ることができ、ロイヤルウィンターフェアでは、素晴らしい牛達、会場の雰囲気、エンターテインメント性など実際に会場に行かなければ味わえない貴重な経験を得ることができました。この研修で見たことや感じたことを胸に刻み、日本の飼養環境に見合った牛達を正確に審査できる審査委員になれるよう一層努力していかなければならないと改めて感じました。
写真はデーリィマン社より提供。大迫力のショウ会場はカナダの国技であるアイスホッケー場を利用
Rインターミディエイトチャンピオン
第15回全共対策室 第四回全共通信
全共対策室長池田泰男
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新年あけましておめでとうございます。2020年を迎え、第15回全共の開催まで300日を切った1月8日、宮崎神宮(日本の初代天皇である神武天皇を祀る神社)に実行委員会並びに関係者で全共の成功祈願を執り行いました。いよいよと言った感じで、身が締まる思いです。
さて、今回は繋留所について、少しお伝えします。全て決定事項ではなく、現段階での進捗状況となります。会場となる都城地域家畜市場には、既存の繋留所①がありますが、全国各地から270頭が集まり、約1週間繋留するには少し狭い。ゆったりと休み、本番を迎えていただくため、隣接の倉庫に仮設で繋留所②を設置いたします。
既存の繋留所①では一部狭い繋留所があり、昨年の九連共(プレ大会)の反省会で、使いづらいといった意見があったことから、その1列分を仮設繋留所②に増設することで計画変更。よって、①には110頭、②には160頭繋留予定。
また、荷物等を置く場所を繋留所の後ろに確保しました。繋留所①では牛1頭当り3m×1.5mを繋留スペースとし、後方に2mの通路を確保、その後ろに奥行6m×幅1.5mの荷物置き場を提供します。
また、繋留所②では、牛1頭当り2.5m×1.5mを繋留スペースとし、後方に1.5mの通路を確保、その後ろに奥行4m×幅1.5mの荷物置き場を提供します。
2つの繋留所には多少違いがあり、既存と仮設、使い勝手は一長一短あります。しかし、限られた敷地での対応なので、ご理解願います。
この他に、近年毛刈用の枠場の持込が多いことから、枠場の置場を各都道府県ごとに設ける予定です。
今回は繋留所についてお伝えしましたが、宮崎神宮参拝の同日、沖縄県で豚コレラの発生が報じられました。他人事では無く、「入れない出さない」の精神で消毒の徹底をお願いします。
ホルスタイン手帳発売中
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7面
長命連産性に優れた牛群へ 体型審査を受検しよう
事業部審査課長 高橋貞光
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酪農経営を行う上で、乳牛に第一に求められるものは泌乳能力であり、乳牛の本当の価値はその牛が一生涯にどの位の牛乳を生産したかによって決まります。生涯生産能力をより一層高めていくことが生産コスト低減と収益性の向上につながります。
① 審査の意義
長い期間にわたって高い泌乳能力を維持するには、健康で骨格のしっかりした体型と付着・形状のよい乳房、丈夫な肢蹄等が必要で、これらは飼養管理や搾乳管理の作業効率を高める上でも重要な役割を担っています。また、体型の良い牛が数多く揃うことで、日常の管理作業の効率化が図られ、故障や疾病に対する抵抗性が向上し、結果的にトラブルが減り維持管理費の低減にもつながります。
体型は必ず生産性や強健性などの機能を伴うものであり、外見上に表れるそれらの機能を早期かつ的確に見定めることが体型審査であり、その牛が生涯にわたって高い泌乳能力を発揮できるか否かを判定する重要な手法です。② ツルータイプ
「図1」に示したのは、我が国のツルータイプ(ホルスタイン種雌牛標準体型)です。ひとことにツルータイプと言っても、ただ絵画的に作成されたものではなく、想定された条件があります。その一部を例として挙げると①鋭角的で飼料の利用性に優れている、②6歳で4~5産しているなどがあり、これは酪農家が経済行為を営むうえで、飼養管理する牛に重要な役割があることを示しております。例えば、ある酪農家の牛舎には初産から5産以上の牛が揃っているのに対し、一方の酪農家の牛舎には初産と2産の牛しかいなかった場合、酪農経営として理想的なのは前者であることは言うまでもありません。機能的で長命連産性に優れてこそ、経済動物としての価値は向上します。このことから、ツルータイプに想定された条件は酪農経営においても極めて重要な役割を担うものであります。
③ 審査プログラム
雌牛が審査を受ける場合には、血統登録牛であることを前提として、次の2つの審査プログラムにより受けることができます。①牛群審査(有料)として、飼養する牛群内の経産牛全頭を対象とするものと、②後代検定材料娘牛(初産検定中)を飼養している牛群検定農家において実施する初産牛の体型調査(無料)です。また、体型調査と同時に2産以上の経産牛の審査を希望する場合、6頭までは牛群奨励審査、7頭以上の場合は牛群審査として受検することが可能です。
