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機関誌

機関誌内容一覧

2019年01月01日号

栃木県立那須拓陽高等学校
~牛とともに生徒とともに~

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     2015年に開催された北海道全共では未経産、経産の2部門で1等賞を獲得し優秀な成績を収めた「栃木県立那須拓陽高等学校」。昨年の第9回全日本B&Wショウではクラス・学校ジュニアチャンピオンを獲得し、目まぐるしい活躍の同校の取り組みについて、冨山義和先生に紹介していただいた。

    第9回全日本ブラック&ホワイトショウ ウィナーズサークル

    都府県1位の酪農地帯で酪農業を学ぶ

    概要と沿革

     本校所在地である那須塩原市は栃木県北部に位置し、2005年に西那須野町、黒磯市、塩原町が合併し誕生しました。
     那須塩原市は畜産が盛んで、農業産出額の70%を畜産が占めています。中でも特に酪農が盛んで、生乳の産出額は全国第4位、本州以南においては第1位、乳牛飼養頭数約2万4000頭、酪農家数308戸と県内の生産量第1位、更に本州でも1位の酪農地帯です。
     本校は昭和20年に栃木県立那須農学校として開校し、26年に栃木県立那須農業高等学校と校名が変わりました。その後、数回の学科改変を経て、平成元年には栃木県立那須拓陽高等学校となり今年創立65年を迎えます。現在は食品化学科、農業経営科、生物工学科の農業科9クラスと食物文化科の家庭科3クラス、普通科6クラスからなり生徒数は718名です。本校は「耕学一如」「冷暖自知」の校訓のもと「自律」「創造」「奉仕」の教育目標を掲げ、文武両道を目指しており、部活動では陸上競技をはじめとする数多くの部活動で優秀な成績を収めています。

    全共は4大会連続出場

     本校の農場は、園芸作物が栽培されている大山農場と、畜産関係の乃木農場があります。乃木農場では、飼料作物を4ha(イタリアン、デントコーン)栽培し、乳牛41頭(経産19頭、未経産22頭)、和牛21頭(繁殖8頭、肥育8頭、育成5頭)の計62頭の牛を飼育しています。中でも、乳牛では共進会や体型審査に力を入れており、第10回千葉大会から第14回北海道大会まで4大会連続で出場しています(注:第13回は中止)。全日本ホルスタイン共進会北海道全共では未経産牛1部1等10席、経産牛8部1等1席に選んで頂きました。また、体型審査では過去に13頭のEX牛(最高92点)を輩出しています。

    カウサインと「キキヨウ」号の牛名板

    牛に信頼されるされる飼養者に
    農業経営科の3年間

    実習を中心に基礎から課題研究まで

     主に畜産を学習するのは農業経営科の生徒です。1年次は総合実習で2単位、2年次は畜産と総合実習で7単位、3年次になると専攻4単位、課題研究4単位学習します。3年次になると実習を中心に学習していきます。実習の内容としては、家畜飼養管理や、繁殖管理、和牛の肥育管理等の知識、人工授精や採卵、受精卵移植の見学、除角、去勢、分娩介助、搾乳などの技術の基礎を学べるようにしています。特に畜産専攻生は、課題研究の中で自分が特に学習してみたい課題を設定し、1年を通して取り組みます。今年は、デントコーンサイレージの生育調査、搾乳牛に対する乳酸菌の添加による糞の臭気の変化についてなどの課題に取り組みました。
     また、2年次夏のインターンシップに合わせて、希望者に対して北海道での酪農実習を約2週間実施しています。毎年、北海道酪農実習に参加した生徒の中から、牛に興味を持ち放課後牛舎に通うようになる生徒がいます。

    第9回全日本B&Wショウ クラス・学校ジュニアチャンピオン
    「タクヨウ キヤピタル ハツピ- キキヨウ」平28.06.04生
    (父:ゲイン)

