平成22年09月20日
平成22年09月20日 「牛群検定のススメ」 ~「検定をやってみたいんだけど・・・」と悩んでいるあなたの疑問にお答えします~ |
乳用牛群検定は、月に一度、検定員が搾乳に立会することで、乳量、乳成分、繁殖、濃厚飼料といった基本情報を得て、経営改善に役立てる事業です。北海道で68.2%の酪農家が牛群検定に加入しているものの、都府県で35.0%の加入に留まっています。牛群検定は平成21年5月に検定成績表もリニューアルし、その機能を強化したところです。そこで、今回「全酪新報・日本ホル協特集」の場を借り、牛群検定加入にまつわる疑問質問にお答えし、一人でも多く牛群検定に加入して頂き、安定した酪農経営を手に入れて頂きたいと考えています。また、詳細につきましては、家畜改良事業団ホームページをご覧下さい。 |
Q1牛群検定で何ができるのですか? |
A 牛群検定により次の4つのことができます。①飼養(健康)管理、②繁殖管理、③乳質衛生管理、④遺伝的改良、これら4つの機能により酪農家の経営改善に資することが牛群検定の命題です。①飼養(健康)管理 牛群検定により乳量の増減を確認することが、まず一番大事な乳牛の健康管理になります。また、乳成分値やMUN、P/F比により、適切な飼料給与の状況を管理できることや、除籍理由の集計による周産期病の発生状況なども管理することができます。 ②繁殖管理 検定成績表では、授精が遅れている牛やなかなか受胎しない牛などは一目でわかるようになっています。また、妊娠した牛については、分娩予定日を表示し、乾乳など適切な管理が行えるようスケジュール表示されます。 その他にも、肉牛交配率(F1)や受胎率、分娩間隔といった繁殖関連の技術指数ももちろん成績表示され適切な牛群の繁殖管理を行うことができます。 ③乳質、衛生管理 1頭1頭の体細胞数を測定しているので、乳房炎などに罹患していない高品質な乳質を管理できます。乳房炎は、衛生環境が劣悪である場合に発生しますので、体細胞数を把握することで、衛生的な搾乳の実施や牛舎の衛生状況を間接的に管理することもできます。 ④遺伝的改良 牛群検定に加入すると「牛群改良情報」という1頭1頭の遺伝情報を年4回得ることができます。遺伝情報は次世代を担う娘牛を作るか、F1を作るか、といった交配方針を決める重要な情報です。 |
Q2牛群検定を行うのに必要な経費は? |
A 牛群検定の料金は、サンプル検査料、検定員費用などによって各牛群検定組合で決められており、全国一律料金ではありません。目安としては通常の経営規模でしたら、すべての経費を乳量に換算すると、1頭あたり3~4㎏/月程度のものです。牛群検定に加入していない牛との差は、現在、1頭あたり年間1,800㎏程度です。牛群検定を継続することで、検定費用を上回る効果が期待できます。(注)詳細は、牛群検定組合までお問い合わせ下さい。 |
Q3搾乳中はとても忙しいので、省力的で簡単な牛群検定はありませんか? |
A 乳量計の読み取りやサンプル採取は検定員が行います。また、昔と違って個体確認も耳標を使いますので、あなたの手をわずらわせることはありません。それでも毎日の搾乳と比べて検定を伴った搾乳は、多少、作業時間が延びるという声はありますが、それを上回る効果を牛群検定で得られるのだとお考え下さい。また、次のような新しい検定法も行うことができます。 ①AT検定法 2回搾乳のうち、夜朝どちらか一方のみを検定します。 ②大規模酪農検定 パソコン管理されているパーラーの場合、そのパソコンから乳量データを利用しますので、忙しい搾乳時の検定作業はサンプル採取のみになります。 |
Q4紙の検定成績表だけでなくパソコンを使ったデータ管理をしたい。 |
A 家畜改良事業団が提供している繁殖台帳webシステムというソフトを利用すると、インターネットや携帯電話で検定成績データの利活用ができます。また、検定データのEメール配信もおこなっています。これらの情報提供を検定農家は無料で利活用できます。 |
Q5自分で乳量や体細胞を測定して管理しています。牛群検定に加入するとそれ以上の情報を得られるのですか? |
