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機関誌内容一覧

2021年07月20日号「日本ホル協特集号」

4面

コロナ禍で第15回全共中止 2年度は血統登録や審査頭数減少
日本ホル協第71回総会

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     一般社団法人日本ホルスタイン登録協会(前田勉会長)は6月25日、第71回通常総会を書面決議方式で開催し、令和2年度事業報告・収支決算、令和3年度事業計画・同収支予算、会費徴収方法等について原案のとおり可決承認した。令和2年度はコロナ禍で第15回全共を中止したほか、特に都府県において体型審査頭数の大幅な減少が見られた。
     令和2年度事業では、全国の会員数は、酪農家戸数の年々の減少に伴って、1万684名、前年度実績比95.4%であった。また、日本ホル協の主幹事業である登録事業では、コロナ禍の影響を大きく受け、血統登録申込頭数は全国で21万7388頭(前年度比95.7%)に留まり、前々年までの3年連続増加から減少に転じた。

    都府県体型審査 前年度の64%に

     体型審査では、特に都府県の前期審査において、半数以上の都府県で農家巡回ができなかったことや受検を中止する農家が相次ぎ、年間の実績でも前年度対比64.0%と大幅な減少となった。
     このほか、昨年10月末に宮崎県で開催予定だった第15回全共九州・沖縄ブロック大会の開催中止をはじめ、通常総会や理事会も書面やウェブでの開催、夏期に都府県5ブロックで開催している地区別登録委員研修会等も中止するに至った。調査研究では、国等の助成事業により、2年度からの新規事業として疾病データとゲノミック情報等利用による耐病性指数開発のためのデータ収集と分析、継続事業では後代検定体型調査、泌乳や体型の遺伝評価に必要な血縁ファイルの提供、ロボット適合性指数の開発等の検討を行った。

    3年度血統登録は21万7千頭見込む

     令和3年度もまた、コロナ禍の中で登録推進に苦慮することが予想されるが、酪農経営の基礎となる乳用後継牛をより多く登録に結びつけるため、申込書不要で登録書の早期発行、料金割安な自動登録の推進を行う。
     調査研究では、前年度に引き続き、疾病データとゲノミック情報等による耐病性指数の開発と総合指数、長命連産効果の見直し、ロボット適合性指数の開発、後代検定体型調査等の実施、登録された血統情報を利用して、強い近親交配の回避や遺伝病の発現防止に努めるほか、Webサイトやスマートフォンによる情報提供の充実を図る。
     3年度の血統登録申込頭数は全国で21万7650頭、移動証明は4580件を見込む。また、審査成績証明及び検定成績証明はそれぞれ2万6170頭、7万2375件を見込む。

    登録事業は 7千万円余減収

     令和2年度の収支決算(下表)では、登録事業からなる実施事業会計の経常収益合計は11億8645万円で元年度に比べて7294万円の減収となり、経常費用合計12億1217万円を差し引いた正味財産増減額は2571万円の赤字決算になったが、その他会計(ホルスタイン会館賃貸事業等)と法人会計を合わせた総合計では、税引後正味財産増減額は2966万円の黒字を保持した。
     また令和3年度収支予算では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による登録等頭数の伸び悩みが予測され、支出節減を図るものの、実施事業会計の正味財産増減額では6608万円の赤字を見込んでおり、登録等実施事業の赤字をその他会計で補填していく等、厳しい財務状況が続くことが予想される。