    自主的な活動から部活動へ

     現在県内で畜産を学習できる学校は農業高校7校中6校ありますが、搾乳牛を飼育しているのは本校を入れて2校しかなく、畜産後継者、畜産業に就く生徒を育成することは大きな課題となっています。農業経営科の生徒で酪農後継者は各学年3名程度と年々減少していますが、動物が好き、牛が好きという生徒が放課後自主的に農場に来て給餌をしたり、調教したりと活動しており、今では部活動として牛部を立ち上げて活動しています。
     活動内容は、牛の飼養管理を学習しながら、共進会に牛を出品して上位入賞を目標に毎日活動したり、地域の畜産フェアでの搾乳体験参加などが中心です。共進会が近づくと出品する牛を選定してリードする生徒に共進会までの間、責任を持って管理させています。牛を洗ったり、歩行運動させたり、調教したりと牛と接する時間が長くなるほど責任感が強くなり、牛に対する気持ちもより一層深くなると思います。共進会にあたっては、リードする技術は必要ですが、それよりも牛にどれだけ信頼されるパートナーになれるかということが重要になってくると思います。中には牛が思うように歩いてくれずに苦労する生徒もいますが、牛部の生徒みんなで助け合いながらお互いのレベルが向上するように日々切磋琢磨しています。
     現在の牛部は、各共進会に精力的に出品していますが、中でも第17回関東地区ホルスタイン共進会(茨城)で未経産名誉賞、今年度4月に静岡で開催された第9回全日本ブラック&ホワイトショウに第5部タクヨウ キヤピタル ハツピー キキヨウ号を出品しクラスチャンピオンと学校ジュニアチャンピオンを獲得することが出来ました。

    牛部の生徒とキキヨウ号
    (静岡県 御殿場市馬術・スポーツセンター)

    牛への興味を大切に

     部活以外でも畜産を学習する生徒達は動物が好きな生徒ばかりではなく、苦手な生徒も少なからずいますが、私は生徒全員が牛に対する興味関心を持ってもらえるような授業を展開するように心がけています。
     しかし、現実的にはなかなか難しく、毎日が試行錯誤の繰り返しです。

    3つのねがい

     私は、畜産を専攻する生徒に対する願いは3つあります。1つ目は、専攻生全員が牛を好きになってほしいということです。初めは牛が大きくて怖いとか臭いとか感じる生徒であっても、毎日の世話を経て牛のかわいさや魅力を感じて牛を好きになって卒業してもらいたいと思っています。
     2つ目は、共進会や地域のイベントなどを通じて人との繋がりの大切さをわかってほしいということです。共進会やイベントに参加すれば、地域の人たちとの関わりが多くなります。そのときに、地域の人たちに助けられながら物事に取り組むことで、協力することの大切さを学ぶことが出来ます。一人で出来ないことも仲間と協力すれば出来るということを学んでもらいたいと考えています。また、共進会には多くの酪農家さんが集まります。将来の酪農後継者にとっては地域の先輩方との交流がもてる良い機会だと思います。
     3つ目は、どんな実習をしていても、その実習の意味を考えながら実習に取り組んでもらいたいということです。例えば、除糞、牛洗い、牛舎掃除などの実習も牛の立場に立ってきれいになって気持ちいいと人間が感じるように行えば、牛も同じことを感じるということを実感してほしいと考えています。

    地域イベントに参加

    牛が好き 全共目指して

     現在入学してくる生徒は非農家がほとんどですが、私は「牛が好きかい?」と生徒に問いかけたとき「大好きです」と答えてくれる生徒を少しでも多く育てていきたいと考えています。牛が好きならば、畜産関係の仕事に就きたいと思う生徒も増えると思いますし、動物に対して優しく接することの出来る人は、人を思いやることの出来る人だと思います。後継者の生徒は、一生の仕事として酪農経営を選択する中で、牛が好きなら牛側にたった考えのもてる経営が出来ると思います。
     これからも那須拓陽高校は、牛を通じて共進会や地域交流に積極的に取り組み、第15回全日本ホルスタイン共進会の出場&上位入賞を目指し日々牛とともに成長していきたいと思います。

    第14回全日本ホルスタイン共進会
    (北海道 北海道ホルスタイン共進会場)

謹賀新年

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