A まず、牛群検定に加入すると、「牛群改良情報」という1頭1頭の遺伝情報を得ることができることは、Q1でお示ししたとおりです。その他にも、検定成績表の乳成分グラフをみることで周産期病の予防対策を行うこともできることや、Q5の繁殖台帳webシステムを利用すれば、繁殖はもちろん色々な管理情報データを入力することなく、リアルタイムに把握し活用することができます。 |
Q6検定成績表の簡単な見方を教えて下さい。 |
A 最初は数字が多くて戸惑うかもしれません。慣れないうちは、あなたが今一番困っていることに目的を絞ってみるのがコツです。例えば、乳牛の健康管理に目的を絞ったとします。郵送されてくる検定成績表では、体調を崩している牛に右図のような記号でマークがつきますので、これを探して蛍光ペンで印をつける使い方は、簡単でおススメです。 |
Q7牛群検定を無料で開始できると聞いたのですが? |
A 家畜改良事業団独自財源で行っている乳用牛改良対策事業を利用することで、一定期間無料で牛群検定を実施体験できる通称「お試し検定」を実施中です。是非ともご利用下さい。 |
Q8牛群検定に加入するには、どこに連絡すれば良いのですか? |
A お近くの牛群検定組合や農協へお問い合わせ下さい。(社)家畜改良事業団電子計算センター(03-5621-8921:tiawase@liaj.or.jp)でも結構です。 【文:(社)家畜改良事業団電子計算センター相原光夫】 |
平成22年09月20日 「生涯乳量」 ~都府県22年7-8月~ |
本年7~8月に都府県で検定成績証明されたものの中から、別表には生涯乳量5万㌔以上の高記録牛38頭を示した。今回は群馬県・都丸進さん所有牛をはじめ、上位5頭が総乳量10万㌔を突破し、これで都府県の生涯乳量10万㌔達成牛は計100頭になった。 今回の生涯乳量トップは都丸進さん(群馬県)所有の「クイーンデユークラベラーミヤコ」(平2・7・21生)、で13回の検定で検定日数4,171日、総乳量131,178㌔、乳脂量4,600㌔、平均乳脂率3.5%、乳蛋白質量4,030㌔を記録した。 本牛は20年前に生まれ平成18年に死亡しているが、多くの産次の305日検定で乳量1万㌔を超え、現在の水準を大きく上回る名牛であった。今回の記録達成で生涯乳量の都府県歴代6位にランクインし、地元群馬県では佐々木経夫さん所有牛の記録を3年ぶりに更新し、生涯で1番多くの牛乳を生産した牛として証明された。 2位は高田茂さん(埼玉県)所有の「タカダフアームエムビーリンカーン」(平7・11・7生)で、10回の検定で検定日数3,231日、総乳量113,413㌔、乳脂量5,139㌔、平均乳脂率4.5%、乳蛋白質量3,770㌔を記録した。 本牛は初産時の証明は行っていないが、3産以降は305日検定で乳量1万㌔を超え、今回の記録達成となった。この記録は、埼玉県歴代3位の好成績であり、脂肪量においては1位で都府県でも7位と成分値の優れた名牛である。なお、本牛は12産目を泌乳中であり、どこまで記録を伸ばせるか期待である。 3位は小林知史(福島県)さん所有の「ヒンペルデイローテリス」(平11・10・26生)で、7回の検定で検定日数2,820日、総乳量113,074㌔、乳脂量3,966㌔、平均乳脂率3.5%、乳蛋白質量3,741㌔を記録した。 テリス号は全7産を通して305日検定では乳量1万㌔を突破し、平均で1万3千㌔を超える高泌乳能力の牛である。また、この記録は福島県歴代2位の記録である。 4位は大嶋宏和(群馬県)さん所有の「ビツクヒルマブリツクマスター」(平12・9・1生)で、6回の検定で検定日数2,418日、総乳量103,552㌔、乳脂量3,088㌔、平均乳脂率3.0%、乳蛋白質量3,186㌔を記録した。 5位は槇芳行(福岡県)さん所有の「ウオーカーシーブイNE」(平8・9・28生)で、10回の検定で検定日数3,403日、総乳量100,268㌔、乳脂量3,779㌔、平均乳脂率3.8%、乳蛋白質量3,156㌔を記録した。 また、8位、30位の(財)郡山市観光交流振興公社(福島県)所有牛は審査得点90点を獲得している。 |
平成22年09月20日 「登録推進事例発表」 ~日ホ協・登録担当者会議開催~ |
日本ホルスタイン登録協会は、平成22年8月31日(火)東京都千代田区内神田、東京コープビルに於いて、支部・承認団体の登録担当責任者41名を集めて、平成22年度夏期登録担当者会議を開催した。 |