コロナ2年目 今年は登録挽回の年に
一般社団法人日本ホルスタイン登録協会 会長前田勉

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     日本ホルスタイン登録協会会員の皆様には、日頃よりホルスタインの登録推進にご尽力をいただき、心より感謝申し上げます。
     新型コロナウイルスは多数の変異株と相俟って、その感染力は一向に衰えを見せません。日本でもようやく待望のワクチン接種が順々に普及していますが、東京オリ・パラリンピック開催を目前に控え、コロナ2年目の夏もさらなる感染拡大が心配されるところです。
     さて、昨年度の全国・生乳生産量は2年連続の増産となり、北海道では過去最大の生産量を記録し、都府県でも8年ぶりに増産に転じました。
     その中にあって、昨年度の当協会事業はコロナ禍の影響を大きく受け、血統登録申込頭数は北海道、都府県ともに前年度実績を4~7ポイント下回りました。また、都府県の体型審査は、特に前期牛群審査において半数以上の都府県で審査巡回ができなかったことから、年間の実績でも前年度対比64.0%と大幅な減少になりました。
     また、「第15回全共」の中止決定や通常総会、理事会等も書面やウェブ開催、各種研修会等も中止となり、当協会としましては思うような登録推進活動ができずに、大変悔いの残る1年でした。
     ところで、従来からの血統登録申込は申込書作成や人工授精証明書の添付が必要ですが、昨年のコロナ禍の中、外出自粛等で登録委員が現場に出向く機会が制限されたことで、申込書や授精証明書の整備・提出が遅延した事例があった一方で、自動登録は申込書不要で授精報告と出生届だけで登録できることから、登録の停滞や漏れもなく、しかも登録書の早期発行と料金割安な面からも、コロナ禍下でもより有効な登録手段として前年度並みの実績を残すことができました。
     今年度は自動登録の一層の普及定着を進めるとともに、強い近親交配の回避と遺伝病の発現防止、SNP検査とゲノミック評価値の利用拡大、Webサイトやスマホによる情報提供の充実を図ります。また、搾乳ロボット適合性指数の開発や疾病データ等利用による耐病性指数の開発を行う等、登録挽回の年にしたいと考えておりますので、会員の皆様には引き続き、登録事業への一層のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
     最後に、今夏も厳しい暑さが予想されますが、熱中症と新型コロナウイルス感染症に対して、自身やご家族等の健康には十分に留意され、ますますのご活躍を祈念いたします。

新規高得点牛紹介 「ライオネル」93点獲得 群馬県遠坂牧場

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    EX93-3E ライオネル

     令和3年6月に実施した群馬県の前期牛群審査において、太田市の遠坂和仁牧場の「OK タイガーウツズ ライオネル ET」(平成26.9.10生、5産、父:メープルダウンズアイ G W アツトウツド ET)が高得点93点3Eに評価された。
     本牛は北海道清水町大久保大輔牧場で生産されたあと、遠坂牧場に移動してきた。前回令和2年7月(5歳10月、4産)の審査で92点2Eと評価されているが、令和2年12月に6歳3月で5産目を分娩し、今回の体型審査を受検した。今春開催された北軽井沢スプリングショーでは、見事経産グランドチャンピオンに輝いている。
     先般の体型審査での各部の配点は、体貌と骨格92点、肢蹄91点、乳用強健性93点、乳器94点。特に体型的特徴を挙げるならば、体長があり、首は薄くきこう部はよく締まり、乳用性に富んだ牛であった。また、肢蹄は輪郭鮮明で、乳房については前後の付着が強く、後乳房は幅が広く底面も高い。搾乳後もよく収縮する乳房であった。泌乳面では検定回数4回、検定日数1211日で総乳量4万5048キロ、乳脂肪量2001キロ、乳蛋白質量1477キロを記録している。そして、体型や泌乳だけでなく繁殖も良く、今回5産目であるが1年1産をしていて、2産目から毎年12月に分娩をしている。遠坂牧場の飼養管理の良さが1年1産に繋がっている。今後のより一層の活躍を期待したい。

    OK タイガーウツズ ライオネル ET 2014.09.10生(父:アツトウツド)
    群馬県・遠坂牧場所有

    EX95-6E リコ ダツチ

     遠坂牧場の代表牛といえば、「リコダツチ」(平成22.3.31生、8産、父:ゴツドフレイラテイチユードET)が挙げられるが、またもや快挙を達成した。今回の審査で本牛は3度目の都府県最高得点95点を獲得し、北海道上川郡清水町の大久保牧場飼養の「ライオネル」に並ぶ日本最高記録となる95点6Eと評価された。
     日本ホル協では平成29年4月よりEXに評価された牛が再度90点以上に評価されたときには、長い期間にわたって優れた体型を維持している証として、審査得点に「2E」等の「E」表記を実施して、EXの付加価値を高めるとともに、体型審査の推進を図ってきた。本牛は平成26年に初めてEXに評価され、今回の95点獲得で都府県初の6E牛となった。また泌乳能力にも優れていて、7産終了時点の生涯乳量は9万キロを達成しており、10万キロ突破が期待される。
    写真提供デーリィマン社