これらの審査日程は、4月から7月までの前期と10月から2月までの後期の年2回、日本ホル協の審査委員が現地の担当者とともに県内を巡回して実施します。審査では、各個体の体型について線形評価と得点評価を行い、審査終了後にその場で審査結果を印刷して説明を行うほか、直近の遺伝情報や種雄牛情報の説明や交配・管理等のアドバイスを行います。また、審査結果は自動的に審査成績証明されるとともに、血統・能力のデータと合わせて種雄牛および雌牛の遺伝評価に利用され、遺伝情報として酪農家にフィードバックされます。④ 審査結果から見えるもの
「表1」には例として実際の審査結果を示しました。この結果から窺えるものとして、「牛群の成績」から過去の受検年月と受検頭数、それぞれ審査時の初産牛の平均得点が記載されています。今回の2歳級以下の審査結果を過去数回の結果と比較することで、今回の平均得点が向上したことが分かります。仮に同一環境下で哺育・育成されたのであれば、今回の18頭が過去3回より優れており、体型偏差値が上がったことは、結果として体型の改良や牛群管理が順調であったと推察することができます。次に、「個体別審査成績の概要」には、今回受検した18頭それぞれの個体情報と各形質・決定得点が記載されています。この結果からは乳器得点に上下のバラツキがあることが分かります。仮に繋ぎ牛舎であれば列ごとの搾乳担当者の違いや搾乳手順、搾乳機器など様々な理由が推測できます。また、決定得点81点の4頭に注目すると、同じ決定得点でも牛コード0008だけ乳器得点が80点以下の評価を受けているほか、乳器得点が77点以下の牛に注目することで改めて他の牛と搾乳性の良否を比較できるほか、今後の乳器改良への課題と後継牛の選抜・確保の対策としても利用できます。
⑤ 線形形質
「表2」には今回審査における線形形質の結果を示しました。ここでは特に◎と▼に注目します。この表を横に見ると個体ごとの特徴を線形形質ごとに把握することができ、縦に見ると18頭を一群として線形形質ごとの特徴を把握することができます。よって、表を横に見て№2や№12のように◎が多い個体ほど、ツルータイプにある6歳で4~5産するために必要な機能的体型を2歳初産として備るべき体型を他の牛よりも備えていると言えます。また、横に見て№9のように▼が多い個体は、他の牛よりも肢蹄と乳器において劣っていることが分かります。手のかかる個体を減らし、より◎が多い個体を集団にすることは管理作業を向上させ、故障や疾病に対する抵抗性に期待できることから、選抜淘汰の材料として有効に活用することができます。
次に、表を縦に見て◎が多い形質、例えば「胸の幅」や「鋭角性」、「坐骨幅」、「後乳房の高さ」は、群として優れていることを示す一方で、◎がなく▼が多い「後肢側望」や「後肢後望」では群として好ましくない形質の特徴が表れています。例えば繋ぎ牛舎の場合は、牛のサイズに対する牛床の長さや幅の問題、マセン棒の位置や高さなど管理上の影響によるものと推測できると同時に、一つの飼養管理改善のきっかけとして役立てることができます。⑥ 遺伝評価
牛群審査や体型調査では、単に体型の評価を行うだけでなく予め準備した受検農家ごとの遺伝評価値に基づき、審査委員が牛群の特徴や個体の情報について説明を行います。「表3」には、例として個体遺伝能力を示しました。総合指数NTPは、牛群検定記録と体型審査記録により評価が行われるので、この表でNTPの記載がないものは、評価時に審査記録を持っていなかったため、牛群検定による泌乳能力のみ遺伝評価が行われたことになります。この表では主に後継牛確保に向けた選抜淘汰の材料として、個体ごとの成績を確認することができます。例えば同一産次である牛コード「0009」はNTP+1152で期待乳量+432㎏に対して、牛コード「0005」はNTP-571で期待乳量-390㎏であることが分かります。このことから、同一環境下で飼養管理していても1乳期で期待乳量に800㎏強の差が生じることが推測され、これらは後継牛を確保するうえで極めて重要な情報であります。
⑦体型審査を受検しよう
このようなことから、牛群検定の実施と共に牛群審査や体型調査を定期的に実施することで、牛群水準を確認することができるのは勿論のこと、飼養管理や個体販売、更には遺伝改良を有利に進めることができます。審査を受ける場合は、審査プログラムで説明したとおり原則として飼養する登録経産牛全頭を対象としますが、5歳以上や廃用予定、疾病牛等は除くことができるので、改良をより効率的に進めることができます。また、後代検定精液を利用することで、材料娘牛と同期牛の体型調査を無料で行うことができます。
乳牛の改良を進めるうえで、血統登録・牛群検定・後代検定・ゲノミック評価等は、周期的かつ一体的で必要不可欠な極めて重要なものであります。これら事業に積極的に取り組むことが、将来の生涯生産性に優れた牛群、すなわち収益性の高い酪農経営を確立するためのツールであります。是非とも牛群審査の受検をご検討下さるよう宜しくお願いいたします。 日本ホル協の審査委員が皆様の牛舎にお伺いします。
國行将敏(事業部長)
高橋貞光(事業部審査課長)
椛沢洋二(事業部審査課長代理)
大西信雄(契約)
植原友一郎(契約)
池田泰男(全共対策室長・宮崎県出向中)図1ホルスタイン種雄牛標準体型(昭和54年制定)
全共を写真で振り返る9
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