39都府県から41名出席 |
この会議は、例年7~8月に都府県5地区(関東は県単位)で開催していた地区別登録委員研修会と併せて開催していたが、口蹄疫による防疫上の理由から自粛したことによるものである。 開催に先立ち主催者より、日頃より当協会の血統登録をはじめとする各種登録・証明の普及推進のためにご尽力をいただいているとともに、厳しい酪農情勢にもかかわらず、平成21年度は各種登録申込み頭数が前年を上回ったことに感謝の意を表した。 報告及び検討事項として、第13回全日本ホルスタイン共進会については、開催が1年延期となったことから、出品条件等の再確認をQ&Aにより説明理解を求めた。また、酪農経営の安定的発展に不可欠な血統登録や体型審査をはじめとする各種登録の普及拡大に努める推進策として、事前に都府県で纏めた資料を参考にしながら出席した支部・承認団体担当者5名から登録の推進事例を報告願った。 この他として、種畜の遺伝的能力を高い精度で評価するために必要なデータを全国的・効率的に収集する後代検定体型調査事業や登録事務の効率化推進のための地方ターミナル通信方法の変更案、自動登録の実施取扱い規約案、特色ある優良遺伝資源を活用するためブラウンスイス種の体型審査要項及び審査標準の制定、ジャージー種牛登録規程等改正案、WHFF2010審査委員ワークショップの概要等が報告された。また都府県担当者からも多数の意見・要望も出された会議であった。 |
平成22年09月20日 「審査1,081頭・調査2,517頭減少」 ~22年度前期都府県牛群審査・体型調査実施状況~ |
平成22年度前期の都府県における牛群審査と後代検定に係る体型調査は、口蹄疫の影響で未実施又は延期の県が続発し、8月31日現在では35都府県で実施された。審査頭数は2,800頭で前年同期を1,081頭下回ったほか、体型調査は652戸で3,891頭を実施し、前年同期を346戸、2,517頭下回った。審査得点90点以上(EX)の雌牛頭数は54頭で、最高得点は岩手県・外谷辰也さん所有牛が7歳5産で93点を獲得した。 |
口蹄疫の影響・9県中止(延期) |
平成22年度前期における審査・調査の概況を紹介するにあたり、まず後代検定材料娘牛とその同期牛の体型調査については、前年度までは(社)家畜改良事業団が事業実施主体となって当協会へ委託する方式であったが、本年度は事業名が「多様な酪農経営実現支援事業」と変わったばかりでなく、事業実施主体が各都道府県の牛群検定事業実施主体若しくは畜産関係団体となり、当協会へ審査(体型調査)申込みをする方式となった。事業の仕組みの変更のため、当初の4月第1週開始予定が第4週にずれ込み関係者にご迷惑をおかけしたことをまずお詫びしたい。 一方、今年度前半の牛群審査・体型調査は、4月半ばに宮崎県で発生した口蹄疫の影響で、それ以降に予定していた都府県の多くで審査の延期又は中止が相次いだ結果、戸数頭数とも大きく落ち込んでいる。8月31日現在の集計では35都府県で牛群審査・体型調査が実施され、9県では未実施となっている。その結果、牛群審査を受けた戸数は234戸で2,568頭、牛群奨励・個体審査は74戸で232頭、審査合計頭数は2,800頭となり、前年同期比では牛群審査戸数が126戸、審査頭数が1,081頭それぞれ減少となった。 また、体型調査は652戸の牛群検定農家を訪問し、初産泌乳中の後代検定材料娘牛1,130頭と同期牛276頭の合計3,891頭の体型データを収集した。前年同期比では牛群審査と同じく大幅減で推移しており、戸数で346戸、頭数で2,517頭の減少となった。 表1には都府県別に牛群審査・体型調査実施状況をとりまとめた。審査頭数では岩手県が314頭で最も多く、以下、群馬県の307頭、栃木県242頭、愛知県の224頭、千葉県193頭と続いている。対前年比で頭数が大きく伸びた県はなく、宮城県・山形県・長野県で40頭前後の伸びとなった。逆に大きく減少している県も多くこれは口蹄疫の影響と考えられる。 体型調査頭数は審査と同様、岩手県が最も多く418頭、以下、群馬県378頭、岡山県318頭、栃木県300頭と続いている。 なお、本年度は日程が延期されたことにより、例年では考えられない夏場に実施されている箇所もある。九州各県では福岡県が8月に実施したほか、その他の県も9月から10月前半にかけて前期の審査・調査を実施(予定を含む)している。例年以上の猛暑続きで牛も人も苦労している中での関係各位のご協力に感謝したい。 |