    フアイン リコ ダツチ 2010.03.31生(父:ラテイチユード)
    群馬県・遠坂牧場所有

SNP検査 耳片試料可能に

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     (一社)家畜改良事業団はSNP検査用試料として、耳片試料を取り扱うことを発表した。
     これまでSNP検査用試料としては主に毛根が取り扱われてきたが、検査には約80本の毛根が必要とされるため、試料の採取に手間がかかる点が指摘されていた。耳片は専用の器材を用いれば、簡便に試料の採取が可能となる。なお耳片採取器材は配布ではなく、販売業者より購入する必要がある。
     耳片試料の取り扱いは本年7月1日より開始となるが、毛根についても引き続き試料として取り扱われる。詳細は家畜改良事業団Webサイトを参照のこと。

    家畜改良事業団Webサイト

5面

ホ種登録事業110年(その3)
大きな変革、自動登録とゲノム 長命連産や耐病性改善への新たな挑戦も

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     平成10年代以降は、乳牛改良や登録事業において大きな変革の時代に入った日本ホル協はBSE対策で義務化された10桁耳標番号をいち早く登録に取り入れ、ホ種・種系登録を一本化し、自動登録を開始した。さらに20年代のSNP検査とゲノミック評価は、長命連産性の延長や遺伝病回避、疾病予防等、新たな育種改良の時代を開いた。

    斑紋から耳標へ自動登録始まる

     平成12年には家畜個体識別事業のモデル実施によって北海道や秋田県で耳標装着が始まった。日本ホル協では登録取扱要項を設けて耳標番号による血統登録を開始し、これが「自動登録」の先駆けになった。
     13年のBSE対策で耳標装着が全国的に緊急整備されたことから、翌14年には雌牛の10桁耳標番号を公式の登録番号として認め、個体確認方法も従来の斑紋から耳標番号に切り替えた。これを機に血統登録と種系登録を一本化し、併せて、自動登録を本格スタートさせた。登録書には拡大4桁番号と血統濃度%を掲載し、遺伝病(BLAD、CVM)等の保因状況について表示を開始した。

    家畜改良DBと自動登録の普及

     昭和63年からスタートした家畜改良体制整備事業では、家畜登録の一体的運用システムの構築と、中央と地方の改良関係業務の連携強化が進められた。また、後年には登録データ等を一元管理する家畜改良データバンク(DB)が構築され、平成16年にはこのDB事業によるWebサイトを開設し、血統検索や近交回避、系統譜、雌牛の高得点、高能力等の記録を容易に閲覧できるようにした。
     16年以降、自動登録は家畜個体識別センターの出生報告と家畜改良DBに蓄積された授精報告利用によって、都府県でも徐々に普及していった。18年からは家畜改良事業団の協力を得て、牛群検定繁殖情報を利用できるようになり、検定農家での自動登録を誘引する形となった。
     それまでは年間20万頭を下回っていた血統登録頭数だったが、血統・種系登録の一本化や自動登録開始によって、16年以降は再び年間登録頭数20万頭以上を確保できるようになった。

    高校生参加と後検展示で新たな全共

     平成17年には栃木県壬生町で第12回ホルスタイン全共と第4回ジャージー全共が並行開催された。「折り牛」や手作りミュージカル、高校生によるボランティア等、栃木県民の手作り参加型の全共としても大きな共感を呼んだ。また、後代検定済種雄牛の娘牛展示や高校からの出品奨励、牛乳・乳製品消費拡大のPR活動等、新たな試みが実行された。
     しかし、5年後の平成22年の第13回北海道全共は4月の宮崎県での口蹄疫発生で開催を1年延期し、さらに翌23年3月に発生した東日本大震災と福島第一原発事故のため全共開催は中止された。
     北海道は次の第14回全共開催を受諾し、平成27年10月には過去最多となる380頭の出品と北海道出品牛のレベルの高さを強く印象づけた全共となった。また、後代検定娘牛4クラスが新設され、計画頭数を大幅に上回る出品があったことや、全国26の高校から32頭の出品と高校生リードマンコンテスト、ジャジングスクール等、若い後継者や学生たちが会場を大いに盛り上げた。

    北海道で開催された第14回全共。後検4クラスや高校出品奨励等で盛況だった(平27)

    SNP検査とゲノミック評価

     話を平成20年代前半に戻す。世界主要国では、牛のDNAにあるSNPと呼ばれる塩基配列を検査し、早期に遺伝能力を推定する「ゲノミック評価法」が急速に普及した。
     24年にカナダ・トロント市で開催された第13回世界ホルスタインフリージアン会議では、「ゲノム革命」と題して6か国からゲノムの最新状況が報告された。世代間隔の短縮やヤングブルの急増、ハプロタイプによる遺伝病回避等、大変興味深い話題で終始した。わが国でもゲノミック評価法を採用するため、25年には国と乳牛改良関係機関が協力し、日本ホル協がSNP検査受付及び同データの管理業務を開始し、検査を家畜改良事業団に委託した。同年11月には家畜改良センターから国内初のゲノミック遺伝評価値が公表開始された。
     日本ホル協ではゲノミック評価に必要なSNP検査を普及するため、28年から自動登録同時SNP検査申込を実施し、対象牛の登録料を半額返付する等の奨励策を行っている。

