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機関誌

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平成27年01月01日


平成27年01月01日「関東GC・EX牛誕生 次の目標は全共!」 ~千葉県立大網高等学校~
最近の各地共進会をみると、高等学校の奮闘ぶりが目覚ましい。昨年秋に開催された関東地区共進会では最高位賞に中之条高校(群馬)、未経産には那須拓陽高校(栃木)、九州連合共進会でも最高位賞は菊池農業高校(熊本)に輝いている。各県共進会でも、クラス1位を獲得した高校は14校を数える。管理技術は高く、牛作りの情熱は計り知れない。その中でも、近年メキメキと頭角を現している「千葉県立大網高等学校」の取り組みについて、同校の麻生友也教諭に紹介していただいた。
概要と沿革
千葉県は温暖な気候と肥沃な大地に恵まれ農業生産高では全国3位です。畜産物全体は、全国6位ですが、生乳の生産高は全国3位を誇ります。このように千葉県は農業が盛んな県です。
大網高校は千葉県のほぼ中央に位置する大網白里市に在ります。
当校は、1921(大正10)年に郡立山武農学校として開校。その後、県立山武農業高等学校になり農業教育を行ってまいりました。08年に、普通科高校の県立白里高校と統合し、農業科と普通科を併設する高校となり、校名を千葉県立大網高等学校と改称し、本年度で6年を迎えました。
校訓は「協調・創造」であり、学校教育の目標は、豊かな心と教養を身に付け、生きがいのある明るく豊かな生活と、社会を築くことのできる人間を育てるために
  • ①人や自然を慈しみ、お互いに励まし助け合う協調の心を持った人を育てる。
  • ②社会の一員としての規範意識を備え、物事に使命感をもって取り組む人を育てる。
  • ③深く探求して考え抜き、困難を克服しながら目標を達成する行動力を持った人を育てる
として、教育活動を推進しています。
生産技術科
設置学科は、生産技術科・食品工業科・農業経済科・生物工学科・普通科の5学科で、生徒数は710名です。
生産技術科では、「土がはぐくむ力・動物の生命力に感動」をテーマに、野菜・草花・果樹・造園技術・畜産を学び、これらの学習を通して食の安全や食糧生産・生命の大切さを学んでいます。
この学科で酪農を学ぶコースには現在2年生6名、3年生7名の13名が学んでいます。また、共進会活動は酪農部が行い、部員は酪農コースの13名と生産技術科の1年生4名の合計17名が日々活動しています。
学習部門
酪農部門で飼育管理している乳牛は全てホルスタイン種で飼育頭数は25頭(搾乳牛13頭、育成牛12頭)です。
牛舎は繋ぎ飼いでパイプラインミルカーを使用しています。牧草地は2ha余ですが、イタリアンライグラスを主体としたロールサイレージを作っています。
この環境を活用し、授業では酪農を学ぶ上で基本的な乳牛の生理生体、牛舎管理、牛体管理(コンディションの確認、給餌飼料の管理など)、繁殖管理(発情確認、人工授精技術、受精卵移植技術など)、牧草地の管理、衛生管理、搾乳などを学習しています。
共進会への参加
現在の姿があるのは、これまでの先輩方が乳牛の能力を高める改良や、日々の飼養管理を適切に脈々と続けてきた結果が今に繋がっています。
共進会に初参加したときは何事も手探りの状態でした。地域の酪農家の方々に教えを乞い、出品牛の管理や毛刈り、リードマンの心得など熱心に指導していただいたその技術は、先輩から受け継がれてきました。
共進会への参加は乳牛との信頼を作ることが大事で、少し離れた農場へもバスや自転車で移動し、牛との時間を大切にしています。給餌・搾乳・ブラッシングなどを通して信頼関係を築き、ハンドラーとしての技術向上を目指しています。そして、日々の努力の成果が近年表れてきました。
ミント号の活躍
その代表牛がサンノースターミント【写真上】です。ミント号の共進会デビューは10年3月の県B&Wショウ第1部への出品でした。結果は部門チャンピオンと未経産リザーブチャンピオンを受賞することができました。その後もミント号の躍進は続き、12年の県共で3歳級チャンピオンとベストアダー、その後の関東共進会でも経産名誉賞に輝くことができました。昨年の関東共進会では、経産準名誉賞を獲得しました。他にも2頭出品し、第4部チャンピオンになったインクス号【写真下】、第6部入賞のゴハン号と全て入賞することができました。



EX牛の誕生
ミント号は昨年の体型審査でEX(90点)をいただき、当校としては初めてのことで、生徒はもちろん教職員も大いに喜びました。
これらは、当校での改良や飼養管理が充実してきた成果と思います。この脈々と受け継がれてきた中で、乳牛の改良や飼養管理技術の向上はもとより、生徒の成長にも大きく影響しています。部員同士の絆や責任感、コミュニケーション能力の向上など普通の授業では得られない教育効果があると感じています。牛も日々成長していますが生徒も日々成長を遂げています。
地域に根ざした取り組み
文化祭では、学習活動の様子や学習内容を展示発表したり、当校で生産した牛乳から作ったジェラートを販売したり、搾乳体験などを行っています。特に搾乳体験は好評で、来校された方々は、初めての体験に子供から大人まで興味深くそして楽しく搾乳しています。
また、地域の小学校や特別支援学校の生徒さんとの学習交流会を行い、当校生徒が講師となり、牛の特徴や管理上の注意事項を簡単に説明した後、給餌や清掃、ブラッシングなどの酪農体験を行います。見たことはあるけど触ったことがほとんどない小学生は、驚きと感動に歓喜の声を上げ楽しく取り組んでいます。生徒はこの機会にコミュニケーション能力や物事を伝える能力を学ぶことが出来ます。
今後に向けて
今後の目標として、やはり北海道で開催される全共への出品です。それも高等学校特別枠での出場ではなく県内の予選を突破し、出場したいと思っています。それには、日々の飼養管理や出品候補牛の調教、リードマンの技術向上を徹底しなければなりません。生徒は先輩から後輩へ技術等の伝承を行い、これまで繋げてきた当校の酪農をより盛り上げてもらいたいと思っています。
また、酪農後継者の育成に力を入れていきたいです。現在、酪農を学んでいる生徒の中に酪農家の子弟は一人もいません。しかし、酪農や共進会活動に興味を持った生徒達です。是非、酪農に就農する生徒や酪農に関係する職業に就く生徒を輩出したいと思います。
学校は地域との繋がりなしには十分な教育はできないと考えています。授業では教えられない人間性や職業観を養わせるためにも地域の酪農家や卒業生など諸先輩の協力が必要です。地域・卒業生・学校が協力した生徒育成をこれからも邁進したい所存であります。