岩手県で前期最高の93点 |
さて、前期都府県で審査得点90点以上(エクセレント=EX)に評価された雌牛を表2に示した。前年同期より13頭減り54頭となった。県別では岩手県が9頭で最も多く、次いで栃木県8頭、愛知県と岡山県が4頭で並び、さらに群馬県・長野県・兵庫県・鳥取県・福岡県が3頭で続き、計19府県でのEX誕生となった。 今回の最高得点は、岩手県久慈市・外谷辰也さん生産・所有のノースランドルーベンスジョハナ(父セントボビテックルーベンス)で7歳0月齢、5産で93点を獲得した。正確な骨格構造と肋の開張が極めて良く、年齢を感じさせない素晴らしい乳器が評価され、今回の快挙となった。外谷牧場ではノースランドルーベンヘルシー(父ルーベンス)も7歳5産で92点を得ており、今期は計3頭がEXとなっている。 さらに、今回は次の方々で初のEXが誕生した。表2の上から長野県・五味公義さん、青森県・阿部亨さん、岩手県・東舘光夫さん、栃木県・中山智之さん、同・松井実さん、群馬県・石井一さん、石川県・大谷真明さん、岡山県・吉本卓弘さんの8名で、長年にわたり続けてきた努力がこの成果として現れたものと考えられる。 |
EXは3産・9千㌔以上 |
ホルスタイン雌牛の審査で初めてEXに評価する場合は次の条件を全て満たすことが必要である。①3産以上で正常分娩していること、②305日検定の実乳量が9,000㌔以上、③泌乳中であること、④けいれん肢がないこと、⑤融合乳頭がないこと。 |
平成22年09月20日 「我が国のジャージーの歴史」 ~時代の要請で輸入・特性生かした飼育されず~ | |
昭和55年3月に家畜登録団体中央協議会が発行した「家畜登録事業発達史」は、乳牛・和牛・軽種馬など協議会を構成する10団体の畜種について、それぞれの家畜改良と登録事業の発展について詳しく記述されている。わが国における家畜登録事業の歴史は、古く明治末期のジャージーとホルスタインに始まったといわれるが、今回は登録事業の始まりが最も早かったジャージー種について、どのような経緯で外国から導入され、登録事業が始められたのか、この発達史からお伝えしたい。 | |
明治・・・文明開化とともに | |
わが国では元来牛馬は農耕用という観念でしかなかったのが、乳を飲み、肉を食べるという畜産の考え方は明治の文明開化とともに外来した。当時の畜牛の改良の基礎は外国種の導入・模倣から出発し、政府の種畜供給機関の設置、西洋農業の技術の導入等の諸政策の実施と相まって、乳牛飼育は飲用を目的とした民間の搾乳業により始まった。 | |
初のジャージー導入 | |
わが国にジャージーが初めて輸入されたのは、官営牧場である取香種畜場(のちに下総御料牧場と改称)であり、明治10年(1877年)に入った牝3頭・牡2頭であった。農商務省刊行の輸入種牛馬系統取調書によると、アメリカから購入したジャージー種牡牛マーマヂューク号は100ドル、同時に購入した牝・第3ヤング・チューリップ号及び第3オレンジ号の価格は、それぞれ150ドルと記載されている。 | |
津田牧場 | |
当時は政府の勧農策に呼応して民間における牧畜熱が昂揚し、折からの国有林野の払下げ・貸付、林野の官民有区分が行われたこともあって、各地に牧場が開設されるようになった。明治10年に茨城・千葉県にまたがる広大な原野の払下げを受けた津田出は、明治18年にジャージー牝牛19頭、ジャージーとホルスタインの雑種牡牛1頭をホルスタイン牝牛5頭とともにアメリカから輸入した。しかしながら、当時輸入したジャージーは概ね不良であって、かつ結核病に罹るものが多く、乳質は優れているが、品性容姿は甚だ劣るものであったという。 | |
神津牧場 | |