    カナダから開催された世界ホルスタイン会議では、各国からゲノムの現状が報告された(平24)

    血統登録通算1千万頭超える

     平成26年には、明治44年の日本蘭牛協会による登録事業開始から103年目で血統登録累計頭数がついに1千万頭を超えた。
     30年には、平均近交係数の上昇に対する現状調査を実施し、強い近縁交配を避けることを前提として、近交係数上限値をそれまでの6.25%から7.20%に引き上げた。
     また、近年の家畜改良増殖目標では、泌乳能力とともに肢蹄や乳器等の改良による経産牛の供用期間延長と受胎率の改善が提唱されるようになった。これを受けて、日ホ協では29年から3年間、長命連産性向上のための事業を実施し、生産寿命延長のための「推奨発育値」の公表と「体のサイズ指数」、「肢蹄指数」を開発した。さらに後継事業として、令和2年からは疾病データとゲノミック情報を無利用して「耐病性指数」の開発に取り組んでいる。

    終わりに

     現下のコロナ禍で昨年は第15回全共九州・沖縄大会が中止、各都道府県の共進会も殆ど中止、体型審査も中止した都府県も多かった。過去には当たり前のことがコロナによってすべて当たり前でなくなってしまった。一方、SNPやゲノミック情報によって新たな遺伝病や繁殖・疾病等の遺伝評価の信頼度も改善され、これから先もさらに進化した改良手法が開発、実用化されるだろう。
     生産現場により有効な情報を提供していくことは日本ホル協を含めた改良関係機関の仕事であるが、その情報をいかに活用していくかは現場の技術員と改良の主役である酪農家に他ならない。昭和35年発刊の日本ホル協会報に「理想の牛は程遠し」と題して、「改良の実際にあたる人は飼養者であるから、その人が自分の牛の改良目標をどこに置いたら良いかをしっかりと掴んでいなければ、本当の改良は進まない」と。60年が経った今日も、否、将来においても変わらない提言である。
    (完*その1は1月20日号、その2は3月20日号掲載)

登録頭数4年振り減少 EXは増加逆境でも改良は続く

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    令和2年度における都府県別各申込状況を表1に、また直近10年間の各種申込件数の推移を表2に示しました。昨年度の都府県の血統登録数は4万4656頭で、前年度比93.5%と4年振りの減少に転じました。減少に転じた理由として新型コロナウイルスの影響で登録業務が十分にできなかったこと等、様々な要因があると思います。一方で人の移動を介さない自動登録での登録頭数は3万526頭と減少幅が小さく、行動が制限されたコロナ禍においても有効な登録方法と言えるでしょう。
    酪農情勢を取り巻く情勢は変わらず厳しい状況ですが、これからも性選別精液の利用や、ゲノミック評価の活用等により、効率的な乳用雌牛の生産を続けてほしいと思います。
    会員数は4811名と前年度比95.0%と減少しています。移動証明は自動登録の普及拡大に伴い、毎年減少していましたが、前年度比103.5%と増加しました。現在、自動登録は全体の68.3%となり、昨年度よりもシェアが増加しております。
    表1の右列、自動登録実施状況ですが、昨年度都府県で自動登録を実施している農家は1961戸でわずかに増加しました。昨年度に自動登録を開始した酪農家は63戸ありました。毎年自動登録を実施する農家が増えている一方で、何らかの理由により自動登録を中止している農家も少なくありません。日本ホル恊ではこれからも自動登録の普及推進に努めてまいります。各県において自動登録の普及推進の研修会等が開催されておりますが、要望があれば説明会等で担当職員を派遣して説明をさせていただきますので、その際には日本ホル恊までご連絡ください。また、新型コロナウイルス感染症の対策としてWebでも対応させていただきます。