一方、長野県出身の神津邦太郎は、明治20年に洋式の大牧場として神津牧場を群馬県北甘楽郡西牧村(現・甘楽郡下仁田町)に創設した。明治22年にはバター製造を開始し、その品質の向上と製品の普及に努力する一方、その飼養牛の改良に意を注いだ。当初、神津牧場は種々の乳牛を放牧していたが、明治24年にアメリカ産のジャージー牝・牡2頭を購入したのを契機に、バター製造を主眼としてその飼養はジャージーが主体となっていき、さらに、明治38年にアメリカに渡り、当時の農商務省より委託された北米酪農業の調査に従う傍ら、各地の牧場を訪ね、ジャージー種牡牛4頭、牝牛20頭を購入。さらにカナダに赴いて、フレンチ・カナディアン種及びエアシャー種など総計45頭の大量の優秀な純粋種を輸入した。この中のジャージー種はいずれも当時世界的に名声を博した系統で、これによりわが国ジャージー改良の先鞭がつけられた。 | |
東京愛光舎 | |
また、東京愛光舎主角倉賀道は明治36年、牝・牡各1頭のジャージーをアメリカから輸入した。明治40年には純粋牝・牡20頭をアメリカから再び輸入、さらに翌41年にみたびアメリカに渡り、アウル系の優秀な純粋牝・牡6頭を購入、愛光舎におけるジャージーの繁殖を行った。この中の1頭、ゼ・アウルス・クイーン号についてみると、初産で乳量7,292.2ポンド(約3,300㌔)、乳脂量442.7ポンド(約200㌔)を出しており、帝国ジェルシー種牛会報第2号には、「本牛はアウル系中出色の才物にして能く父母両牛の各特徴を継承し、ジェルシー種牝牛としては真に模範的典型を得たるものとす。其体格の発育円満にして各部の調和宜しき。其品位の優雅高尚にして自から尊貴の形貌を具へたる」と記載されている。角倉賀道は愛光舎牧場を明治32年東京府巣鴨に創設、次いで明治38年に埼玉県大宮に愛光舎大宮種牛牧場を作り、ホルスタイン種牛の大量輸入も同時に行った。このように明治末期には東京においても次第に乳牛を飼養するものが増え、搾乳して市民に販売する牛乳搾取業の方が多く存在したと考えられる。 なお、北海道にジャージーが入ったのは明治31年、宇都宮仙太郎牧場にアメリカ産の牝・牡各1頭が初めてであったが、その後、明治40年に自らアメリカに渡り、牝5頭を輸入した。 | |
帝国ジャルシー協会の創設 | |
外国種の導入に始まったわが国の畜産も明治後期(明治33年~44年)を迎え、政府の畜産改良の具体的な政策が進められ、畜牛改良方針の確立、種牛牧場官制の公布、種牡牛検査の施行あるいは地方種畜場規程・種畜払下規程の制定等が次々と実施された。さらに具体的奨励方針として共進会の開催奨励、畜産団体の活動促進等が取り上げられた。 このような背景の中、明治41年(1908年)に日本帝国ジェルシー種牛協会が他の登録団体に先駆けて発足をみた。これは、ジャージー種の改良発達を図り、会員相互の利益を増進し、海外ジャージークラブとの連絡を保ち、世界的協同一致の歩調をもって、本種牛の進化を発揮することを目的として設立されたもので、明治41年4月3日、東京府日本橋区偕楽園において開かれた発起会では、まず規約と純粋ジェルシー種牛登録規則を協議決定し、理事長に東京帝国大学農科大学教授獣医学博士津野慶太郎を選出、理事として東京愛光舎主角倉賀道(庶務)、及び東京阪川乳牛店主阪川霽(会計)を選んだ。また、このとき議決された事項は、東京府畜産会春期品評会に同会の趣旨を広告し、かつ品評会に出陳の優等なジャージー種牛に金銀賞牌を贈与すること、ただしこの費用は一切を合わせ金150円以内をもって支出すること等であった。 日本帝国ジェルシー種牛協会時代の10年間に登録した頭数は、牡牛が73頭、牝牛が213頭で、牝牛の県別頭数内訳は、東京105頭、長野89頭、ほか7道県19頭、このうち東京・角倉賀道・正道が75頭、長野・神津邦太郎が71頭の登録を行った。(登録団体の変遷) | |
中央畜産会発足 | |
また、地方の畜産組合連合会の組織の上にあって、その活動を取り纏め、畜産の指導奨励を行うものとして、大正4年7月に社団法人中央畜産会が発足した。中央畜産会の事業としては、乳牛の登録事業、講演、講習、出版等による畜産指導事業のほか、博覧会の開催などが取り上げられ、日本帝国ジェルシー種牛協会の全事業は中央畜産会の血統登録部へ併合された。さらに、戦時下の登録事業は中央畜産会の継承団体である帝国畜産会に昭和16年に引き継がれ、さらに別図のとおり団体名は変更したが、登録はそのまま継承された。大正7年8月から昭和23年7月までの登録頭数は、牡牛が78頭、牝牛が233頭であった。 | |
昭和・・・第2次大戦後の大量導入 | |