    EX牛は310頭

    審査成績は6017件で、元年度より大幅に減少しました。牧場に訪問する審査業務は血統登録以上に新型コロナウイルス感染症の影響は大きいものとなりました。その一方で明るい話題もありました。EXと評価した牛は元年度より31頭多い310頭でした。平成29年に制定されたEX-E制度により、分娩更新して審査を受検し、複数回EXに評価された2E以上の牛は元年度よりも27頭少ない122頭で、初めてEXに評価される牛が多い1年となりました。体型に優れた牛が増えているのは、これまでの改良の賜物と言えます。昨年度のEX獲得牛を都府県別に見ると群馬県が46頭と最も多く、次に岩手県34頭、長野県24頭、栃木県22頭でした。複数回EX牛は、岩手県が20頭と多く、次に群馬県18頭、長野県と熊本県の11頭でした。
    検定成績証明は4196件で103件減、前年度比97.6%となりました。令和元年から開始しました登録情報活用システム(通称RIUS・ライアス)では、血統能力証明書では表示しきれなかった血統情報や歴代の審査成績などをパソコンやスマートフォンで閲覧できます。すでに使われている方もおられると思いますが、すべての農家が閲覧はできません。自動継続によって検定成績証明書を取得している酪農家が対象になります。日々アップデートが行われ機能が向上している本システムの導入を一度検討してはいかがでしょうか。

    改良を通じて前進を

    新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、先行き不透明であった昨年より着実に世界は前進しています。また本紙が皆様のお手元に届くころには1年延期されていた東京オリンピックが開催されています。厳しい酪農情勢の中ですが、我々も一歩一歩前進出来るよう、日本ホル恊においても牛群改良の基礎となる血統登録を推進し、遺伝病予防や近親交配を回避するための情報提供、また体型審査および検定証明による高能力牛の選定を行い、酪農の将来を支える取り組みを今後も行っていきます。

6面

ジャージー種の新たな遺伝的疾患 JNSとは

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     米国ジャージー登録協会(AJAC)は昨年11月に新たな遺伝的疾患としてJNS(前肢捻転を伴うジャージー神経障害)を指定した。
     JNSは劣性遺伝病であり、発病個体は起立が困難になるなどの神経症状を呈するが、現在日本国内でこのような症状についての報告は上がっていない。原因遺伝子は既に特定され、6番染色体上のUCHL1遺伝子の突然変異によるものと明らかになっている。
     JNSのキャリア種雄牛は既に国内に流通している。米国ジャージー登録協会が公表したJNSの保因種雄牛リストと国内ジャージー登録雌牛を照合したところ、それらの種雄牛由来の娘牛が多数いることが確認された (表1)。
     次に、父牛および母方祖父牛(MGS)のJNS遺伝子型の組み合わせ別に、娘牛の除籍月齢と近交係数の平均値を算出した(表2)。父牛およびMGSがともにJNS保因している場合、娘牛の除籍月齢は、その他の組み合わせと比較して早い傾向にあった。この結果には、JNSを発症し早期に淘汰されたことが影響している可能性がある。また、父牛およびMGSがともにJNSを保因する組み合わせでは、近交係数が顕著に高くなる結果となった。
     JNS遺伝子の保因の有無は遺伝子型検査およびハプロタイプ(SNP)で調査可能であるが、国内ではそれらの体制が整備されていない。したがって、現状は公表された供用済JNS保因種雄牛(JNSC)を把握すること、そして保因種雄牛を忌避したことによる限られた種雄牛での交配に伴う近交係数の急激な上昇を防止することが必要となってくる。

    JNS発症牛(ジャージージャーナルオンラインより)

生涯乳量都府県令和3年4~6月 1位「デイアナ」 栃木県小針勤さん

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     令和3年4月から6月に都府県で検定成績証明されたものの中から、表には生涯乳量5万キロ以上を示した。今回は4頭が総乳量(M)10万キロを突破した。

    1位小針勤さん(栃木県)

     今回の1位は小針勤さん(栃木県)の「ビクトリア ハンナ カーニー デイアナ ET」の検定回数7回で検定日数3210日、M12万1026キロ、総乳脂量(F)4446キロ、平均乳脂率(F%)3.7%、総乳蛋白質量(P)3777キロであった。これは栃木県内で歴代8位、また乳脂量においては県内歴代5位の記録となる。本牛は北海道紋別市の永峰牧場から導入された牛で、母牛も生涯乳量13万5179キロという素晴らしい記録を残している。また、5頭いる娘牛のうち2頭は決定得点88点と87点を獲得しており、体型面でも優れた遺伝子を伝えている。

    2位中村隆幸さん(岩手県)