一方、第2次世界大戦後の被占領下の低迷期を迎え、主要食糧の増産と農産物の統制が強力に進められ、その中で農業の有畜化が取り上げられ、わが国畜産再建の途が開かれることになった。また、当時の連合軍の総司令部(GHQ)の指令により、全国農業会は解体され、乳用牛の登録事業については日本ホルスタイン登録協会の創立を見て引き継がれた。 この当時の飼料事情の悪化は、都市搾乳業から農地に根ざす農家酪農へと進み、乳牛頭数も次第に回復を見せ、昭和27年には酪農は戦前の水準まで回復をみせてきた。また一方、国民の体位の向上を図ることを目的とし、政府は第2次畜産振興10カ年計画(昭和27年3月)を樹立した。この計画は、乳牛の増殖に重点を置き、学童給食用の牛乳の国内充足と国民の食生活の向上を図るため、十年後に乳牛を百万頭に増やし、1千万石の牛乳を昭和36年度を目標として実現するいわゆる「10,100,1000計画」である。しかし、この計画実現のためには、国内産乳牛のみでの増頭は困難であって、計画数の約1割に当たる10万頭は国外から輸入した資源により増殖させる必要があり、さらに大量の濃厚飼料を輸入するに足る外貨保有量がなく、草地酪農に重点を置かざるを得ない状況であった。 | |
ジャージー種の選定 | |
そこで関係省庁において種々検討が行われ、結論としてはホルスタインの輸入は困難であり、乳牛資源、価格及び海上輸送能力等を勘案すれば、アメリカ、ニュージーランド及びオーストラリアにおけるジャージーが条件に最も合致した。さらに、ジャージーは今後のわが国の酪農振興上、草資源を利用した草地酪農の推進を図るためには、飼料の利用効率が高く放牧性に優れており、かつ気候風土の適応性が強く、扱いやすく、適地に集団的に飼うには最適であるということも大きな理由であった。 | |
導入地域選定 | |
そこで、政府はジャージー導入地域選定及び事業実施基準を規制した「集約酪農地域建設要領」を制定、さらに物品の無償貸付及び贈与等に関する法律ともいえる「乳用雌牛の貸付及び贈与等に関する省令」を制定した。これにより昭和28年からジャージーの輸入が開始されることになったが、ジャージーの国有貸付事業は、日高、根釧、十和田、岩手山麓、浅間八ヶ岳(山梨・長野)、富士、美作及び霧島の9道県、8地区に4,658頭が貸し付けられるにとどまった。このため、昭和31年度後期以降は農地開発機械公団のパイロットファーム開発事業の実行に伴う開発事業と併せ、ジャージーの輸入外貨資金を国際復興開発銀行(世銀)の借款により賄う機械公団輸入売却方式(長期低利融資)に切り換えられ、オーストラリアからの購入が行われた。その結果、前記の地区に秋田・北部鳥海、佐賀・天山、熊本・阿蘇を加え、12道県に12,434頭ものジャージーが35年度までの8年間に輸入され、配分された。 | |
日本ジャージー登録協会の設立 | |
政府のジャージーの輸入による国内飼養頭数の漸増に伴い、これに対応した改良について種々検討の必要が迫られてきたが、昭和31年8月10日、日本ジャージー登録協会の創立総会が開催された。これにより、従来日本ホルスタイン登録協会において暫定的に行われていたジャージー種牛の血統登録並びにこれに付随した業務を同会より継承することとし、ただし少額の経費をもって確実な登録を行うため、登録に関する一切の業務は日本ホルスタイン登録協会に委託して行うことになり、今日に至っている。 | |
泌乳能力 | |
ところで、政府が大量に導入したジャージーの泌乳能力はどの程度のものであったのだろうか。 集団的に導入された地域のほとんどにおいて、酪農経験のある地域は極めて少なく、ジャージーに対する知識・経験が十分でなかったこと、また、ジャージーの特性を活かす草地の獲得、放牧の仕方など十分な手が打たれていなかったこと等により、輸入当時の能力は低い評価を受けた。 | |
頭数の現状 | |
また、昭和38年、39年当時約2万8千頭まで増加したジャージーも昭和49年には1万頭を切り、昭和61年には3,858頭にまで減少していた。わが国の経済が鰻登りの如く上昇し、酪農業界全体も右肩上がりに伸びていたにも拘わらずジャージー種の減少が続いた背景としては、やはりホルスタイン種に比べて乳量が少なかったことなど上記の理由に加え、乳価の建て方や子牛の流通、牛肉の脂肪の色など幾つかの理由が考えられるが、ジャージー種の価値が見直されたのは戦後の大量導入以来40年、昭和から平成に年号が代わる頃まで待たなければならなかった。 | |
第1回全日本ジャージー共進会 (昭和43年10月10~13日) 岡山県川上村、出品頭数100頭 経産名誉賞:ヌガユールタンゼル 岡山県・進一出品 | 第2回全日本ジャージー共進会 (昭和59年9月14~16日) 岡山県川上村、出品頭数60頭 経産名誉賞:サンバレーマイルストンサニークイーン 秋田県・土田雄一出品 |
第3回全日本ジャージー共進会 (昭和12年11月2~5日) 岡山県灘埼町、出品頭数60頭 経産名誉賞:マジックチーフハイランド 長野県・前田勉出品 | 第4回全日本ジャージー共進会 (平成17年11月3~6日) 栃木県壬生町、出品頭数60頭 経産名誉賞:オセオラリメイクブリガデイアー 岡山県・美甘正平出品 |
平成22年09月20日 「検定成績優秀記録牛F偏差値上位牛」 ~都府県22年8月日証明分~ | |
平成22年09月20日 「牛検速報から」 ~平均乳量9,217㎏~ | |
このほど、家畜改良事業団から平成21年度乳用牛群能力検定成績速報が発表された。 | |
検定農家1万戸切る | |
表1には牛群検定農家戸数・頭数の推移と21年度の実施概況を示した。これによれば、平成22年3月末現在、全国では273組合、牛群検定農家戸数は前年より210戸減少し9,932戸となり、ついに1万戸を割った。これは牛群検定が昭和50年に開始されてから、草創期の数年間以降では初の1万戸割れである。 検定牛頭数は566,472頭で2年連続増加していたものが、今年は昨年より3,310頭減少した。検定農家1戸あたりの検定牛頭数は前年より0.8頭増えて57.0頭になった。 また、一昨年9月の世界的な金融危機以降、飼料の高騰と高止まりに対して、昨年は乳価が33年ぶりに2回も上がるなどの状況の中、検定農家戸数はこの4年間で最も低い減少に留まったが、検定牛頭数は大きく減少した。 地域別の検定農家戸数、検定牛頭数では、北海道が5,053戸で361,587頭(1戸あたり検定牛頭数7.66頭)、都府県は4,879戸、204,885頭(同42.0頭)であり、北海道は昨年より85戸、122頭減少した。また、都府県は125戸、3,432頭減少し、4年連続の減少となった。なお、1戸あたり検定牛頭数は概ね増加をした。 | |
鳥取県は10年連続検定牛普及率1位 | |
次に、検定普及率を見ると、20年2月1日付畜産統計の成畜飼養農家戸数に対する検定農家普及率では、北海道が67.3%、都府県は33.0%、全国平均では44.5%であり、いずれも前年を若干上回る普及率となった。また、都府県で50%を上回る県は昨年の7県から9県に増えた。 また、経産牛頭数に対する検定牛比率(普及率)では北海道が73.7%、都府県41.4%、全国平均は57.5%であり、北海道が2年連続で前年を下回る中、都府県での上昇によって全国平均は前年より0.4ポイント上昇した。また、都府県で50%を上回る県は昨年の13県から15県に増えた。 表2には、検定牛比率が50%以上の都府県を示した。普及率が最も高かったのは鳥取県で、検定農家比率と検定牛比率はそれぞれ71.0%、85.8%という高い値だった。特に、検定牛比率は都府県で10年連続1位となった。しかし、前年に比べそれぞれ1.6ポイント、3.2ポイントと大きく下降した。 このほか、検定牛普及率の高い都府県は鹿児島県(73.4%)、福岡県(72.8%)で、福岡県はワンランク上昇した。以下、宮崎県、愛媛県、熊本県、広島県の順で、西日本に高比率県が集中している。 また、前年よりもランクが上昇した都府県は福岡県のほか愛媛県が7位から5位へ、福井県が12位から10位などだが、福岡県や愛媛県では検定牛頭数は減っているが、それ以上に検定未加入牛が減っている。一方、検定牛普及率20%未満が6府県あり、最近は関係団体で普及推進に向けて誠意取り組んでいる。 | |
検定牛戸数頭数の増加は8県 | |