     2位は中村隆幸さん(岩手県)の「ラビアンローズ ウイーブルツフ エモリー ジヨーダン」の検定回数7回で検定日数2826日、M11万2976キロ、F3424キロ、F%3.0%、P3483キロであり、岩手県内で歴代15位の乳量を記録した。本牛は6世代前に同県近郷の山下牧場から導入されたほか、娘牛も5頭分娩しており、長い間にわたって同牧場を支え続けているファミリーになっている。

    3位新海益二郎さん(長野県)

     3位は新海益二郎さん(長野県)の「ラツキーマーシユ チルダ MJ」の検定回数8回で検定日数2596日、M10万6790キロ、F4336キロ、F%4.1%、P3345キロであった。こちらは県内9位の記録となる。本牛は10歳で8産と繁殖もよく、3産以降乳量をコンスタントに1万2000キロ以上生産している。決定得点も同牧場に導入された母牛と共にEXを獲得している。
     4位は(農)新林牧場(秋田県)の「シヤインズヒル ベール デキスター」の検定回数11回で検定日数3655日、M10万6573キロ、F4134キロ、F%3.9%、P3305キロで、こちらは同牧場所有の「シヤインズヒル ロー オーラ」のM9万2074キロの記録を超し、県内2位の成績となった。
     また3位の新海さんをはじめ、松島太一さん(熊本県)、佐藤俊さん(宮城県)、石川和博さん(静岡県)、吉田仁治さん(新潟県)、(株)ブルーバンブーファーム(埼玉県)、(株)GRFホルスタインズ(岩手県)、中六角保広さん(岩手県)、伊藤博さん(千葉県)、荒井健文さん(栃木県)は90点以上を獲得しており、体型においても優れた成績を残している。

新人紹介

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    総務部総務課 齊藤菜見子

     この度7月1日付けで採用され、総務部総務課に配属となりました齊藤菜見子(さいとうなみこ)と申します。
     私は青森県五所川原市のりんご農家に生まれました。祖父母がりんごの他に米や野菜全般を作り、ウサギやニワトリを飼って、りんごの木にブランコを作ってもらうという自然いっぱいの中で育ちました。
     学生時代まで過ごした地元の時間とちょうど同じ時間を東京で過ごしております。徒歩で通勤できる距離に住んでおり、2018年派遣社員としてご縁があるまで近所に酪農の会社があることを知りませんでした。酪農業界については未知でしたが、朝に夕に毎日牛乳を飲んでいるので自分の好きな物の業界に携われることが嬉しいです。
     現在総務課で請求書の発行業務や会員さんの登録業務などを担当しております。これからも当協会の一員としての自覚と責任を持ち、円滑な業務遂行に努めるとともに、日々勉強の気持ちで皆様のお役に立てるよう精進して参りたいと思います。
     今後ともご指導のほどどうぞよろしくお願いいたします。

    事業部登録課屋根下尋美

     7月1日付けで採用され、事業部登録課配属になりました屋根下尋美(やねしたひろみ)と申します。
     出身は食いだおれの街・大阪です。東京に上京してから、飲食・事務・販売・営業など、いろいろな仕事をしました。当協会には派遣会社から牛に関わるお仕事と紹介され、そんな仕事もあるんだなとビックリしました。最初の仕事は事業部調査課で、全酪新報に掲載されているホルスタイン広場の作成補助や当協会のWebサイト管理、雑誌社への審査や検定記録などの提供などを行っていました。初めてのことばかりでしたが、共進会という牛の美人コンテストの存在が1番驚きでした。コロナ禍でなかなか共進会は開催できませんが一度は本物の牛を見てみたいと思っています。また、業務に携わってから、乳製品をよく食べるようになりました。
     現在は、皆様から送られてくる申込書の整理や発送準備などを中心に証明書の作成をしております。1つ1つ積み重ねながら出来るようになるように努力して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

7面

令和2年度 審査成績優秀牛群

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     日本ホル協では、審査頭数によって10~29頭、30~49頭、50頭以上の3クラスに分け、それぞれ平均体型偏差値の上位10牛群計30農家を表彰した。表彰にあたり50頭以上クラスを除き、受検率70%以上が表彰条件となっている。
     審査頭数10~29頭クラスでは19戸が対象となり、その中で一昨年度1位であった佐野茂樹さん(岩手県)が審査頭数12頭(受検率75.0%)、平均得点88.1点、平均体型偏差値172.0で2年ぶりに第1位を獲得した。
    審査頭数30~49頭クラスでは15戸が対象となり、その中で1位だったのは古川豪樹さん(佐賀県)で、審査頭数37頭(受検率75.5%)、平均得点86.7点、平均体型偏差値160.2であった。古川豪樹さんはこの部門では平成24年度から9年連続してのトップ獲得となった。
     審査頭数50頭以上クラスでは16戸が対象となり、その中で昨年度2位だった鈴木稔さん(岩手県)が審査頭数51頭(受検率72.8%)、平均得点86.6点、平均体型偏差値152.5で第1位に輝いた。
     令和2年度の審査成績優秀牛群表彰農家を紹介したが、表彰者個々の改良意欲の高さと、日々の管理技術の向上に取り組む姿勢に敬意を表するとともに、今後のさらなる発展に期待したい。

令和2年度都府県 年型別検定成績優秀牛

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     令和2年度都府県での検定成績優秀牛として、表に延べ32頭をまとめた。昨年度は日本記録、都府県記録の更新はなかったものの、都府県歴代2位3頭を含む多くの優れた成績が記録された。
     乳量では、佐藤俊さん(宮城県)所有の「デイフエンド ブツケム ルーマー」が2.5年型305日で、眞嶋大輔さん(栃木県)所有の「スノーライト スーパーステイシヨン スター」が4年型305日で、同部門の都府県歴代2位の記録を獲得した。また表中で最大の乳量となったのが(株)荒木牧場(熊本県)所有の「ポートレート レガリア コール」で2万1300キロとなっており、これも4.5年型365日検定で都府県歴代2位の記録となっている。
     乳脂量では、新永文治さん(熊本県)所有の「グランデイール モーグル メモリー」が4年型305日で、五味英介さん(長野県)所有の「エリツクフアーム CP リリーサ レイ」が2年型365日で同部門都府県歴代記録の4位となっている。表中最大乳脂量は(独)家畜改良センター(福島県)所有の「WHG デイー シヤマス マーリ ET」が800キロ、乳脂率は5.3であった。

    優秀牛最多所有者は改良センター

     優秀牛の所有者に目を向けると、(独)家畜改良センター所有牛が14部門、次いで、五味英介さん所有牛が5部門、(株)荒木牧場所有牛が4部門でトップとなる優秀な成績を収めている。

都府県支部・団体表彰 拡大・普及推進に貢献 宮崎県など表彰

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     日本ホル協では会員拡大や血統登録の推進、自動登録の普及や審査の普及推進に貢献している各都府県支部・承認団体を表彰している。

    ◇会員拡大推進団体

    【優秀賞】宮崎県経済農業協同組合連合会
    【優良賞】熊本県酪農業協同組合連合会、鹿児島県酪農業協同組合
    【努力賞】全国農業協同組合連合会青森県本部、福島県酪農業協同組合、岩手県支部、大山乳業農業協同組合、愛知県酪農農業協同組合

    ◇自動登録普及推進団体

    【殊勲賞】(一社)福井県畜産協会
    【敢闘賞】石川県酪農業協同組合、京都府支部
    【努力賞】新潟県酪農業協同組合連合会、東京都酪農業協同組合、愛媛県酪農業協同組合連合会、宮崎県経済農業協同組合連合会、広島県酪農業協同組合

    【殊勲賞】大山乳業農業協同組合
    【敢闘賞】(一社)福井県畜産協会、大阪畜産農業協同組合
    【努力賞】鹿児島県酪農業協同組合、(公社)山口県畜産振興協会、秋田県支部、おかやま酪農業協同組合、愛知県酪農農業協同組合

    ◇血統登録普及推進団体

    【殊勲賞】新潟県酪農業協同組合連合会
    【敢闘賞】宮崎県経済農業協同組合連合会、(公社)群馬県畜産協会
    【努力賞】酪農とちぎ農業協同組合、(一社)岐阜県畜産協会

    ◇審査普及推進団体

    【優秀賞】(公社)群馬県畜産協会
    【優良賞】秋田県支部、(一社)岐阜県畜産協会
    【努力賞】茨城県酪農業協同組合連合会、全国農業協同組合連合会長野県本部、愛媛県酪農業協同組合連合会、新潟県酪農業協同組合連合会、佐賀県農業協同組合

    【優秀賞】(公社)群馬県畜産協会
    【優良賞】熊本県酪農業協同組合連合会、岩手県支部
    【努力賞】酪農とちぎ農業協同組合、茨城県酪農業協同組合連合会、愛知県酪農農業協同組合、全国農業協同組合連合会長野県本部、鹿児島県酪農業協同組合