検定牛普及率が増加した場合でも、検定牛頭数の増加ではなく、実は分母の経産牛頭数が大幅に減ったことによる普及率の増加という現象が散見される。 表3は検定農家戸数と検定牛頭数が実際に増えた都府県を示した。その対象となる都府県は8県あった。そのうち最も農家数が増えたのは、千葉県(増加した検定牛頭数は399頭)、青森県(同379頭)、高知県(同77頭)の4戸で、検定牛比率ではそれぞれ都府県の38位、32位、20位であった。農家数、頭数ともに増えた県では、関係団体が連携して普及推進した成果が出たと考えられる。 このような時期、経営に直結する牛群検定への勧誘を、酪農家が真摯に受け止めたことで、このような結果に繋がったと思われる。 | |
全国平均乳量は過去最高 | |
表4には牛群検定成績(ホルスタイン種立会、305日、2回搾乳)の最近5年間と5年ごとの推移の実績を示した。平成21年次の全国平均乳量は9,217kgで、前年より70 kg増加し、牛群検定開始以来最高の乳量を示した。都府県は9,369㎏(前年より54kg増)と、これも最大の値であった。北海道は9,134kg(同81kg増)で、都府県が5年連続で北海道を上回った。 また、全国平均乳脂量も平成18年に並ぶ363㎏で過去最大の値を示した。 | |
検定の重要性の再確認を | |
牛群検定事業は酪農家における泌乳能力の向上や飼養管理面、経営面で非常に重要な役割を果たしている。しかし、特に都府県では規模拡大したため立会が面倒や、経費節減を理由に検定を中止したり脱退する農家も少なくない。諸外国の牛群検定普及率をみると、日本より酪農規模が大きい国では、オランダが85.1%(経産牛頭数が約142万頭)と最も高く、続いてドイツ83.8%(同約405万頭)、イタリア72.8%(同約181万頭)、フランス67.0%(同約390万頭)、カナダ66.5%(同約105万頭)となって、高い数値を示している。それは、儲かる酪農のため、そして牛群改良には検定が欠かせないと認識しているからである。 これらの成績は後代検定にも活用され、雄牛・雌牛の遺伝評価値が計算されている。最近では検定日モデル(テストデイモデル)という手法を使い、分娩後に以前よりも早く、正確に評価値が出てくるので、早期な後継牛を選ぶことが可能になってきた。 | |
平成22年09月20日 「鈴木牧場「タイタニック」がトップ」 ~乳用雌牛評価成績2010-8月~ | |
8月3日、国内雌牛評価結果が発表された。並み居る強豪のなか首位に輝いたのは北海道芽室町の鈴木進牧場の「タイタニック」が選ばれた。「タイタニック」×「マーシャルP149」の受精卵で誕生。NTPの6千台は1頭だけで、断トツの成績を叩き出した。同じ受精卵で20後検候補種雄牛「カカー」がいる。 2位の「ハーシェル」(北海道・五島順二牧場)は名門「ヒラリー」一族で、相変わらずの血統の強さを示している。祖母の「ヒラリー・ホワイト」は今回も堂々の25位に入り、妹の「プリンセス」は6位、「プレミアム」は8位に選ばれた。娘牛には7位の「オリーブ」と21位の「レンジ」がいるほか、孫には5位の「ブリッツ」、11位の「ストーリー」、13位の「トエイン」など、多くの系統牛が上位にひしめき合っている。 もうひとつ見逃せない系統が強豪「ジュディ」一族(北海道・石崎直牧場)。「マンフレッド・ジュディ」の娘には10位の「バーサ」、孫には前回1位で、今回3位となった「オング」と、その妹で9位「オードリー」、4位「フロスティン」、妹の15位「マリア」が君臨している。 都府県では、31位の兵庫県洲本市の小谷正子牧場所有の「セクシー・パラダイス」(ジェスロ×コンビンサー)が、都府県では常にトップの成績を収めている。84位の静岡県の大美伊豆牧場「パラダイス」(タイタニック×コンビンサー)と姉妹。 | |
「ヒラリー」一族 | 「ジュディ」一族 |
平成22年09月20日 「海外種雄牛「オリバー」がトップ」 ~乳用種雄牛評価成績2010-8月(参考情報)~ | |
8月17日、海外種雄牛評価成績結果が発表された。NTPでトップを飾ったのは「ルーク」×「アジソン」の組み合わせで誕生した「オリバー」が、+2,650で前回3位から1位となった。2位には新規の「ナイアグラ」、3位も新規の「ジャニュアリー」が選ばれた。前回トップの「シャーキー」は4位だった。また、ドイツの「ジャーディン」が前回11位から6位にランクアップした。 | |