登録委員表彰 登録推進に尽力 26府県60名を表彰

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     日本ホル協は、登録委員に対する表彰要領に基づき、各県支部・承認団体から推薦のあった26府県60名の登録委員の方々を表彰した。
     登録委員は、酪農組合などの技術職員で、日本ホル協が委嘱し、酪農家に最も身近な立場で登録申込書の作成や改良指導などに日頃から活動されており、登録推進には不可欠な存在である。常々のご尽力に対して心から感謝の意を表する次第である。
     令和2年度の表彰登録委員は次のとおり(敬称略)で、感謝状と記念品が贈られた。
    (青森県)柴崎里美
    (岩手県)川村道行、畑中翔太、木藤靖裕、田中龍人
    (宮城県)小野由紀子
    (秋田県)永作野乃花
    (福島県)熊田広幸
    (茨城県)野村英貴、佐藤大地、松信勇輝、大久保親一
    (栃木県)岡見厚志、渡邉香奈恵、渡辺芳信
    (群馬県)宮崎智裕、岡部貴大、青木裕治
    (千葉県)小澤敬好、高橋幸一、森清之、石田真知子
    (長野県)星野瑛代、山下秋広、松沢幸児
    (岐阜県)林慎一郎、長瀬和仁、伊藤淳
    (静岡県)奥村雄希、関野秀樹、近藤宏子
    (滋賀県)中村健一
    (京都府)中井剛
    (兵庫県)道満文貴、二星隆太
    (奈良県)中西晶
    (鳥取県)杉川一昭
    (香川県)濱中大介
    (愛媛県)三原宏文、泉智史、西川芳満
    (高知県)橋詰由衣子
    (福岡県)梶嶋茜、小河武洋、河村信一、梶原隆幹
    (佐賀県)梶原大貴
    (熊本県)淵田瑞穂、福島功久、上月良、松岡孝浩、荒川尚輝
    (大分県)恒藤幸伸
    (宮崎県)新田彬彦、中西昇治、宮本聡
    (鹿児島県)藤田周平、米田秀一、大重泰慎、菅田力生

令和2年度検定成績優秀牛群 首位・小林正春さん(長野県)

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     日本ホル協では、表彰要領に基づき毎年度検定成績優秀牛群を表彰している。令和2年度のとりまとめでは、昨年度3位だった小林正春さん(長野県)の牛群が牛群検定加入頭数29頭のうち23件証明から平均乳脂肪量(F)偏差値194.0で1位となった。
     2位は昨年度1位だった五味英介さん(長野県)が、47件証明、F偏差値193.7の成績を収めている。3位は吉田仁治さん(新潟県)が38件証明のF偏差値192.2、4位は藤ノ木昇さん(新潟県)が11件証明のF偏差値178.1、5位は新海益二郎さん(長野県)が67件証明のF偏差値173.2と続いた。

2021北海道ホルスタイン ナショナルショウ中止

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     北海道ホルスタイン農業協同組合は、本年9月25日に予定していた北海道ホルスタインナショナルショウの中止を決定した。ホル農協ではコロナ禍にあっても開催可能な対策を検討し準備を進めていたが、新型コロナウイルスの中でも感染力の強い変異株の台頭、ワクチン接種が予定より遅れている等の現況を鑑みて安全を第一とすべく、今春の北海道ブラックアンドホワイトショウと同様、6月18日に中止の決定を発表した。
     同ナショナルショウは昨年も新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために中止しており、これで2年連続の中止となる。

今後の行事 日本ホル協

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    ◇第308回理事会
    11月19日、都内又はウェブ開催
    ◇中間監査会
    10月22日、日ホ会議室
    ◇令和3年度社員会議
    ◎東日本地区
    令和4年2月10日、中野サンプラザ
    ◎西日本地区
    令和4年2月4日、福岡朝日ビル
    ◇令和3年度冬期登録事務担当者会議
    ◎東日本地区
    令和4年2月9日、中野サンプラザ
    ◎西日本地区
    令和4年2月3日、福岡朝日ビル

人事異動 日本ホル協

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    (6月30日付)
    ◇北島聖二退職(総務部次長)
    (7月1日付)
    ◇立間小百合総務部総務課長兼経理課長(総務課長代理)
    ◇齊藤菜見子総務部総務課庶務係
    ◇屋根下尋美事業部登録課個別登録係